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2017_09
29
(Fri)13:18

ナラビカミ 後輩 其の5

オリジナル小説 【ナラビカミ 後輩 其の五】

今回で後輩編終了です。
しばらくナラビカミはお休みしてカタクリズム書きまーす。



では、続きを読むからどうぞー。








ナラビカミ【後輩:其の五】





5月31日。

あれから3日が経ち、今は平穏な学校生活を送っている。
普段と違う点を挙げるなら、海未と登下校しない事と、
小泉がまだ学校に復帰していない事だ。

平穏だ、あぁ…確かに平穏なんだ。
でも、これは俺の求めた状態じゃない。

教室から雲1つない窓の外を眺め、その眩しさに目を細める。

もう5月も終わりのせいか、今日は妙に暖かい。
退屈な授業も合わさり、沼に沈むようにゆっくりと抗えぬ眠りへと…。

・・・・・

・・・



「い…な…………だよ!…達…兄……んだか……」

なに?よく聞こえないぞ。
壊れたラジオのようにぶつぶつと音は途切れ、彼女の声は聞き取れない。

「かかかかんけかかかかかんけかかかかかんかんけかかか」

うわっ!なんだ?この男の声は…頭の中で響くような…。
本当に壊れてるんじゃないのか?

俺は声の主を探そうとするが、目に映るのは完全な闇だけだった。
右を向いても左を向いても闇、闇、闇。
だが、この闇は気持ち悪いものではなかった。
不思議と落ち着くような…何も感じなくなってゆくような…。

気がつけば不快な声は消え、静寂が俺を包む。
そのまま闇のゆりかごに身を委ね、意識は闇に溶けてゆく……。

・・・・・

・・・



目覚めはいつも最悪だ。
寒気で身震いし、擦る事で少しでも震えを落ち着かせる。

時間は………まだ昼前か。

どうやら授業が終えるとこのようだ。
皆、早く飯を食いたいのかそわそわとし始めている。

俺は体温が戻るのをじっと待ち、黒板を眺めて勉強しているフリをする。
すぐにチャイムが鳴り皆が一斉に動き出した。

体温はもうだいたい戻ったが若干の肌寒さを感じ、
俺は自作の惣菜パンの素を手に中庭へと向かう。

ちなみに今日はたまごサンドだ、むしろそれオンリーだ!

ゆで卵にマヨネーズを加えて潰し、塩コショウで味を整える。
コショウとマヨネーズを少し多めに入れるのが俺のこだわりだ。
マヨネーズは少なめの方が卵の味が殺されないとか知るかっ!
俺はマヨと胡椒の味が好きなんだよ!

で、ある程度白身の形を残した状態まで潰したらタッパーに詰め、
後は食べる前に食パンに挟む、それだけだ、簡単だろ?
食パンは6枚持ってきているが、材料費は何と150円以下!
簡単、美味い、安いと三拍子揃っている完璧なメニューなのである。

中庭にあるベンチは埋まっており、
仕方なく日陰にある校舎裏のベンチへと向かう。

やっぱこっちは空いてるか…ちょっと肌寒いもんな。
このままウロウロとする気にもなれず、そのベンチに陣取り、
一人でせっせことたまごサンドを作っていると、突然声をかけられる。

「せ~んぱいっ」

「うわっ!ビックリした…なんだ、小泉か」

図体の割に小心者な俺はたまに自分が嫌になる。
自己嫌悪している俺に小泉はクスクスと笑い、自己嫌悪が加速する。
しかし、小泉の笑顔は今までで1番いいものだった。

「先輩可愛い、ふふふ」

「ったく、なんだよ、これならやらんぞ」

作りかけのたまごサンドを身を挺して庇うように隠す。

「あ、気になってましたけど、それ自分で作ってるんですか?」

「そうだ、悪いか」

自己嫌悪中の俺はムスッとしたまま、たまごサンド作成を再開する。

「へぇ、先輩って料理も出来るんだ」

小泉は関心するように俺のたまごサンドを覗き込む。
なんともバツが悪く、少し照れくさい気分になってくる。

「金無いからな、自炊しなきゃやってられん」

「そうなんですか…先輩も大変なんですね」

先輩"も"……か、そうだな、小泉に比べたら俺なんて…。

「そう言えば小泉………お袋さん、大丈夫だったか?」

「あ、はい、もう大丈夫ですよ。ご心配おかけしました」

そう言って小泉は丁寧に頭を下げる。

「そうか、良かったな」

「はいっ」

顔を上げた彼女はさっきよりもまたいい笑顔になっていた。
変われば変わるもんだな…俺はそう感じていた。


それから小泉は俺の隣に座り、あれからの事を語りだした。


警察が来て俊夫さんが逮捕され、
小泉は母親と弟と共に救急車で病院へ行った。
その後、母親の手術が行われたらしい。
どうやら頭を割られていたらしく、10針近く縫ったそうだ。
とりあえず命に別状は無いようでよかった…と言っていいのかな。

