2015_11
04
(Wed)17:45

1章 第1話

オリジナル小説 『カタクリズム』
1章 第1話 【死戦】其の一

ダーク?ファンタジー小説です。
素人なので文章力は皆無ですが、自分が楽しいので書いてます。
気が向いたら感想とか設定への質問とかくださいまし。

カタクリズム3


では続きを読むからどうぞ。










【死戦】其の一






両脇を高い岩に挟まれた幅10メートルほどの道を23人の一団が進んでいた
舗装などされていない荒れ果てた地面は
気を抜けば足を取られてしまいそうになる
そそり立つ岩肌はごつごつとしており、陽の光は大地には届かない
岩壁の高さはどのくらいあるだろう?とマルロは天を仰いだ

1話1

彼女は宗教国家カラナンの地の巫女マルロ・ノル・ドルラード
まだ幼い彼女はたった9歳だが今回の旅に参加している
身の丈に合わない黒曜石の杖を持ち
青いおかっぱ頭をしてるころころとした子だ

20メートル?いや、おそらく30メートルはあるだろうか
そんな事に気を取られていたら皆から少し遅れていた事に気づき
一行の中から目的の人物を見つけ、とことこと小走りに長身の男の横へと行く
そして、その男クガネを見上げた

クガネ、これは彼の本名ではない
彼は盗賊団の元頭領であり、暗殺のプロ"爆殺のクガネ"それが彼の通り名だ
自然国家ネネモリで捕まっていたが
罪が帳消しになる条件で今回の旅に参加している
黒目の東洋風で、黒髪を短いポニーテールにしている
それなりの年を重ねた顔をしていて、無精ひげが僅かに見えた

横にきたマルロを一見もせず
クガネは正面を見据え、ただでさえ細い目を更に細めている
何かを発見したからだろうか
ちらりともこちらを見ないクガネに少しだけむすっとするが
マルロもそれに習い正面を見据える
しかし、マルロにはおかしな点は気づけなかった
だが彼がそうしているのだ、何かあるのだろう
しばらく注意深く観察していたら
薄暗く見えにくいが、かなり遠くに何かがあるのが見えた
徐々に近づき、皆がそれを確認し、ざわめきが起こる頃
それが何であるのかを理解した


断崖絶壁に挟まれ薄暗くなった谷の中央
そびえ立つ何かの金属でできた人形
全体から淡く光を放っており、それがただの金属ではない事は明白だった
薄い紫色のそれは、ただ静かに佇んでいる
3メートルは優にあるだろうか、腕は成人男性の胴体よりも太く長い
脚は太く短く、胴にいたっては幅2メートルはあるだろうか
まさに巨石のごときそれは関節以外の繋ぎ目が一切ない一枚岩でできたような人形
頭部と思われる場所には不思議な文字が彫られ黄緑色の光を放っている

そう、これはゴーレム(魔法人形)である

ゴーレムには色々種類がいる
代表的なゴーレムを強さの順で言うと泥、土、銅、青銅、鉄
そしてこの目の前にいるゴーレムは淡い光を放つ紫・・・ミスリルだ
現状確認されている最強のアイアンゴーレムを遥かに超えるであろう存在
普通であるなら見た瞬間に逃げる以外の選択肢はない
銅(カッパー)ゴーレムですら逃げる以外の道は無いとされているくらいなのだ
何百人でかかろうと簡単に勝てる存在ではないだろう

実際に40年ほど前にアイアンゴーレムを討伐しようと
商業国家ラーズの軍が動いた事がある
ラーズ国は古代の技術を流用する術を持っている
そのため、古代技術のためなら軍すら動かすのだ
そのアイアンゴーレムが守っていたのは
首都から南へ10キロほど行った場所にある古代遺跡の1つ
そこを守護していたのは当時は未知のゴーレム、アイアンゴーレム2体だった
ラーズは500人もの兵を送った
たった2体のゴーレムに大袈裟と思うかもしれない、だが・・・


