2015_12
16
(Wed)13:04

1章 第16話

オリジナル小説 『カタクリズム』
1章 第16話 【凱旋】

ここは時間掛かったなぁ・・・。
次も大変そうなんですよねぇ_(┐「ε:)_
でももう少しで1章終わるので頑張りまっす!

続きを読むからどうぞー。









【凱旋】









一同はカナランの聖都コムラーヴェに到着する

高い城壁が街をぐるっと囲んでいる
その長さは一周すると全長8キロにも及ぶ
正門から一番奥には大聖堂があり、そこから街の中央へと道が伸び
中央には円形上の道が走る、六神広場と呼ばれる場所だ

六神広場の内側には各神の神殿が並んでいる
六角形に配置されていると言えば分かりやすいだろうか
各神殿の並びは、大聖堂側から時計回りに生、風、水、死、土、火となっている
それぞれの神殿にはそれぞれの神の石像がそびえ立っていた
その大きさはおよそ7メートル、細部まで丁寧な彫刻が施されている

道はラーズのように舗装はされていないが
荒れてはおらず、歩く分には何不自由ない状態だ
民家の大半はレンガ作りで出来ており
壁の色は白、屋根の色は赤と、全ての家が同じ色に統一されている

六神広場から放射線状に道が広がり、そこに住宅や店が並ぶ
大聖堂の左右には教会守護隊と神殿騎士団の厩舎などが並んでいた



一同は正門で足止めされていた
旅の商人や冒険者など大勢が正門にて荷物の検査などを受けている
コムラーヴェに訪れる者は多く、その多くが巡礼目的だ
街の中は比較的安全だが、それはこの正門での厳しい検問があるからなのだ
しかし、その検問のせいで街へ入るのはかなり掛かってしまう
普段ならそんな事はないのだが、今は特別・・・いや、異常に混み合っていた

「なんだろうね、こんなに混んでるなんて見た事がないよ」

イエルがその行列を眺めながら言う
一同が列に並び、暇を持て余していると
列の前の方から検問官が一人一人にどこから来たのかを訪ねて来る
おそらく検問を早めるために事前に聞いておくのだろう

エイン達一行の10メートルほど前まで来た時
検問官の男が面倒そうに列の後ろに目をやり、見覚えのある女性達を見て顔色が変わる
それはマルロとイエル、地の巫女と火の巫女だ
カナランでは巫女とは神の使い、神の次に偉く、敬うものなのだ
そんな彼女達が行列で待たされている、そんな事があってはならなかった
男は慌てて彼女達の元へ走り、膝をつき、両手と頭を地面にこすりつけ頭を下げる

「巫女様!!お待たせしてしまい申し訳ございませんっ!」

必死な彼に頭を上げるよう言い、イエルは続ける

「一体全体どうしたんだい、この有様は」

列を見て言う、未だ膝をついたままの男は口ごもる
そんな彼の態度にイエルは一瞬考えるが思い浮かばなかった
しばらくして男はゆっくりと口を開く

「あの・・・それがですね・・・巫女様の活躍により世界に死が戻ったのですが・・・」

そう言われてイエルは気がつく

「なるほどね、そういう事かい」

男は再び頭を下げ、立ち上がった

「巫女様御一行様には検問など不要なのでどうぞこちらへ」

検問官の男が手でこちらへと案内する
一行は男の後に着いて行った
行列の人達からは、巫女様だ!など声が上がるが気にせず進む
歓迎ムードには慣れているが、イエルには僅かに違和感を覚えた
ほんの僅かにだがそれでは無い・・・そう、例えるなら憎しみのような
そんな感覚を向けられている気がしたのだった



検問官によって巫女と世界を救った英雄の凱旋の知らせが街中に広がる
それはあっという間に広がり、道という道には人々が出て来て
彼等を歓迎する拍手や黄色い悲鳴が飛び交い、街は一気に騒がしくなった

『世界を救った英雄の帰還だー!』

そこら中から巫女様やら英雄やら叫び声が聞こえる
街はすでにお祭りのようになっていた
彼等が通るように人波は二つに分かれ、道の左右から大きな声援を送っている
楽器が鳴り響き、軽快な音楽を奏でる
数千、数万という人達が彼等10人を歓迎していた