俊夫さんは精神鑑定されたようだが異常はなく、刑務所に入るそうだ。
アレが異常じゃないなら何が異常なんだ?とも思うが、
小泉達の安全が確保される訳だから文句は言えない。
接近禁止令とやらも出るようだ。

で、小泉親子だが、DV(家庭内暴力)被害者という事で、
一時的に国の機関に保護され、引越し先や仕事も与えられるそうだ。

「って事は…小泉は引っ越すのか?」

「…はい。あ、でも近くなので会えない距離じゃありませんよ」

寂しそうな笑顔ではにかむ小泉に俺の胸は少し痛む。

「学校は移らないといけないみたいで…先輩には言っておきたくて……」

「そうか…寂しくなるな」

たまごサンドを作る手を止め、ベンチに背を預ける。
日陰の涼しさがやけに肌寒く感じた。

「寂しいですか?…わたしがいなくなるの」

「まぁな」

「へ、へぇ~…」

なんだ?と彼女の顔を見ると真っ赤に染まっており、
もじもじと俯いている……こ、これは…まさか?

いや、待て、早まるな尾野空よ、小泉はあざとい子だ。
騙されてはいけない!小泉に何度ドキドキさせられた!
いつもの演技だ、落ち着け自分。

でも、こないだの俺は結構頑張ったし、もしかして…なんて思ってしまう。
いやいや、まさかな…小泉は学校一の美少女だぞ?
海未も負けてないと思うけどな?って、今はそれはいい。
そんな事よりも……

「先輩」

「は、はいっ」

突然呼ばれ俺の声は裏返る、明らかに動揺している、マズい。
チラッと小泉を見ると、俺の動揺が感染したのか顔を背けていた。

沈黙………気まずいなんてもんじゃない。

・・・・・

・・・・・

・・・・・

・・・・・

ダッーー!長いっ!

・・・・・

・・・・・

・・・・・

「先輩」

「は、はい?」

また声が裏返ってしまった…我ながら情けないほどチキンハートの持ち主だ。
この独特な重い空気から逃げ出したくなるが、
小泉が言わんとしている内容が激しく気になり、唾を飲み込む。

そして、彼女は口を開く……。

「先輩、わたし…わたし…先輩のことが…」

来た、マジで来た、来ちゃったでしょ。
鼓動は急速に早くなり、耳まで熱くなっていく。

「その………なんでもありません」

「は?」

思わず言ってしまった「は?」…だってそうだろう?
普通あそこで止めるか?すっげぇ身構えてたのに!!

「もぉ~、気にしないでくださいよぉ~、あはは」

いつものぶりっ子全開の小泉が出てくる。
だが、彼女の手は震えている。

「お前が言いたくないならいいけどな、それで後悔しないならな」

俺は何を言っているんだ?本当にその先を言われたいのか?
俺は…俺は……。

「………わかりました、言いますよ」

小泉は覚悟したように手をギュッと握り締め、
俺の目を真っ直ぐ見つめてくる。

「先輩!」

「おう」

「だ………あぁー!」

小泉はボリュームのある髪をわしゃわしゃと掻きむしり、
芋虫が暴れるように身体をくねくねとさせている。

「なんだよ、早く言えよ」

「ま、待ってください、乙女には色々とあるんです!
 わかってください、そういう空気読めないとこが先輩の悪いところですよ」

なんで唐突に俺ディスられてんの。

「分かった、待ってるから好きな時に言え、俺はたまごサンドを食う」

『はぁっ!?』

小泉の大声が校舎裏に響く。

「いや、早く食わねぇと昼休み終わっちゃうだろ?」

「そうですけど…そうですけど……先輩ってバカなんですか?」

「は?なんでそうなる」

「わたしが言おうとしてること分かってますよね?」

「…まぁ、だいたいはな」

「じゃあ、なんでたまごサンド食べるって選択肢が出てくるんですか!」

小泉さんは随分興奮してらっしゃる。
そうか、分かったぞ。

「悪かった悪かった、お前にも食わせてやろう」

『はぁっ!?』

再び小泉の大声が響く。
耳が少しキーンってなったぞ。

小泉はがっくりと肩を落とし、頭を抱えてぶつぶつと何かを呟いている。

「ありえない…こんな美少女からの告白中にたまごサンドって……
 ってか、なんでたまごサンド?おかしいでしょ……
 なんでわたしこんな人の事……あああああああ~~~~っ!」