結果は惨敗である


弓、剣、槍、それらは全くの無意味だった
唯一まともにダメージを与える事ができたのは火の魔法だけだったのだ
そして見た目に反してゴーレムは素早かったのである
それがもっとも被害を拡大させた原因だった
200名以上も犠牲を出し、惨敗したラーズ軍は国へ戻り
再編成された魔法部隊を投入する

魔法部隊としては異例な大部隊である
まず火の魔法使い150名、更に盾役としてシールドガーディアン100名
回復に生の魔法使い10名、足止め役に地の魔法使い40名
最後に死の魔法使い50名という総勢350名の精鋭部隊だ

先の部隊は500名もいたが
そのほとんどはただの兵士であり、剣士、弓士、槍士だった
魔法使いは希少である、先の部隊には500名の内8名しかいなかったのだ
100人いれば剣士などになれるのは80人はいるだろう
しかし魔法使いになれるのは1~2人、それほど数が少ない
それを250名・・・どれだけ力を入れてるのかが分かるだろうか
ラーズ国はそれだけ遺跡探索に価値を見出していた
今ではラーズ国で一般的になっている魔法の灯り
これも遺跡から発掘した技術の1つである
その価値は計り知れない、だからラーズ国はこれだけの戦力を投入したのだ


結果は辛勝


犠牲者は127名にもなった
これでゴーレムという存在の危険性について少しは理解してもらえただろうか
本来であれば銅以上のゴーレムは"見たら逃げる"これ以外の選択肢はないのだ

そして、彼らの目の前に鎮座するは軍隊を壊滅させたアイアンゴーレムではない
それより遥かに上位の存在、ミスリルゴーレムである
ミスリルという金属の硬度はアイアンの比ではない
それに加えミスリルには魔法に対する耐性、無効化などの効果も有している
誰が考えてもアイアンゴーレムより遥かに強い事は明白だった
だが、彼らに逃げる事はできない、そうしてはいけないからだ
ゴーレムのその先、そここそが旅の目的地
生と死の神々のいる場所・・・神の聖域なのだから・・・・



ゴーレムとの距離は150メートルほどある
しかし、一行は動けずにいた
一同が恐れと不安により言葉が出ない中

「おいおい、楽しそうじゃねぇか」

クガネの皮肉とも言える言葉が洩れる
横目でクガネの様子を伺ったマルロは驚愕する
あのクガネが冷や汗をかいているのだ
マルロはゴーレムの知識は乏しい
泥や土のゴーレムならそれなりに知っているが
金属のゴーレムとなると古代遺跡の番人くらいなので殆ど知識は無い
それに比べ、クガネは元盗賊団の頭領だ、その手の知識は豊富だろう
クガネのそんな様子にマルロは兜の緒を締める想いになった



作戦会議が行われるため、距離を保ち、円陣を組むように23人が集まる
最初に言葉を発したのはラーズ国の軍人ロイ・ホロウ少佐だった

「ミスリル・・・だよな?アレは」

アレとは眼前の驚異、ゴーレムの事である
信じられないという思いからか、確認を取るように皆に問いかける

「そうさね、あの光、色、どう考えてもミスリルさね」

一行の唯一のドワーフである火の巫女イエルが言うのだ、間違いないだろう
ドワーフは鉱石などの加工技術に優れた種族である
そのため、金属や鉱石による知識は他種族の比ではない

沈黙が走る

決して長い時間ではなかったが、体感時間はとても長かった
それぞれが思い思いの事を考えていたであろう、その時に

「アレに武器が効くのか?」

またもやロイは問う、誰もが思っていた事を・・・
そしてまた沈黙が続くかに思えたが、即答した者がいた、クガネである

「無理だ、並の武器じゃ傷すらつかんだろうよ」

クガネは過去に青銅のゴーレム、ブロンズゴーレムと戦った事がある
その時を思い出しながら語りだした

「おそらく俺のダガーでも表面が少し吹き飛ぶだけだ
 そんなものにお前らの武器でどうにかできるとでも思ってるのか?」

フッと鼻で笑いながら言葉を続ける

「だが奴らにも弱点はある、あの頭の文字、あれを消せばいい
 あの図体だ、届くのは俺くらいだろう、お前らは囮をやればいい」

クガネはそれだけ言うと背後にあった丁度いい高さの岩に座り
腕と脚を組み、もう話はないと言わんばかりに眼を瞑る
誰も反論できなかった、彼のダガーと実力を知る者なら分かる、おそらくそれが真実だ
しばしの沈黙の後、会議が再開された

