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2017_10
19
(Thu)14:57

5章 第3話

オリジナル小説 『カタクリズム』
5章 第3話 【糸とハサミ】

今回は誤字とかチェックしてないから多いかも?
もし見つけたら教えてくださいなー。

では、続きを読むからどうぞー。








【糸とハサミ】






エイン達はアムリタの深い雪原を抜け、ネネモリの大森林を通り抜ける
現在はネネモリ領を抜け、やっとドラスリア領に入った所だ

ゲール山群を出立してから1ヶ月近い時間が経過している
その間もずっとエインの魔力制御の修行は続いていた
しかし、何度やっても結果は同じ……初級1章の火程度も出なかったのだ

エインの師となったオエングス・オディナは、
彼が1度でも魔力を絞り出すという感覚を知れば行けると思っていた
だが、それは少し違っていたようだ

これでは何のために命の危険のある"魔力の強制解放"を行ったのか…

いかんいかん、自分基準で考えてはいけないな
私は師になったのだ、我が師である父のようにならねば

故郷にいるアムリタ聖騎士団・青の大鷲団長である父を思い出す
ディムナ・マックール……アムリタが誇る大英雄だ
常勝無敗の戦績は今もまだ更新中である

ディムナは剣術自体はそこまで優れている訳ではない
そこらの騎士よりかは腕は立つが、
オエングスのように英雄の領域に入った剣技は持ち合わせていない
では、彼の強さとは何か?

それは人望と戦術、そして……"教える上手さ"にある

彼は自身の考案した戦術や剣技を
誰にでも出来るように教えるのが異様に上手かったのだ
そして、1つの教えの元に完璧な連携の取れた青の大鷲に敵はいなかった

他にも、ディムナという男の強さは並外れた勘の良さや、
戦争の流れを肌で感じる事が出来る感覚、
プライドなどを捨てた奇策の数々など、挙げればキリがない

そう、父は大英雄なのだ
そんな父に憧れ、剣を取り、私はここまで来た

今の私は"薔薇の聖騎士"の称号を得ている
これはアムリタの姫君マリアンヌ専属の特別な騎士号だ
この地位に見合った働きをしなくてはならない

全ては剣を捧げたマリアのために……

「エイン君」

「はい?」

必死に魔力を絞り出そうと力を込めていた拳を解き、
先程から何か考え事をしていたオエングスの方へと向く

「私の教え方が悪かった、すまない」

「え…」

オエングスはゆっくりと頭を下げ、すぐに顔を上げる

「やり方を変えよう」

「はい」

思いつく限りのやり方を試すしかない
私は大英雄ディムナではない
最初から最適解を出すことなど出来ないのだから…

・・・・・

・・・



ネネモリの大森林を西へと進む
ドラスリア領に入ってからもしばらく大森林は続き
完全に森を抜け切ると見渡す限りの草原が広がっている

爽やかな緑色と、果てしなく広い空の青さが
心を健やかにしてくれる、そんな気分にさせる草原だ

そこから更に西北西に進んで行くと
高い山々に囲まれたラルアースでは最北端の地に辿り着く

ドラスリア王国、北部

深い森に飲み込まれるように雪をかぶった山々が見え、
その手前、森の小高い丘の上に一際目を引く巨大な建物が見えてくる

幾つもの建物が連なり増築を繰り返したのが伺える
全ての屋根は空と同じく青く、
1番高い塔のてっぺんには旗が掲げられていた

旗には車輪のような模様の入った大きなハサミが描かれており、
その中央には糸が描かれた盾が掲げられている
この独特な紋章を知らぬ者はラルアースにはいないと言っていいだろう…

紋章

この建造物群の規模は1つの街と比べても一切の遜色などない
むしろ、1つ1つの建物は細部まで拘って作られており、
まるで貴族の豪邸だけで巨大な街を1つ作ったかのような、
そんな異様な雰囲気が漂っている