先頭で案内する検問官の男は
まさか自分が英雄を引き連れて歩く事になるとは思っておらず
拍手喝采の中、先頭を歩くのが物凄いプレッシャーになっていた
変な汗をかき、緊張により腕と脚を同じ方を出してしまいそうにもなる
時折後ろを見て、彼等と距離が離れ過ぎていないか確認を取る
この拍手喝采の中、彼等の表情はそんなに明るいものではなかった
その時、事が起きる

後ろを確認していた検問官の前に、一人の少年が飛び出し、立ち塞がる
正面を見た瞬間少年が目に入り、驚いていると少年は大きな声で言い放った

『とうちゃんを返せっ!!』

少年は手に持つ石を投げつける
それは検問官の顔の横を通り、エインの元へと向かう
エインはその石をキャッチする事も避ける事も簡単に出来た
しかし、彼はそれをしなかった・・・顔で、額で受けたのだ
ズキッとした痛みが走り、少量の血が流れる
エインは石がぶつかっても目を閉じておらず、ずっと少年を見たままだった
そんな彼の行動に少年は恐れ、1歩2歩と後ずさる
検問官の男が少年を捕まえようと一歩踏み出した時、エインがそれを左手で制した
黙って男の前に立ち、ゆっくりと少年へと向かって行く
辺りは静寂が支配し、誰もが黙ってその光景を見ていた

少年の膝はガタガタと笑い、歯はガチガチと音を立てる
片腕の男が無表情で向かってくるのだ
しかも、彼の腰には剣がある
自分は殺される、少年はそう思っていた
エインは少年の前にしゃがみ込み、彼の頭をその左手で撫でる
そして優しく微笑んでから真剣な表情に変わり
すまなかった、と一言だけ謝るのだった
彼の微笑みを見て少年の力は抜け、ぺたんと座り込んだ

少年の父親は先の戦争で致命傷を負っていた
死の神が力を取り戻し、世界に死の概念が戻る
その時に世界中で数十万の人が突然倒れ、死んだのだ
それは死の概念が無かった時間に死を迎えた者
彼等の命は神の復活により、その時間を取り戻す
少年の父親は早朝、朝ごはんを食べようとした時
突然椅子から転げ落ち、そして動かなくなったのだ

エイン達、英雄が死の概念を取り戻したのが1週間ほど前だ
彼等は世界を救った英雄であると同時に、一部の者
家族や大切な人を失った者達からは恨まれてもいたのだ

人ごみをかき分け、物凄い形相で走ってくる女性がいた
女性は滑るように少年の元へと行き、彼の頭を抱え、どうか命だけは!と嘆願する
おそらく少年の母親だろう
エインは女性に優しく微笑み、立ち上がり、左手を差し出す
彼の行動が理解できなかった女性は少年を強く抱きしめたまま止まっていた

「自分は何もするつもりはありませんよ」

そう言い、左手を差し伸べる
女性はその手を握り、少年共々起こしてもらう
女性は少年の頭を無理矢理下げさせ、すみませんでした、と一言残し去って行く
エインは二人を目で追っていた
これが俺達がした事なんだ、と心に刻みながら


親子が去り、エインが再び歩き始めた時
辺りからは、うおおおおおおおお!英雄万歳!!と大きな歓声が上がる
そして街は一気に賑やかさを取り戻した
テンションが上がりすぎた一部の者が彼等へと詰め寄る
それに続き大勢の人々が彼等を囲む
もみくちゃにされ、一行は動けなくなってしまう

エインの周りには若い女性達が群がり、あれこれ聞いている
ミラの周りには男達が群がるが、彼女の雰囲気に一歩引いて近寄れずにいる
イエルとマルロに近寄る者はいなく、数歩離れた距離を保っていた
リリムは巫女という事がバレていないせいか、男達にもみくちゃにさている
シルトにも若い女性達が群がり、鎧や盾をペタペタと触ったりしていた
ジーンには豪傑な男から優男まで色々な男達が群がり口説いているが無視している
サラは男達に囲まれ、触れられる度にフーッ!と威嚇しているが徐々に圧され縮こまってしまう
シャルルも若い男達に囲まれ、耳を触られたりして、やめてー!と嘆いている
ラピは主婦達に囲まれ、小さいのに凄いわねぇと褒められており、まんざらでもない