「クガネには腹が立つが、奴の言う事はおそらく真実だろう
 俺たちは盾になり、注意を引き、囮になり、クガネにトドメを頼もう」

ガゼム、カナランの神殿盾騎士団長のシールドガーディアンである彼が言う
部下のダリルがうんうんと頷き、それに続き一同も頷いた

「おい、クガネ、あいつはどの程度の距離で動き出すんだ」

ガゼムは乱暴に聞く、クガネがあまり好きではないのだ
クガネは面倒くさそうに片目だけ開き、ハァとため息混じりに口を開いた

「・・・ざっと20メートルってとこだな」

ガゼムがチッと舌打ちをする

「結構遠いな・・・どうする」

「俺とダリルは先頭を行こう、二人で合わせれば何とか耐えられるかもしれん」

「シルト殿にも前へ出てもらうのはどうだろうか」

その瞬間、一同がシルトへと眼が動く

シルトとはラーズの1等級冒険者であり
冒険者チーム・ハーフブリードのリーダーだ
黒髪黒目の東洋風で、目は細く、肌の色は白い
武装はミスリルブロードソード、魔法の付与されたミスリルラージシールド
そして材質が何か不明な真っ黒のヘルムの無いフルプレートを装備している

突然注目され少し焦った彼は言う

「僕は構いませんけど、防げる気はしないですよ、あれ」

淡々とした口調でとんでもない事を言う
ガゼムとダリルの眼が大きく開かれる、彼でも無理だと言うのか?そういう顔だ
ロイも動揺を隠せなかったが

「無理を承知でお願いする」

頭を下げた、この中で最高の防御を誇るのはシルトだ
ガゼムやダリルも十分堅い盾なのだが、シルト一人で彼ら二人分をこなせるだろう
実力の差は明白だった
この作戦には時間を稼ぐ必要があるため、ロイは頭を下げる事を厭わない

「構いませんけど、そんな長時間は無理ですよ」

「それで構わない、数秒でいいのだ」

「わかりました、出来る限りやってみます」

ロイから安堵の息が洩れる、彼に任せれば大丈夫だろう
それほど彼ら冒険者チーム・ハーフブリードの面々は信頼されている
この旅の中で見せた彼らの実力は噂以上だった
そのためロイは彼らに敬意を払っている

「それでは、他の方は注意を引くだけで距離を保ち、支援する感じでお願いする」

作戦は決まった、一同は頷き、それぞれ戦闘準備を始める





マルロはクガネの横に座って足をぶらぶらとしていた
そんなマルロを気にも止めない、もう諦めているのだ
クガネは右手に持つダガーを舐めるように眺める
彼の視線の先の視界が僅かにだが揺らめく
ダガーに付与された魔法によるものだ

このダガーは火と風の魔法が付与されたアーティファクト武器
"爆炎のダガー"カスリ傷でも与えればそこが爆発する恐ろしい武器だ
材質はヒヒイロカネ、現在では精製方法すらない金属である
彼はこのダガーを信用していた
数々の死線を共にした友にも似た感情がある
そんなクガネを眺めながら、マルロは前から疑問だった事を聞いてみる事にした