ラシュフォード邸……この建造物群全てが"それ"である
ここまで巨大だと邸と称していいのか怪しいところだ
むしろ城と呼んだ方がしっくりくるくらいである

豊かな国であるドラスリア王国の中でも抜きん出ている家がある
それがラシュフォードであり、他の貴族の追従を許さない圧倒的存在だ

三大貴族とは呼ばれているが、実際のところは…
ラシュフォード、二大貴族、その他という勢力図になっていた
だが、ドラスリア内にラシュフォードに唯一対抗出来る家がある

それは"王家"であるドラスリア家だ

ドラスリア家はこの国の4割の土地を領土としている
一方、ラシュフォードはというと……4割を超えている状態だ
王家より領土が多いなど異常事態なのだが、
これについてはドラスリア家は何も口を出していない

それは、敵に回したくないためである

ラシュフォードと事を構えることとなれば、それは国が割れるという事だ
激しい内戦に突入し、ただでさえ疲弊している国力は更に落ちる事だろう
現国王イーリアスはまだ12歳だが、そこまで愚か者ではない
それならば他の貴族を抱え込み、自身の勢力を増強する事を選んだのだ

結果、それは成功している

現在ドラスリア王家についている貴族は数多くいる
二大貴族と呼ばれるライネル家、トレルド家もそれだ
両家の領土を足しても1割を少し超える程度だが、他の貴族も含めると、
現在の王家の勢力はドラスリア国の6割近くになっている

もう理解しただろうか?

ラシュフォード家とは、ドラスリアという大国を丸ごと相手しても
互角に渡り合えるほどの勢力(家)なのだ
もはや貴族という肩書で呼んでいいのかすら疑わしい…

ミラ実家

「相変わらず大きい……家?…ですね」

エインが丘に堂々と佇む巨大建造物群を眺めて言う

「あら、貴方はわたくしの家に来た事があるの?」

「いえ、戦争中に補給のために通り掛かっただけです」

「って、これが全部家なのか?冗談だろ、首都と大差ねぇじゃねーかよ」

アシュはずっと最前線で戦い続けていたため、
ミラの家を見るのは初めてだった

「変かしら?わたくしにとってはこれが普通なのですけど…」

「あ~、わかったわかった、よ~くわかった
 ミラさまが俺と生きてる世界が違う事はよ~くわかった」

言い方に少しばかり腹を立ててミラは黙り込む
その様子を見てアシュの頭をプララーがポカッと1発殴った

「ここで立ち話も何ですし、早く行きましょっ」

リリムがミラの変化に気づいてフォローを入れる
彼女のその優しさが今のミラには有り難かった

一行は馬車を進め、森を大きく迂回し、
険しい山々との間にある僅かな森の隙間に入ってゆく
緊急時以外の唯一の出入り口がこの細道である

細道には3つの堅牢な門が設置されている

第一の門:巨大な糸車を回す女性が描かれている門
第二の門:糸車により紡がれた糸をボビンに巻く女性が描かれている門
第三の門:その糸を断ち切るハサミを持った女性が描かれている門

この3つの門に描かれた絵はあまりにも美しく
芸術品と言っても過言ではないほど奥ゆかしい絵が描かれている
そのため、観光名所として旅行客が後を絶たないほどだ
現に今も門を見上げている一団をちらほら見かけている

この門は、1000年以上続くラシュフォードの歴史上、
ただの1度も破られた事の無い難攻不落の門でもある

「綺麗ですね~」

マルロが口を開けながら門を見上げて言う
そんな彼女が倒れないようにそっと背中に手を回しているイエルがいた

「あたしも初めて見たけど、こいつはすごいね」

ドワーフの目から見てもこの門の出来は素晴らしいようだ
皆がワイワイと会話しながら通り抜ける中、
1人の男だけは沈黙を貫いていた……オエングス・オディナである

彼は初めて訪れる神の聖域ラルアースに幾ばくかの興奮をしている
だが、それ以上に軽い恐怖を感じていた……

これを1つの家が所有している……だと?
アムリタ王家と同等…いや、遥かに凌駕している
この地の貴族はこうも強大な存在なのだろうか……

桁違いの魔法の威力もそうだが、複数いる巫女達、
更にこの規模の貴族が複数いるとしたら…
アムリタは何と愚かな選択をしたのだろうか
ラルアース…神の聖域を侵略するなど愚劣極まりない行為だったのだ