また小泉は頭を掻きむしり、
唯でさえボリュームのある髪は更にボリュームを増す。

「…おまえ…ふっげぇ髪になっへんぞ」

たまごサンドを頬張りながら俺は言う。

「最悪です、ホント最悪です…人生初の告白がこんなのなんて…」

俯く小泉の顔から水滴が2つ落ち、土の色を変える。

「んぐっ…小泉、お前泣いて…」

「ませんよ!」

ジャージの裾でぐしぐしと目を擦り、小泉は立ち上がる。
どこから取り出したのか手鏡と櫛で手早く髪を整え、
それをしまってから軽い咳払いをし、俺を目を見つめて言った。

「先輩、わたしは………先輩が大好きです」

「あぁ」

「これは嘘とか冗談じゃないですよ、わたしの本心です」

「あぁ」

「あんな事があったからとじゃないですよ、多少はありますけど」

「あぁ」

「あの…いちいち相槌するのやめてくれません?ウザいですから」

「あぁ…あ、ごめ」

俺が頭を掻いていると、小泉は自然な笑顔で笑う。

「ふふ、そんなところも先輩なんだって思います」

「そうかな」

「はい、わたしはそんな先輩も大好きです」

手が震えてるぞ、小泉。
本当にいい笑顔をするようになったな、小泉。
いつも身だしなみに気をつけ、笑顔を絶やさず、愛想よく振る舞う。
そんなお前を俺はすごいと思ってたよ。

「わたしは…わたしは……ずっと好きでした。
 面倒なこと押し付けても嫌な顔一つしないで手伝ってくれて、
 わたしの本性を知っててもそれは変わらなくて…、
 いつでもわたしを心配してくれて、味方でいてくれて、
 いつでも……わたしを助けてくれて…先輩はわたしのヒーローなんです」

過大評価ってやつだ、それは。
俺はビビリで情けなくて……まともな人間じゃない。
そんな俺をここまで想ってくれる子がいるんだな……。

「先輩」

「ん」

「わたしと…付き合ってください」

小泉は深く頭を下げる。
手も膝も肩もぷるぷると震えて、俺の答えを待っている。
いい加減な答えじゃ…ダメだよな。

俺は立ち上がり、小泉の肩に手を置いた。

「ごめん…好きな子がいるんだ」

置いた手から小泉の震えが伝わってくる。
ポタポタと涙は地面に染み込んでゆく……。

しばらくしてから彼女はハンカチで顔を拭き、顔を上げた。

「わかりました…何となくわかってました……」

目や鼻が赤く染まったその笑顔は無理をしていて、
俺の胸に太い針が刺さったように痛みが走る。

「小泉……」

俺が手を伸ばそうとした時、視界の隅に人影を捉える。
チラリとそちらを見ると、そこには海未が友達と思わしき女の子と立っていた。
おそらく中庭で昼飯を食べた後だろう…俺を見つけて首を傾げていた。

「…海未」

ぼそっと呟くように名前を呼ぶ。
その声は目の前にいる小泉にしか届いてないだろう。

その瞬間小泉は後ろを向いて走り出し、盛大に転ぶ。

「お、おい、大丈夫か」

『来ないでください!』

俺は前に出した足を即座に止め、その場で石像のように固まる。
彼女の声はそれほどの拒絶を含んでいた。

「来られたら…もう、耐えられないから…」

その声は震えていた。
よろつきながら立ち上がり、振り向いた彼女は、
涙と鼻血を流し………笑っていた。

小泉ツクなk

「先輩っ……さよならっ」

彼女は走り去る。
俺は追うことも出来ず、ただその場に立ち竦む。




食べなかったたまごサンドは食パンが水気を吸い、
俺の心のようにグズグズになっていた。



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