「そんなにすごい武器、どこで手に入れたんですか?」

首を傾げ人差し指を頬に当てながらマルロは聞いてくる
クガネが少し誇らしげに、しかしダガーから眼を離さず

「これはラーズの国宝だ、無能な軍からくすねてやった」

ニヤリとしながらそう言うクガネに、マルロはやっぱりなぁと肩を落とす

「盗みはいけないんですよ」

「・・・」

何も答えないクガネにマルロは追い打ちをかける

「クガネさんは強いんですから
 悪い事なんてしなくてもすぐにお金持ちになれます!」

「別に金持ちになりたいわけ「冒険者なんてどうですか?」・・・」

クガネの言葉に重ねるようにマルロの追撃が入る
自分の言葉が潰された事により、むぅと口を閉じた

「クガネさんなら1等級にだってなれます!」

私も・・・と続いたがマルロはそこで俯き、暗い表情になり黙った
クガネは彼女の気持ちが薄々分かっていた
向けられる好意にも気づいていた・・・だが答える事はできない
相手はまだ9歳だ、そういう感情は生まれない
しかし、こんなマルロを見ているのは気分の良いものではない
心の中で舌打ちし、こんな奴じゃなかったんだがなと自分の心境の変化に愚痴をこぼす

「ふん・・・冒険者か、気が向いたら考えておいてやる」

それだけ言い、クガネは立ち上がる
マルロは目を丸くしながらクガネを見上げる・・その瞳は僅かに潤んでいた
ダガーを腰にしまい、ホルダーの留め金を確認し、ゴーレムの方に眼をやった

「行くぞ、マルロ」

そう言い、クガネは歩きだす
マルロはジャンプするように岩から立ち上がり、小走りに彼を追った

「はいっ」

彼女の顔に先ほどまでの暗い表情はない、今は笑顔に満ちていた





それぞれが準備をしている場所から少し離れた位置に5人いる
ラーズ国最強の1等級冒険者チーム・ハーフブリードの面々だ

「サラは僕の後方待機で、なるべく近寄らないでね」

シルトがサラ・ヘレネスに指示を出す

彼女はハーフブリードのメンバーであり、シルトの弟子である
剣の腕、盾の技術はシルトには及ばないが充分一流の分類に入る実力を有している
武装はミスリルロングソードとミスリルカイトシールド
真紅のコートを羽織り、中にチェインシャツを着込んでいる
淡いピンク色の髪は背中の中程まであり、前髪は綺麗に切り揃えられている

「うん、わかった」

サラはシルトに絶対の信頼を向けている
こと戦闘において彼の言う事に間違いはない

「それじゃジーンさんは最初は回復で、状況次第で精霊お願い」

ジーン・ヴァルター、彼女もハーフブリードのメンバーである
生の魔法使いだが、エルフの秘術をマスターし攻撃に特化した魔法使いだ
人間がエルフの秘術を使うなんて聞いた事もないが
彼女はそれを簡単にやってしまった
更に独自に改良を加え、聖獣の上位存在である精霊をも召喚する
手には魔導書が握られ、エスニック風の民族衣装のような服装をしている
セミロングの茶髪は僅かに巻かれており、顔立ちは東洋風とも西洋風とも取れた

「了解、状況見て好きにやらせてもらうね」

「シルさんシルさん!回復は私に任せて!!」

この元気に手を上げて言う子はシャルル・フォレスト
彼女もメンバーの一人で生の魔法使いである
ウェアキャットと人間のハーフ、ハーフキャットという珍しい存在だ
体型などは人のそれと同じだが、耳が猫のようであり、尻尾が生えている
ちなみにサラも同じハーフキャットで、二人は同郷である
彼女は魔法の才はあるが、飛びぬけたものではなかった
それを努力、そう尋常ならざる努力で一流まで上り詰めた女性である
言うなれば努力の天才といったところか
ノースリーブに短パンという露出の多めな格好だが、
天真爛漫元気娘な性格を考えるとぴったりと言えるだろう
その性格を表すような爽やかな水色の髪をジーンと同じ髪型にしていた

