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2017_12
02
(Sat)14:22

5章 第5話

オリジナル小説 『カタクリズム』
5章 第5話 【高みを目指して】

1ヶ月ぶりの更新です。
またまた新キャラ出てきてますけど、慣れてね!w


では、続きを読むからどうぞー。


【高みを目指して】





ドラスリア王国、首都ドランセル


海から続く緩い傾斜に作られた都市である
堅牢な城壁に囲まれ、人々の安全は確保され、
常駐するドラスリア騎士団により治安も守られている

海辺には港があり、幾つもの船が停泊している
その先には市場が広がり、併設するように魚を加工する工場も並んでいる

曲がりくねった中央通りには商店が並び、
各国から訪れた商人や観光客でごった返していた

この道が曲がっているのは傾斜のせいもあるが、
防衛目的であるところが大きい
もし敵が来た場合に少しでも時間を稼ぐためだ

しばらく進むと、一際大きな建物が目につく
2本の剣が交差する看板が掲げられているその建物は、
ドラスリア冒険者組合本部である

現在、ドラスリアの冒険者はおおよそ7000人ほどになる
その大半が3・4等級だが、約50人ほど2等級が存在している
その中でも頭一つ抜けているチームがあった………


冒険者組合に隣接する酒場"ロリンダの憂鬱"
昼間から冒険者達が通う、エールが最高に美味い店だ


「おい、そこどけや」

そう言い、人が座る椅子を蹴飛ばした男がいた

「あぁん?喧嘩売ってんのか、てめ……すいやせん」

椅子を蹴られた男はこめかみに血管を浮かばせ振り向くが、
そこにいたのは2等級冒険者【リザリーハンド】のリーダー、
ドッジ・ランベル……彼は一流の薬師である
彼の作る毒薬は強烈な物が多く、魔獣すら屠るほどだ

しかし、ドッジに戦闘力はそこまで無いため、
彼のチームは12人という大所帯である
冒険者のチームとしては異例の人数だが、
彼の毒薬は魔獣を確実に、安全に倒せるため、
これだけの人数が彼の元に集ったのだ

そんな彼等に逆らう冒険者はこの辺りにはいないと言っていい
一部を除いては……

「判りゃいいんだよ、判りゃ
 ほら、さっさとどきな、俺達の席がねぇだろうが」

そんなやり取りを酒場の女亭主ロリンダが困り顔で眺めていると、
彼女に耳打ちする人物がいた

「おばちゃん、あれ追っ払ったら今日の酒まけてくれよ」

しししっと笑うこの女を見たロリンダは軽いため息を洩らしこう言うのだ

「そりゃありがたいけど、店は壊さないでくんな」

「わーってるって」

ひらひらと手を振りながらドッジに近づく女の背を見ながら、
ロリンダは彼女が好きな酒…エールを用意するのだった

「よ、おっちゃん、どいてくれる?」

肩をトントンと2回叩き、彼が振り向くのを待つ

「は?俺の空耳かぁ?この俺、ドッジ様に
 "どけ"とか言う頭に蛆のわいたバァカがいるのかぁ?」

振り向いたドッジの頬に指がめり込んだ
女はドッジが振り向くのを指を突き立てたまま待っていたのだ
イラッとしたドッジは女の顔を見上げる……

「あ……あ、姐さんでしたか」

「よ、ドッジぃ、また悪さしてないだろうね?」

「いえいえ、滅相もない、すぐどきますんで……」

へこへことするドッジに周りの視線が集まる
先程まで偉そうにしていたのが嘘のようなその態度に失笑する者すらいた

「おい!お前ら!席空けろ!」

リザリーハンドすら恐れるこの女……ニールもまた冒険者である

【ミョルニル】

3人で構成された小規模のチームだ
リーダーは、死蝶の二つ名を持つ「ニール・グレイヴ」
生の魔法使いの「リグレット・ロワ」
風の魔法使いの「エイグット・ロワ」
リグレットとエイグットは姉弟である
ニールとは幼馴染でもあり、3人はとても仲が良かった

ロワ姉弟は低級貴族の生まれだ
金に困った父は彼等姉弟をドラスリア騎士団に入れようとしたが、
訓練兵時代にロワ姉弟は逃げ出している
そのため、家からは勘当され、ニールと組んだのだ