イエルの後ろにマルロが進み、道が開いていく
巫女はカナランでは神にも等しい存在、近寄るなど恐れ多いのだ
彼女達二人に検問官の男とミラも続く
女性や男性をかき分け、エインがリリムの元まで何とかたどり着き
彼女の手を取り、引っ張って行き、ミラの後へと行く

「大丈夫ですか」

エインはリリムの顔を覗き込み、微笑む
リリムは目を輝かせ、満面の笑みで、はいっ♪と頷いた


ジーンは面倒そうに男達を見ていた

「お姉さん、もしかして元素のジーンさんかい?」

「はい」

興味なさそうに答える
それを聞いた男達が一斉に歓声を上げる

「1等級冒険者か!初めて見たぞ!」

あれこれ怒涛の質問されていた時、男達が吹き飛ぶように分かれていく
なんだろう?とジーンが不思議そうにその光景を見ていると
見慣れた水色の頭が見え始める
それを見たジーンはクスッと小さく笑い、彼女を待つ

『どけどけええええええいっ!!』

大声を上げながら男たちをかき分け、現れたのはシャルル・フォレストだった
どうやら男達に耳やら尻尾やら触られ、相当怒っているようである

「行くよっ!」

ジーンの手を取り、再び男達を吹き飛ばすようにかき分けて行く
そんな彼女を見て、ジーンは笑うのだった
ハーフキャットの女の子がジーンを連れて颯爽と去って行き、男達はポカーンとしていた

「今のは・・・まさか蒼天のシャルルか?」

「あの青空のような髪色・・・多分そうだろうな」

「あれがハーフキャットか・・」

男達は彼女達の後ろ姿を目で追っていた


サラは男達に囲まれ、あれこれ聞かれ、時折触れられ、縮こまっている
彼女は人間の男が怖いのだ、触れられれば威嚇していたが数が多すぎる
次第に恐怖が勝り、萎縮してしまう

「本当に猫の耳と尻尾があるんだな」

そう言い男がその耳に触れようとした時、人ごみの向こうから声が聞こえる

「はいはい、通してくださいねー」

シルトが囲んでいた女性達をかき分け、サラを囲む男達を無理矢理引き剥がす
彼はサラが人間の男が怖いのを知っている、だから真っ先にここへ来たのだ
男達をどかし、サラの前へと出る

「サラ、行くよ」

そう言い、彼は手を差し伸べる
下を向いていたサラの耳にシルトの声が近くでして顔を上げる
そこにはいつも見ているシルトの顔があった
サラの表情はパッと明るくなり、彼の手を取る
そしてシルトは男達をかき分け、目で威圧しながら進んで行く

「あれが不動か・・・」

彼の目を見た男達は恐怖していた
彼の細い目には迷いがない、邪魔な者は簡単に殺しそうな、そんな気さえする
そして、彼に押された時、力では抗えない壁が押し寄せてくるような重圧を感じた
それが男たちの恐怖に拍車をかけていた


シルトは人ごみの中でラピを探す
彼女は背が低いので見つけにくい
しかし、それは案外簡単に見つかった

「ラピ、行くよ」

シルトが主婦達に、すみません先を急ぐので、とペコペコしながら割って入る
そこにいたラピは一人の農家風の大柄の男に肩車をされ喜んでいた
男の上からシルトを見下ろし、おー!と返事をする
シルトが大柄の男から彼女を受け取り、脇へと抱える

「ちょ、シルさん!私の扱いおかしい!」

「そう?ほら、ラピだし?」

「なんだそれはー!私は物じゃないぞー!」

ラピが脇でジタバタと暴れるが、シルトはお構いなしに運んで行く
サラはその後ろに続き、シルトのマントの端を掴んで着いて行った
しばらくシルトを先頭に進むと、シャルルの大きな声が聞こえてくる
シルトは方向を変え、シャルルの元へと向かうため、人の波をかき分ける
目的の水色の頭と耳が見え、一直線に向かい、人ごみを抜ける

「シャルル、無事だったかい」

シルトを見たシャルルが目の色を変え、シルトへと詰め寄る

「ちょっと聞いてよ!シルさん!」

そこからシャルルは早口で愚痴を吐き出す
一通り言い終えた彼女は満足そうに、ふぅとため息を洩らす

「それじゃ皆、はぐれないよう着いて来てね」

そう言い、シルトは人の波を片手でこじ開けて行く
ハーフブリードの一行が人ごみを抜け、やっとの思いでエイン達と合流する
巫女であるイエルとマルロを先頭にしていると人々が勝手に道を作っていく
先程までの苦労が嘘のように簡単に進めていた
ちなみに未だにラピはシルトの脇に抱えられている