ふふ、井の中の蛙とはよく言ったものだ
私程度まだまだ小さな存在という事なのだな
神の使徒となり浮かれていたようだ、気を引き締めなくてはな

難しい顔をして「うんうん」と何かを納得しているオエングスに、
エインが耳打ちするように小さな声で伝える

「ラシュフォード家だけが特別です、
 俺も貴族ですが、家は普通の家ですよ」

「そ、そうなのかい?」

「はい、勘違いされても困りますので」

エインはそう言うと顔を離してゆく
彼の言葉で自分の内にふつふつと湧いていた恐怖心は消え去っていた

第一の門を通り抜ける時、
一行の中からミラを発見した門番が大慌てで近寄ってくる

「ミ、ミラ様!お帰りなさいませ!」

「ご苦労さま」

「勿体なき御言葉!感謝致します!」

男は他の門番に仕事を任せ、一行の馬車の先導を引き受ける
そして、門番から門番へと手旗による合図が伝わり、
遥か遠く、3つの門の先からラッパのような音が鳴り響く

「もう…仰々しいったらないですわ」

ミラはため息をつき、腕組をして頬を膨らませる

一行が第二の門に着く頃には門は開かれており、
道の左右にはずらりと武装した騎士が並んでいる

その数、おおよそ300

この短時間でよくここまで揃えたものだと皆は関心していたが、
一人、ミラだけは頭を抱えて長いため息を吐き出していた

騎士達は一行が近づくと統制の取れた動きを始めた
同時にフルプレートの騎士達が動くとハッキリ言って喧しい
ザッ、ザッ、と音を鳴らしながら規則正しい動きをし、
剣を斜め上へと掲げ、一行が…いや、ミラが通るための道を作る

剣の道を通る時、オエングスは自分の眼を疑った

「ミ…ミラ嬢…、この騎士達は全て貴女の家に仕えているのですか?」

「えぇ、そうですわよ」

「それはこれで全て…では無いですよね?」

「えぇ」

何が言いたいのか解らずミラは怪訝そうな顔をする
その表情を読み取ってかオエングスは思っていた事を口にした

「この剣は全て…魔法が掛かっていませんか?」

「えぇ、わたくしの家の兵は全員に魔法武器を持たせてますの」

『はぁ!?』

声を上げたのはアシュだった

「1本幾らすると思ってんだよ!
 ミラさまの家ってどんだけ人いんだか知らねぇけど…」

「兵だけなら確か……6万ほどだったかしら?」

「ろ……6万?」

6万…それはドラスリア国の有する兵力の5割に当たる
その兵の全てが魔法武器を装備している
あまりにも話しが飛びすぎていて頭が追いつかなくなってきていた

「あ、あの、ラルアースでは魔法武器とは一般的なのでしょうか?」

オエングスは額に汗をかいていた
冗談じゃない、魔法武器とは超一級品だ
数も少なく、それぞれに名前が付いているほど希少な物ばかりだ
そんなものが何万本もあっては困る、そう、困るのだ

「いえ、俺の家は家宝でしたよ」

エインが言うと、オエングスは少しホッとする

「私達の仕事が多いのはこういう事なのですね…
 嬉しいやら何やら……ちょっと複雑な気持ちです」

リリムが魔法の付与された剣を見て言うと、
マルロとイエルも「うんうん」と頷いていた

一行が剣の道を通り抜け、第三の門へと差し掛かると、
道を塞ぐように立つ女性の姿が目に入る

「サイネ様っ!」

サイネ・ウル・ラシュフォード、ミラの母親である
先導を引き受けていた門番はそそくさとサイネに駆け寄った
そんな彼をどきなさいと言わんばかりに追い払い、
サイネは眉間にシワを寄せミラを睨む