彼等の家に仕えていた使用人グレイヴ家の一人娘がニールである
彼女は幼い頃より身体能力が高く、
女性とは思えない筋力を有していた

年上で優れた人物であるニールはロワ姉弟の憧れであり、
身分の違いなど気にしないロワ姉弟は彼女を「姉御」と呼んで慕っていた

そんな彼等は元々は3等級で細々とやっていたチームなのだが、
ある冒険で手に入れてしまった武器により一変する事となった

アーティファクト武器……【ミョルニル】

巨大なハンマーであるそれは、見た目ほど重くはない
だが、常人では持ち上げる事も困難なほどの重量はあった
しかし、ニールでも何とか扱える物だった
そして、1年近くかけ、ニールはミョルニルを使いこなしたのである

巨大な鉄槌を振るい、敵を撃滅する彼女を
人々はいつからか【死蝶】と呼んだ

この二つ名はミョルニルに刻まれた紋章が蝶にも見えた事と、
ミョルニルに掛かっている魔法が由来である

ニールはこの二つ名を気に入っていた
その名をくれた武器に感謝し、チーム名をミョルニルに改名した
更に、自身の左肩に紫の蝶のタトゥーすら入れている
それほど、この1本の武器は大事なものとなったのである

ニール・グレイヴ

雑に切られたギザギザした髪で筋肉質のニールは美人とはほど遠い
だが、持ち前の明るさや、独特なカリスマ性により人気はあった

かの1等級冒険者、月華のシウやハーフブリードと並ぶとも言われいる
未来の1等級冒険者……そう噂されるほどなのである

ロワ姉弟は華奢で、人形のような整った顔をしている
特に弟のエイグットは一部の女性達から大人気だ

リグレットには一部のコアなファンがついているが、
当の本人は嫌がっているらしい

「おっし、酒だ、酒」

空いた席についたミョルニルの3人は談笑しながら昼食を取る
ニールはすでに3杯目のエールを空にしたところだが、
彼女は樽で飲んでも酔わないんじゃないか、と思うほど酒に強い
そのため、ロワ姉弟は昼間から飲むのを止めはしない

「姉御、聞いてますか?」

「あん?聞いてる聞いてる」

「そろそろ戦争が始まりそうな気配なんですよ」

エイグットは情報収集に長けた少年である
彼の風の魔法は一流で、この若さで上級8章まで会得している
ラーズにいる"元素"と並ぶと称されるほどの天才なのだ

しかし、彼の物腰は柔らかく人当たりが良いため、
ついつい情報を洩らしてしまう人が多いという訳だ

「戦争ねぇ」

「私達には無関係よ、それよりも次の仕事をどうするかが問題だわ」

リグレットはエイグット同様、優れた生の魔法使いである
弟より1つ歳上の彼女の見た目はエイグットより幼く見える
それは彼女がとても気にしているので誰も言わないが、
必死にお姉さんぶる彼女の姿は少し微笑ましかった

「姉さんはまたそうやって……戦争ですよ?」

「だからいいじゃない、私達には関係ないし、
 いざとなったらカナランにでも行けばいいじゃない」

あっちでも仕事くらいあるでしょう?とリグレットは付け足す
それは確かにそうなのだが、冒険者とは国に属してるものなのである
冒険者組合は各国で別の組織となっており、
ドラスリアで2等級だからカナランでも2等級扱いという訳ではないのだ