「一人で平気なの?」

ジーンがシャルルに目を細めて嫌味っぽく言う

「うっさい!ジーン!ハゲろ!!」

いつものやりとりだ
この状況でこの余裕があるなら大丈夫かな、とシルトは少し安堵する

「シルさん、私は何すればいいのかな」

彼女はラピ・ララノア、エルフの少女・・・と言っても71歳だが
ハーフブリードのメンバーの一人である
生の魔法使いだがエルフの秘術を使い聖獣を召喚する
エルフとは長寿種で、本来のんびりした性格の者が多い
その中でラピは異端だった、好奇心、知識欲が異常にあるのだ
幼い頃から・・現在も幼いが・・魔法を学び
エルフの大人が使うような魔法を既に習得している
手のひらサイズのドラゴンの子供を連れており
ずっと一緒に姉弟のように育ってきたらしい
幼さに合った少しゆるめのハーフローブにかぼちゃパンツを履いていて
その服装に不釣り合いな魔導書を腰に下げている

「ラピは聖獣使って僕とあの二人の盾を支援して」

りょーかーい、と返事をしつつドラゴンの頭を指の背で撫でると
嬉しそうに目を細めるドラゴンがラピの頬に擦り寄っていた

シャルルとジーンの一方的な口喧嘩はまだ終わらない
サラは黙々と装備のチェックをしている
いつもの光景だ・・・・シルトはハーフブリードの面々を眺め僅かに微笑む
生の魔法使い三名という偏った構成ではあるが攻守共にバランスの良いチームだ
皆仲が良く、それぞれの力を評価し、信頼し合っているのだ
本当に良いチームだな、とシルトは心の底からそう思っている
そして、顔を引き締め、少し声のトーンを落として言う

「みんな、今回の敵は多分僕らでも勝てない」

一同がシルトに注目する、その表情は真剣そのものだ

「さっき決まった作戦が一番勝機があるだろうね
 だから僕らは時間を稼ぐ事だけを考えよう、無理に攻めず、生存優先でね」

「そうだね!どう見てもヤバいよね、あれ」

「うんうん、私じゃ防げないだろうなぁ・・・」

「私はちょっと試したい事あるけど」

「ジーン黙れ!勝手なことすんな!」

「はいはい、分かったよ」

「ゴーレムかぁ、ちょっと可愛いよねー」

「「「「えっ」」」」

ハモった

「かわ・・・いい・・・?」

え?可愛くない?という顔をしているラピに視線が集まる
ラピの感覚は分からない時があるわ、と笑うシャルルに釣られ皆笑っていた

「にしてもミスリルか・・・あのデカさだから相当な額になるよな」

シルトは脳内でいくらになるか計算している
おおよそ金貨500億枚くらいはいくだろうか?
国家予算並という計算に頬が緩む

「確かに凄い額になるね、倒したらちょっと持って帰る?」

「いいねー、皆の装備強化にも役立つよね」

「うんうん、でも運ぶの大変そう」

「うーん、じゃ一掴みずつ持って帰ろっか、それでもかなりっしょ」

一掴み、それだけでも価値は相当なものだ、一般人の年収近いだろう

「そうだねー!そうしよ!」

そして、一呼吸置いてからシルトが立ち上がった

「それじゃ、行きますか」

シルトの合図とともに即座に真剣な表情に切り替わり一同は歩み出した





この集団を見渡す男がいる・・・彼の名はエイン・トール・ヴァンレン
ドラスリア王国の低級貴族ヴァンレン家の次男である
家を継がない彼は武の生き、突きのみを鍛え上げた剣士だ
金髪を眼にかからない程度に切り、その力強い青い瞳をあらわにしている
武装はロングソードとスモールシールド
ライトプレートを着込み、防御力よりも動きやすさを重視していた

今回の戦闘ではあまり役に立てないだろう、彼はそう考えていた
それでもやれる事はあるだろうと気を引き締めている

そんな彼の横にいる女性はミラ・ウル・ラシュフォード
彼と同じドラスリアの貴族の娘だが、彼女は3大貴族の家の者だ
エインなんて足元にも及ばない大貴族である
前髪は綺麗に切り揃えられ、長い金髪を三つ編みにし
後ろでお団子のように纏め上げている
その瞳は透き通るような青で、僅かに釣り目気味だ