「お母様、ただ今戻りました」

ミラが深いお辞儀をするが、サイネの表情は固いままだ

「ミラさん、貴女は神の啓示を受け、旅に出てましたよね」

「はい」

「戻って来たという事は、その旅は"終わった"と思っていいのかしら?」

面を上げたミラは拾われたばかりの子犬のように怯えている

「いえ……」

「では、何故戻って来たのです」

「お父様に…ユグド・フィロ・ラシュフォード侯爵に話があり、戻りました」

旦那の名が出てサイネは一瞬考え込む

「ミラ・ウル・ラシュフォード侯爵、
 しかと承りました、急ぎお取り次ぎ致します……
 巫女様方もしばしの間ですが、
 どうぞごゆるりとくつろいで行ってくださいませ」

ミラが父を侯爵と呼んだ以上、今の彼女は娘としてではなく、
旦那と同じ侯爵として扱うべきだろう
そう判断してサイネは自身の娘に礼儀正しいお辞儀をする

「では、こちらに」

今度はサイネが彼等を先導し、
第三の門を抜け、ラシュフォード邸へと入って行く


ドラスリア王国の未来を決める会談が始まろうとしていた……


・・・・・

・・・



一方、ハーフブリードは……

ネネモリを抜けた彼等は真っ直ぐ南下している
目的地はラーズ首都にある彼等の自宅である
道中にある"火竜の喉笛亭"で1泊する事にし、
翌日には首都に到着する予定だった……が、ここで問題が起きる

「最近肩凝るなー」

「ラピおばあちゃんだからね、あはは」

「誰がおばあちゃんだー!」

そんないつものやり取りをしていると、
ジーンがぼそっと呟くように言う

「ウェールズってそんな大きかったっけ?」

「え?」

皆の視線がウェールズに集まる
ウェールズは40センチほどの幼竜だ
これは生まれた時からほぼ変わっていないと言っていい
だが、今のウェールズは明らかに50センチは超えている

「あれ…ウェールズ大きくなったの?」

ラピがウェールズを抱き上げ、ズシッとくる重さに顔を歪ませる

「おも……ホントに大きくなってる」

ラピが何を言っているのか理解出来ず、アギャ?と首を傾げていた

「お前どうして急にこんな大きくなったの~?」

アギャ!アギャ!と騒ぐばかりで、やはり意思疎通は取れない

「成長期?」

サラがそんな事を言うが、そもそもドラゴンに成長期があるのだろうか

「なのかなぁ……これじゃ一緒に旅するの大変だよー」

ラピは肩をぐるぐると回してほぐしながら言う
そんな彼女の肩にそっとシャルルが触れ、初級の回復魔法をかけていた

「ラピ頑張れ!」

肩を軽くしてくれたシャルルの無責任な応援が心を重くする

「えー…めんどく…」

そこまで言いかけて、皆の視線が痛くて言葉を飲み込む
厄介な事になっちゃったなぁ…とラピは心の中で愚痴るのだった

翌朝

日の出より少し前に皆が起床し、出立の準備をしようとしていると……

『ええええええええええええええ!!んぐぅっ!?』

ラピが突然絶叫し、早朝という事でジーンが手で口を塞ぐ

「ラピうっさい、まだ陽も上ってないんだよ?」

「んぐーっ!んぐーっ!」

「ジーン離してあげて、何言ってるか分かんない」

ジーンは耳元で騒いじゃダメだよ?と一言付け足してから手を離す

「ぷはっ……ジーンさん、鼻も塞ぐのはやめよ?死ぬかと思った」

「ごめんごめん」

荒い息を整え、ラピが再び現実を目にし、大きなため息を洩らす

「あのね…これ……」

ラピが指差したのは、ベッドの影に隠れていたウェールズだ
その大きさは120センチを超えているだろう
もはやラピより大きいサイズだ

「え…一晩でこんな大きくなるの?」

「……すごいね」

「でしょー!こんなの驚くでしょー!」

ラピの気など知らぬウェールズはスヤスヤと寝息を立てている
その様子をじっと観察していたジーンはある事に気がつく

「待って、ウェールズ何か持ってる」

「え?」

「なんだろ…石……かな?胸のとこ」

ジーンの魔力を見通す眼に禍々しい魔力の結晶が映る
石から膨大な魔力がウェールズへと流れ込んでおり、
更には大地から、大気から、
ありとあらゆる場所から魔力は流れ込んでいる