しかし、その名が知られる者ならばある程度の待遇は受けれるが、
それでも報酬などは下がると言っていい

だが、そうでない存在が1つだけある……それが、1等級冒険者だ

1等級だけはどの国でも1等級扱いなのだ
そのため、選ばれる基準はかなり厳しいものとなっている
国の顔とも言える冒険者となるためだ

1等級に失敗は許されない
1等級とは絶対的な強さが無ければいけないのである

「お前ら喧嘩すんなって、仕事ならあるからよ」

ニールが二人の頭をポンポンと撫でながら歯を見せ笑う

「あら、もう決まっているの?」

「どんな仕事なんです?」

二人は少し嬉しそうにニールを見上げる

「ウチも内容は知らないんだわ、あははは!」

「はぁ~……」

「だと思いました……」

こうして彼等は昼食を終え、3人で隣の建物へと入ってゆく……

「で、ウチらに何の用だ、ダンジの旦那」

今、ミョルニルは冒険者組合の一室にいる
それは、組合長ダンジが呼び出したためだ

「忙しいところすまないね
 実は重要な仕事が入っているんだ…頼めるかい」

「これ、次第だね」

ニールが指で輪を作り、ニカッと白い歯を見せる
テーブルに片足を乗せるニールの後ろにはロワ姉弟が立っている
彼等はピクリとも動かず、その表情も人形のように動かない

「ははは、もちろん期待に応えられる額は出そう
 なんせ今回の依頼者はあの…………」

ダンジが手で口元を隠すようにニールに耳打ちする
すると、ニールの目は大きく見開かれ、ニヤりとした

「そいつは面白い、判った、受けよう」

「おや、先に依頼内容は聞かなくていいのかい」

ニールは後ろに立つ二人を一瞥し、彼等は頷く事で答える
それを見たニールは二人の腰辺りを拳で軽く小突く

「だとよっ」

「そうか、助かるよ」

ダンジはこのニールという女性が少し苦手だ
確かに実力はある、だが…態度がデカすぎるのだ
しかし、彼女達でなければこなせない依頼は多いため、
こちらは下手に出るしかないのだ

「では、依頼内容を伝える……」

ダンジは書面に目を通しながら続ける

「何やら倒して欲しい悪党がいるという話だ
 対象はまだ知らされていないが、
 かなりの手練れとのことだ……いけるか?」

「愚問」

「ですね」

ロワ姉弟が口を開く、そしてニールが歯を見せ笑う

「だとよっ、あっはっは!」

「ごほん……では、続けるぞ?
 依頼の前に直接会いたいと仰っている」

「お?そいつはいいね、ウチらはどこへ行けばいい」

ダンジはこんな奴らを行かせていいのだろうか?
と、少し悩むが依頼者からの願いだ、やむを得まい
覚悟を決めたダンジは言う

「……ドラスリア城だ」

・・・・・

・・・



冒険者組合本部から更に曲がりくねった道を上り、
巨大な門を2つ抜けた先に王城がそびえ立つ
しかし、そのまま正門という訳ではなく、
城を大きく迂回しなければ入れない面倒な作りとなっていた

ミョルニル一行がドラスリア城正門へと着くと、
門兵が敬礼をし、大声で叫ぶ

『開門!』

彼等はミョルニルは上級貴族を迎えるように丁重に扱われ、
通された部屋は見たこともない絢爛豪華なものだった

「姉御、これ食べていいのかしら?」

「あん?いいんじゃねーの?」

テーブルに山盛りの果物があり、リグレットが目を輝かせていた
彼女はその中から黄緑色の果物を取り、
服で軽く拭いてからかぶりつく

シャクッ

「んほ~!」

リグレットが美味しさのあまり奇声を上げ、
弟のエイグットが釣られて同じ果物を手に取る

シャクッ

「…これは美味しいですね」

「でしょでしょ?お姉ちゃんもビックリよ」

「姉さんはホント食い意地が張ってるんですから……」

「アナタだって食べてるじゃない」

「そうですけど……」

ロワ姉弟がそんな会話をしていると、
竜の彫刻が刻まれている分厚い扉が開く
入って来たのは1人の女性だった

女性は妙に背の高い白い帽子を被っており、
そこから垂れ下がる半透明のベールにより顔は見えにくい
しかし、袖口にある双頭の竜の紋章が誰であるかを語っていた

彼女こそドラスリア国王の実母エレナ・ベル・ドラスリア

王太后であるエレナは、現在ドラスリア王国を牛耳っている
現王イーリアスを亡き者にしようと主犯である
彼女は貴族達を味方につけ、王代理として玉座についていた

実質、国のトップである彼女の呼び出しだ
平民であるニールにとってこれほど興奮する事はない
あの王太后が平民である自分に"お願い"があるのだから、
これほど笑える事があるだろうか

彼女が入って来た時からロワ姉弟は頭を下げいてる
だが、ニールは違っていた……彼女は椅子に座ったままだ
王太后に見えるようにわざとらしく大袈裟に足をテーブルへと置き、
横に置いてあるミョルニルを軽く持ち上げてから手を放す

ゴッ!