実際ミラはエインを下に見ていた、いやそれは正しくないか
ミラは自分より身分の低い者を下に見る傾向がある、それも強烈に

「貴方の突きじゃ弾かれるだけだから下がってなさい」

「それはミラ様も同じじゃないですか」

エインの即答に一瞬たじろぐ

「う・・・わたくしは平気なのよ!」

そう言って腰に刺している武器を撫でるように触る
彼女の持つ武器はドラスリアの国宝、アーティファクト武器である
今回の旅に出るにあたり、国王から直々に借り受けた剣だ
不滅のレイピア、そう呼ばれる細身の長剣はアンデッドに絶対的な力があり
更には使用者を自動回復、武器自体も自己修復されていく超一級品だ

彼女の装備はそれだけではない

希少鉱石であるオリハルコンをふんだんに使ったライトアーマー
それはミスリルを遥かに超える強度、軽さ、魔法耐性を有する
この軽鎧1つで豪邸を建てても優にお釣りが返ってくる金額はするだろう
その最高峰の鎧に魔法まで付与されているという超一級品である
その他にも一級品装備が多々あるが今は省こう

「ハーフブリードの方達は本当に凄い・・・憧れてしまいます」

突然エインが話題を変える、一瞬迷ったがそれに乗ることにした

「確かに凄いですわね、でも貴方の突きはそれに負けてないわよ」

「ありがとうございます、俺にはこれしかないので」

照れながら頬をポリポリとかく仕草でエインはそう答えた
無意識にエインを褒めてしまったミラは恥ずかしくなり赤面する

「ぼ、凡人にも才能の1つくらいはあるものなのですのね!
 わたしくの剣技に比べたらまだまだですけど、精進なさいっ!」

ミラ、彼女は剣の才に溢れた女性だ
それを後押しするように超一級品の装備がある
エインには手の届かない物ばかりだ、それが羨ましくもあった
エインは腰に下げたヴァンレンの家宝であるロングソードを見る
ミスリル製であるそれには風の魔法が付与されている
それは彼の持つ唯一の一級品、ミラの装備に比べたら大した事がないが、彼の宝物だ

「はい、ミラ様の足を引っ張らないよう頑張ります」

エインは真剣な表情で言う

「ふんっ」

ミラがそっぽを向く、僅かに顔が赤く染まっている気がするが気のせいだろうか
ミラはエインの消極的な態度に少し苛立つ
彼の突きをそれほど評価しているのだ
そんな彼が足を引っ張る訳が無い、それがミラのエインに対する評価だ

「貴方はやるべき事があるのでしょう、なら全力を出しなさいな」

そう言われてエインはある女性の顔を思い出す・・・死の巫女リリム・ケルト
彼女の顔を思い出したエインは顔をパンっと両手で叩き、頬が真っ赤になる
その音に僅かにだがミラがビクッとした

『はい!俺やります!』

大声で言うエインに若干引きつつミラは

「い、行くわよ」

それだけ言ってミラは歩き出し、エインは黙ってそれに従い歩き出す
その瞳には燃え盛る炎のような熱い想いが宿っていた





ゴーレムとの距離は約70メートル
準備を終えた者から徐々に集まってきていた
これから始まる激戦を想像し、不安や恐れが入り混じり
皆の表情は硬く、空気は肌にまとわりつくような重さになっていた

近づいて見るとゴーレムの大きさがハッキリと分かり
3メートル以上はあるであろうソレは、まさに巨石であった
しかし、ここまでの危険な旅を乗り越えてきた彼らだ
この程度で臆してしまう者はいない
そうこうしている内に全員が揃い

「では、行くぞ!」

ロイの掛け声により一斉に進軍し始める
彼らはまだ知らない、この先に待ち構えている本当の絶望を・・・




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