「あ、これ王の墓の腐ったヤツから拾った石だよー」

腐ったヤツ……王の墓を守っていたドラゴンゾンビである
シャルルが核を破壊して倒した後に、
ウェールズが死体の眼の中から3センチほどの宝石を発見したのだ

ラピとシャルルで何とかウェールズに寝返りを打たせ、
胸にある宝石を見ると結ばれていた紐は断ち切れており、
宝石はウェールズの胸にめり込むように融合しかけていた
ジーンがしゃがみ込み、まじまじとそれを見る

「へぇ、面白いね、昨日までこんな魔力は無かったんだけどな」

指でツンっとつつくと、その宝石はドクンッと脈打つように光った

「ねぇアスタロト、これ何だか解る?」

頭の中で声を掛ければいいのだが、思わず口に出してしまった

・・ん?我が眷属ではないか、ルィノとは久しいな

「は?」

・・こやつは滅龍の成れの果てだ

「滅龍って何?」

・・この世には滅びの竜というのがいてだな……

「その話、長い?」

彼女がアスタロトとやり取りしている時は皆は黙っている
アスタロトの声は彼女にしか聴こえないためだ
そして、アスタロトの"知識"は人知を遥かに超えているのもある

「皆に説明してあげて、私も聞いてるから」

そう言うと、ジーンの様子が変わる
障壁で魔力を封じてはいるが、溢れ出る膨大な魔力は隠し切れず
"それ"がアスタロトなのだと明確に理解した

「人の身体は好かんのだがな…」

前回の時のように脳内に響く声ではなく、
ジーンの口から発せられた少し低めの声だった

「アスタロト…さんでいいの?それとも、悪魔王さん?」

サラがどう呼んだらいいのか分からず聞く

「貴様等と話すのは初めてか、我はアスタロトで構わん
 理を解き明かし、真理に辿り着くため日々研究をしている
 あれは確か2万年ほど前の事だったか、
 我が新たな魔法を生み出し、実験をしていた時の事だ……」