床の大理石にヒビが入り、ミョルニルがめり込む
その光景を見たエレナは口元を扇子で隠し、眉間にシワを寄せていた

「ウチはニール、死蝶のニール・グレイヴ様さ」

入り口に立っていた衛兵が駆け寄ろうとするが、
彼等を王太后は手で制し、ニールの向かい側に腰を下ろす

「噂はかねがね伺っております
 ミョルニルは今回の依頼……受けてくださるので?」

至って冷静に、落ち着いた声で王太后は言う
依頼者との立場を確立しようとしていたニールは出鼻を挫かれた

「あぁ、受けてやるよ
 王太后様直々のご依頼とありゃ、
 受けない理由にはいかないだろう?」

「よろしい」

エレナは手を2回パンパンと叩く
すると、侍女が入室し、トレイに乗せた金貨の山をテーブルに置いた

「へぇ……」

金貨の山にニールが唸る
パッと見ただけでもドラスリア金貨400枚はあるだろうか
2等級の報酬としては最上級の報酬と言えよう
だが、エレナはこう続ける

「これは前金です」

前金?この額でか?
ニールは驚きのあまり引きつった笑顔になる

「あんた、ウチらに何やらせようってんだ」

侍女が退出したのを確認し、エレナは一呼吸置いてから言う

「……国賊たるラシュフォード三姉妹の暗殺」

「ラシュフォード?それって"あの"ラシュフォードか?」

「えぇ」

ニールは腕を組み、足をテーブルから下ろし考え込む

「ウチの記憶が間違ってなけりゃ、
 ラシュフォードってのは国の守護神だろ?なんで国賊なんだ?」

「えぇ、以前は……」

「それと、なんで当主じゃなく三姉妹なんだ?」

その問いには口元を扇子で隠し、俯き気味に言う

「三姉妹が反旗を翻した、とだけ」

「ラシュフォードじゃなく、三姉妹だけでいいんだな?」

「えぇ」

ニールは背後にいるロワ姉弟に目をやる
彼等は渋い顔をしていたが、肩をすくめた
「やれやれ、仕方ない、受けましょ」という意だ

「受けるには受けるが、王太后さんよ
 あんた、まだ何か隠してんだろ?さっさとゲロっちまいな」

ニールは再びテーブルに足をドカッと乗せ聞く
その態度に、その下品な言い回しにエレナは嫌悪するが、
現状では彼女達を頼るのが最善なのは明白のため嫌悪感は飲み込む

「……受けてくださるのですよね?」

「あぁ、そう言ったろ、ニール・グレイヴ様に二言はねぇ」

「ならば言いましょう……敵には巫女が3人おります」

『はぁっ!?』

思わず立ち上がり、声を荒げる
その大声に衛兵が室内に入ろうとするがエレナがそれを制す

「ちょっと待て、待て、巫女ってのはあれか?
 例の不死事件の時、世界を救ったあの巫女達か?」

「えぇ……恥ずかしながら我が国の貴族、
 エイン・トール・ヴァンレン卿もいるようです」

「げ…疾雷もいんのかよ……」

ニールがソファに勢い良く座り、貧乏ゆすりを始めると、
後ろにいたリグレットが口を開く

「王太后様、発言失礼します」

「どうぞ」

「巫女とは、あの"死姫"もいるのでしょうか」

「えぇ」

死姫……リリムの別名だ
彼女は先の戦争でドラスリア兵を1撃で数千人殺した事がある
そのため、巫女の中でも最強最悪の存在として有名なのだ

「姉御、無理よ、私達じゃ勝てないわ」

「ぼくもそう思います」

エイグットも同意見のようだった

「……そうですか、残念です」

王太后は特に残念そうにもせず言う
そんな彼女の態度が気に入らないニールは食らいつく

「なんだ、ハッキリ言えばいいじゃないか」

「えぇ……暗殺が叶わなくとも足止めが出来れば、
 貴方達を1等級に、とも思っていましたもので」

一瞬だが室内に静寂が訪れた

「1……等級……だと…」

「うそ…」

「す、すごい…」

"1等級"……現在ネネモリとラーズにしかいない英雄だ

月華のシウ率いる【月光】
個々が二つ名を持つ【ハーフブリード】

生ける伝説とも言えるあの大英雄達と肩を並べられる
それは彼女達にとって途方もなく魅力的な言葉だった

「えぇ、わたくしの推薦があれば叶いましょう
 貴方達の活躍はわたくしの耳にも届くほど、