「待って、長いし、それ関係ないよね」

シャルルの鋭いツッコミが入り、
アスタロトはコホンッと小さな咳払いをする

「ジーンさんも大変だね…」

「うんうん」

普段から"これ"の相手をさせられると思うとジーンも気の毒だ

「あぁ、滅龍の事だったな
 こやつの胸にあるのは滅龍の成れの果て、端的に言えば竜の死骸だな」

「滅龍ってなんなのー?」

「滅龍とは世界を壊すと言われている"滅びの竜"達の略称だ」

「滅びの竜……なんでそんなのが…」

「時が来た、それだけの事よ」

アスタロトは小さく肩を震わせ笑っている
その笑みは邪悪で、ジーンのそれとは全く異質なものだった

「達って事はいっぱいいるのー?」

ラピの好奇心スイッチが入ったようだ

「あぁ、全部で7体いる
 霊龍、剛龍、雷龍、炎龍、泥龍、霧龍、没龍…
 どうやらその石はルィノ…没龍の亡骸のようだな」

「へー」

ラピはジーン…もといアスタロトにぐいぐいと寄って行く
そんな彼女に若干引き気味のアスタロトは話を続ける

「貴様等の言うウェールズとやらが没龍の生まれ変わりであるぞ」

「「「え?」」」

「くくっ、滅龍どもは我の眷属であるが」

『『『えええええっ!?』』』

「な、なんだ…」

3人の大声に少し驚いたアスタロトは吃ってしまう

「ウェールズって滅びの竜なの?」

「うむ」

「ホントに?こんな小さ…ってもう小さくないけど」

「そうだと言っておる」

しばし3人でひそひそと内緒話をし、3人はアスタロトを見た

「盛ってない?」

シャルルがぼそっと言う

「誰が盛るかっ!!失敬な女だ!」

アスタロトは踵をリズミカルに鳴らし、苛立ちを抑えている
貧乏ゆすりというやつだ

「なんか変な感じ、ジーンじゃないみたい
 ってジーンじゃないのか…ホントに同化しちゃってるんだ」

「安心しろ、我はこの身体を奪う気はない
 やろうと思えばいつでも出来るがな、する気はない
 それよりも貴様等を見ている方が楽しくてな、よい暇つぶしになる」

「あ、そう、ならいいけど」

話が一段落ついた事で再びウェールズへと皆の視線が移る

「どうしよう…これじゃ連れて行けない……よね?」

ラピが皆の顔色を伺いながら言うが、誰も答えられなかった
その時、ジーンとアスタロトが入れ替わる

「ふぅ…やっと返してくれた」

「あ、おかえりー」

「おかえりなさい」

「おかえりー!」

「ただいま」

ジーンは身体に異変が無いか確認し、改めてウェールズを見る

「確かにこれじゃ連れては行けないね
 ラピの実家、リョースの方に預けてくる?」

「うーん」

ラピはしばし考え込む
眉間に深いシワを寄せ、うーんうーんと唸り、やっと答えを出す

「わかった、父様に聞いてみる」

こうしてハーフブリードはネネモリへ引き返す事となる
彼女達は大きくなったウェールズを連れ、
エルフの里"リョース"へと向かうのだった

・・・・・

・・・



エルフの里・リョース

火竜の喉笛亭から3日かけてリョースへと辿り着く
既にウェールズの体長は3メートル近くになっていた

「それにしても大きくなったなぁ」

サラがウェールズの脇腹を撫でながら言うと、
ウェールズは嬉しそうに喉を鳴らしていた

「ねー、でも食べる量は変わらないんだね、不思議~」

シャルルもウェールズの脇腹を撫で、鱗の感触を楽しんでいる

「こんな大きくなっちゃって…どこまで大きくなる気?ウェールズ」

ウェールズの上に乗るラピはうなじ辺りを撫でながら言う
そんな彼女に愛おしそうに頬をこすりつけるウェールズだが、
その圧は小柄なラピには強すぎ、転げ落ちそうになる
バランスを崩したラピの身体がふわっと浮遊感に包まれた瞬間、
ウェールズはラピの襟首を咥える

「ぐえっ」

首が絞められ情けない声が漏れる
ゆっくりと降ろされ、ラピはケホケホと咽る

ギャァギャァ

ウェールズは以前のような可愛らしい鳴き声ではなく、
腹に響くような少しだけ低い鳴き声に変わっている
その声に釣られてか、リョースの人々が集まって来ていた

「おいおい、これがウェールズなのか?」

「随分育ったわねぇ」

「何食わせりゃこんななるんだ?」

皆が思い思いの事を言っていると、人混みが二つに割れて行く
ラピの父、エルフの長フレイの登場だ

「これは……」

3メートル近くなったウェールズを見てフレイの目は丸くなる

「父様……ウェールズをお願いできませんか?」

父の顔色を伺いながらラピは申し訳なさそう言う

「連れては行かぬのか」

フレイは溺愛するラピに目もくれずウェールズを見ている

「一緒にはちょっと…難しい、です」

「ふむ」

フレイはウェールズの周りをぐるりと一周し、
その顔を撫でようと手を伸ばす

アギャッ!!