 後は誰かの推薦があれば……なのではないかしら?」

確かにその通りだ、自分達にはキッカケが無い
後ろ盾になってくれる人もいない
実力だけなら引けを取らないと思っている

だが、どうやっても1等級にはなれなかった
それは王太后の言う通り、推薦者がいないからだ

「リグレット、エイグット」

「どうしたの、姉御」

「はい?」

ニールの肩はぷるぷると震えており、
俯いていてその表情は見て取れない

「頼む……やらせてくれ……」

「姉御…」

「………」

彼女の拳は血が出そうなほど握られていた
切なる願い…悲願とも言える1等級
それが手の届くところまで来ているのだ

勝ち目はないだろう、でも足止めだけなら……

そう考えるが、それすら厳しいのは明らかだ
下手をしなくても命を落とすかもしれない

自分のワガママにこの姉弟を巻き込みたくない
でも、彼等が居ないとこの夢には届かない

届きたい……あの高みに……

ニールは様々な感情が込み上げて来る
目が潤み、視界が歪むと、姉弟はこう言った

「姉御に着いて行くわ」

「えぇ、ぼくもです」

「……ありがとう」

ニールは袖で涙を拭い、いつもの自信満々の表情に戻り、顔を上げる

「正式に引き受けるよ、王太后さん」

「感謝します」

「その代わり、1等級の件…約束だからな」

「えぇ、もちろんです」

話がまとまった所でエレナは手を4回ほど叩く
すると侍女が再び入室し、その手には何かを持っている
それをテーブルへと並べた侍女は頭を下げて退出する

「貴方達の助けになればと用意させました」

テーブルに並ぶのは4つ

「こちらはハーヴグーヴァの墨」

「ハ、ハーヴグーヴァですか?」

エイグットが驚く

「なんだそりゃ、凄いのか?」

さっぱり判らないニールは彼を見て聞く

「凄いも何も、クラーケンの上位種ですよ!
 その墨が存在すると噂で聞いた事がありますけど、
 本当に実在していたなんて……」

ハーヴグーヴァの墨……それは魔法を扱う者ならば、
誰もが夢見た事が1度はある魔道具である

その墨で術式を身体に描くと膨大な魔力を得る事ができ、
更にその効果は半永久的なものとされているのだ

「次を、よろしいですか」

「あ、はい、申し訳ありません」

エレナは「いえいえ」と首を横に振り、話を続ける

「こちらはユニコーンの角とバイコーンの心臓」

「これまたすんげぇもんだな……」

流石のニールでもそれは知っている
ユニコーンとは数が少なく、その皮ですら超一級品だ
更に一番魔力が篭っている角ともなれば値段は想像もつかない

そして、バイコーン……ユニコーンよりも数の少ない種である

バイコーンはユニコーンよりも遥かに凶暴で、
魔法すら使うため、危険な魔獣として有名だ
その心臓は途方もない魔力を秘めていると言われている

「最後に……竜の逆鱗です」

「待て待て、流石に冗談だろ?竜なんて実在するのか?」

ラルアースにおいて竜とはおとぎ話の存在である
そんなものの鱗が存在すると言われても偽物としか思えない
だが……リグレットの表情は引き攣っていた

「姉御……本物かも……」

その言葉に振り向いたニールはリグレットの表情を見て驚く
彼女は目に涙すら浮かべ、ガタガタと震えていたのだ
それは"恐怖"という感情である

リグレットは魔力を見る目が他者より優れている
その才能は人間だった頃のジーンを遥かに超えるものだろう

そのため、彼女には見えたのだ
竜の怒りが、憎悪が……

魔道具を見るニールの目にはギラギラとしたものが輝き始める

魔道具

いける……いけるぞ!これだけのブツがあれば、
巫女だろうが疾雷だろうが怖くねぇ!

「これを貴方達に託すのは悩みました
 ですが、わたくしは今回の反乱をそれだけ重く見ております」

エレナは窓の外を眺め、遠くを見るような眼をして続ける

「奴らは、息子……イーリアスの命を狙ったのです
 この国の王を狙ったのです、それが許されるでしょうか
 一母として、一王太后として、わたくしは許せません
 どうか、どうか逆賊を……お願い申し上げます」