力強い拒絶の叫びが轟き、咄嗟にフレイは飛び退いていた
本能が危険だと警告してきたのだ

「コラ!ウェールズー!父様に何するー!」

アギャ…

しょぼんと首を下げ、ラピに謝るような体勢になる
そんなウェールズの頭を優しく撫でてラピは言うのだ

「もうやっちゃダメだよ、わかった?」

アギャ

「相変わらず仲は良いようだな」

「はい」

フレイは冷や汗を拭きながらウェールズと一定の距離を保っている

「ところで黒い御仁は何処か」

「あ……」

ラピが後ろにいるサラを恐る恐る見るが、
サラは普段通りの雰囲気でフレイに言った

「今は休養してます」

「そうであったか、厳しい旅だろうが気をつけてくれ」

「はい、ありがとうございます」

サラは慣れない笑顔を作り、嘘をついた
まるでシルトがするように……

「ラピよ、ウェールズは預かろう
 気をつけて旅を続けるのだぞ……もしあれなら帰って来ても良いのだからな」

「はい、でも戻りません」

「そうか……」

誰が見ても分かるくらいフレイは落ち込んでいるが、
ラピは笑顔で続ける

「わたし達はやることがあるんです!」

「そ、そうだな……励めよ」

「はいっ!」

ラピはウェールズに別れを告げる
なかなか離れようとしてくれなかったが、ラピが言い聞かせ、
何とかウェールズはリョースに留まってくれるようだ
ラピの目には小さな雫が光って見えた…

ハーフブリードはリョースを去る
目的地はラーズ首都にある自宅…まずはそこからだ

シルトがどこにいるか分からない以上、闇雲に探しても意味はない
まずは自宅に戻って情報を集める事から始める、そう話し合いで決めたのだ
あれだけ目立つ男だ、情報が無い訳がない

念のためアムリタやネネモリでも聞き込みはしたが、
彼に関する情報は無かった

もしかしてラルアースに戻ってないんじゃないか
という不安は付き纏っていたが、
それもラーズ首都に着く事により払われる

シルトの情報があったのだ

「不動なら10日くらい前か?チラッと見かけたな
 あの黒い鎧は間違いないと思うぜ?」

サラにそう証言してくれたのは同じ冒険者だった
彼はまだ3等級冒険者だが、実力はそこそこある
そして、彼はハーフブリードに憧れている一人だ

「アンタらの役に立てるなら嬉しい」

そう彼は言っていた、恐らく嘘は言っていないだろう
皆は自宅に戻ってから話し合い、其々の得た情報を整理する

「シルトさんは10日くらい前に西門から出て行ったって」

「お、有力情報だね!!」

「良かった、ラルアースには居るんだね」

ジーンはホッと息を吐き出している

「わたしが聞いたのだと、保存食をいっぱい買ってったってー」

「保存食…シルさん嫌いなのに」

「うん、わたしも不思議に思ったよー」

地図を広げ、ラーズ首都の西を見る……

西に広がるのは荒野と山と草原、その先には宗教国家カナラン
ううん、西と言えばワータイガーの街とか地の聖域もある
あぁ、生と死の神の聖域もその方角にある…

「ダメ…選択肢が多すぎる」

サラが頭を抱えると、シャルルが肩に手を置いた

「焦らないの、ね」

「うん……ありがと」

焦らない、そうは言われも心は焦ってしまう
やっと手に入れた情報を無駄にはしたくない
ここで掴まないと二度と掴めなくなってしまう気がするから……

「シルさんとは関係無いんだけどさ、
 ちょっときな臭い話を聞いたのよね」

ジーンがそんな事を言い出し、皆が彼女に注目する

「カナランで子供たちが消えてるらしいよ」

「子供?」

「消える?」

「うん、誘拐事件なのかな、多発してるみたい」

「こわいなー…わたし可愛いからなー、危ないなー」

ラピがそんな事を言うが誰もツッコミは入れない
彼女はたまにこういう事をする
そしてスルーして笑うというのがいつものハーフブリードなのだ
だが、その日は少し違っていた

「うん、気をつけよう」

サラが真面目に答えたのだ
その違和感に何とも言えない気分になるラピだった

「ねぇ、シルトさんがこれ知ってたら…放おっておけないんじゃない?」

「あ!そうかも!」

「確かに、シルさんならありえるね」

「うん、わたしもそう思うー!」

皆が目を合わせ、言葉にはせず頷く

「決まりだね」

「「「おー!」」」

彼女達は宗教国家カナランを目指す、
そこで待ち受けている闇を知らずに……



そして、あのような大惨事が起こるとは誰も予想していなかった


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C.O.M.M.E.N.T

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