エレナは涙すら流し、頭を垂れる
そんな王太后の姿に感動し、ロワ姉弟はニールの背を叩く
それに笑顔で応え、ニールは宣言した


「任せときな、王太后さん!
 未来の1等級冒険者のウチらにな!」


・・・・・

・・・



カナラン、聖都コムラーヴェ


巫女不在のカナランを訪れる者は大幅に減る
それは、その大半が巡礼者だからだ
地と火の神殿を訪れる者は普段の1/10ほどしかいないだろう

しかし、カナランには優れた魔道具が数多く存在するため、
それ等を買い付けに来た商人や、信仰心の厚い者達で賑わっている
普段が多すぎるだけなのだ

そんなコムラーヴェの中央通りを歩く集団がいる
彼女達は注目の的となっており、ちょっとした騒ぎにもなっていた

「これじゃシルさん探せないね」

ジーンが辺りを見渡しながら言うと

「んー、どうするー?」

ラピが彼女を見上げながら聞く
しかしジーンは答えず、代わりにサラが答えた

「宿をとって、そこを拠点にシルトさんを探そう?」

「おーし!アタシにまかせろー!」

シャルルは目を閉じ、意識を集中させる
彼女は水の巫女になってから精神統一の鍛錬を重視していた
それは、今までの彼女には多すぎる魔力を扱うためだ

その過程で得た能力がある
ジーンも使う事の出来る"魔力探知"だ

シャルルは意識を集中し、人々、建物、草木など、
ありとあらゆるモノから発生している魔力を感知する
徐々に範囲を広げ、目的の宿を発見した

「あった、空いてる宿があるよ」

「それじゃ行こ」

彼女達が歩き出すと人混みは割れる
それは新たな水の巫女シャルル・フォレストがいるためだ

彼女が水の巫女となった事は既に知られている
だが、半亜人(ハーフキャット)である彼女を快く思わない者も多い
そのためか、まだ人気があるという訳ではないのだ

「それにしても……シャルルが巫女ねぇ」

ジーンが道端に膝をつき、シャルルに祈りを捧げる信徒を見て口にする

「ね、アタシもすごい違和感」

「それはそうと、なんでシャルルは"アタシ"って言うようになったの?」

巫女になってからだよね?とジーンは言う

「あ、うん…なんていうか、マナの記憶が少しあるの
 それの影響かな?何となくこうなっちゃった」

「そっか…巫女の記憶は受け継がれるものなのかな、面白いね」

ジーンがメモ帳に走り書きしながら歩いてく
彼女はこういう細かな知識をすぐにメモする癖があるのだ

「変かな?」

「ううん、私はいいと思うよ」

「うん、わたしもー」

「私はちょっと違和感あるかな
 ずっとシャルルと一緒だったから……」

サラが少しだけ寂しそうにすると、シャルルは彼女に抱きつき
頬で頬にこすりつけ、頭を撫でながら言う

「もぉ、サラは可愛いな~」

「ちょ、やめて、恥ずかしい」

「照れちゃって~、あはは!」

解放されたサラは髪を手櫛で直しながらホッと息を吐き出す
以前の彼女なら髪など気にしていなかったのだが、
最近のサラは妙に髪やら服やら気にするようになっていた

その理由をシャルルは知っているため、
尚更この愛しい妹を抱きしめたくなるのだ

そうこうしている内に目的の宿までたどり着き、
チェックインを済ませたサラは窓から聖都を眺めていた

「シルトさん……私はここだよ……」

無意識に口から出てしまい、ハッとする
気づかれていないかとドキドキしながら振り向いたサラは、
シャルル達のニヤけ顔でがっくりと肩を落とす

「みーんな気づいてるんだから、もう隠さなくていいんだよ!」

「そだよー」

「流石にあれじゃ誰でも解るよね」

「うぅ……」

サラは赤面し、両手で顔を隠してしまう
恥ずかしさを誤魔化すように窓から顔を出し、
風を浴びながら上気した顔を冷やす

その時、風に乗って声が聞こえた気がした

彼女の大きな猫耳がピクピクと動き、先程の音を探す
しかし、喧々とした聖都では1つの音を探すのは難しかった

気のせいかな……

いつの間にか顔の火照りは落ち着き、
心も少し穏やかになった気がする

「みんな、手分けして情報を集めよう」

サラがそう言い、皆が頷く

「2時間後にこの宿に集合で」

「了解、私は街の外周に行ってくるね」

ジーンはメガネをクイッと上げてから退室した

「わかったー、わたしは六神広場行くよー」

ラピはウェールズを抱き上げ出て行く

「アタシは水の神殿と教会行ってくるね」

シャルルは気が重いのか、少し引き攣った笑顔でそう言った

「うん、私はちょっと気になる事があるから調べてくる」

「無茶しないでよ?」

「うん、わかってる」

サラとシャルルは軽くハグしてから部屋を出た

サラの腰には彼から貰ったミスリルロングソードがある
自分の腹を貫いた剣でもあるが、やはり彼女にとってこれは宝物だった

その柄を軽く撫でてからサラは壁を蹴る
タッ、タッ、タッとリズミカルに壁を蹴り、上へ上へと登ってく
屋根まで登った彼女は辺りを見渡し、更に高い場所は無いかと探した

一際高い建物は1つしかなく、
やっぱあそこしかないか……と、ため息を洩らす


彼女は屋根から屋根へと飛び移り、目的地……教会を目指した


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