彼等が向かっているのは一番奥にある大聖堂だ
今は六神広場を東側から回り、風の神殿を通り過ぎたところである
生の神殿の女神像が見え、その横を通り過ぎて行く
六神広場を抜け、真っ直ぐな道に入り、その先に巨大な建造物が目に入る
巨大な塔が3つ連なったような大きな建物、それこそが六神大聖堂だった
ここを管理しているのは教会と呼ばれる組織で
各神の神殿を管理している組織は教会の傘下である
ラルアースにおける宗教の総本山とも言える場所へと向かっていた

お祭り騒ぎのコムラーヴェの街を進んで行く
大聖堂に近づくにつれ、人々は増え、その熱気は凄まじく
彼等、巫女と英雄の一団は熱烈な歓迎を受けていた
大聖堂の入口には司祭達が待っており
一行を大聖堂の奥、大司祭の私室へと案内する

大聖堂に足を踏み入れた一行を最初に迎えたのは巨大なステンドグラスだった
円形上のそれは天井にあり、鮮やかな色彩のガラスが光を通して
色とりどりの光が降り注いでいる
横に長い椅子が何列も並び、その先に祭壇のようなものがあり
その後ろには巨大なパイプオルガンが鎮座している
厳格な雰囲気と、僅かにひんやりとした空気が、この空間の神聖さを強調していた

一行はその大広間の横を抜け、隅にある重そうな扉を開く
扉の先には赤い絨毯が敷かれた通路があり、何個か扉が並んでいる
その一番奥の扉の前まで案内され、司祭達は頭を下げて通路を戻って行った
ミラはコンコンッと2回ノックし、ドアノブに手をかける

「失礼します」

ひと呼吸置いてから扉を開く
中は豪華な金細工の調度品と、高そうな木製の家具がずらっと並ぶ
とても広い部屋の中央には分厚い一枚板で出来た大きなテーブルがあり
背もたれの高い椅子が5席ずつ対面して並んでいる
その先に、この部屋の中では割りと質素な机があり
そこに座っていた人物が彼等を見て立ち上がる
彼こそがこの大聖堂の主、大司祭エレアザル・オシニス
白髪で白い長い髭の鋭い眼差しをした老人だ
高そうな装飾のされた祭服を着ており、頭には50センチにもなる長い帽子をかぶっている
歳の割には腰は曲がっておらず、綺麗な立ち姿で彼等を迎えた

「ようこそ参られた」

彼がテーブルにつくよう促す
一行はそれに従い、各々席へ着くことにする
エレアザルから見て右側にイエル、マルロ、エイン、ミラ、リリムと座り
向かい側にジーン、シャルル、シルト、サラ、ラピの順で座る
エレアザルは自身の机にある椅子に再び座り、彼等を見た

「長く険しい旅、お疲れ様でした」

エレアザルは軽く頭を下げる
彼は一行の顔を見て、ここに居ない者を思い出す

「ガゼム達は・・・ダメでしたか」

鋭い眼差しから力が抜け、落胆の色が見える

「はい・・・私達10名だけが生き残りました」

ミラが覇気の無い声で答える
皆がここに居ない彼等を思い出し、胸を痛める
ジーンは眉間にシワを寄せ俯く、その目は潤んでいた

「つらい旅であったのですね・・・しかし、世界は救われました」

心より感謝します、とエレアザルは再び頭を下げた
彼が顔を上げ、それから事の成り行きを話し出す
一通り伝え終え、そろそろ解放されるかと思っていた頃

「ささやかながら祝いの席を設けたいと思っております」

是非ご参加を、と彼は目を細めて言う
一行に断る理由がなく、了承するのだった
それから一行はそれぞれ個室に案内され、祝賀会用の衣装を借り受ける





会場となったのは大聖堂の東にある教会本部である
ここには大きな会場があり、豪勢なパーティーが開かれていた
おおよそ300人は入っても平気だろうか
天井は高く、クリスタルのシャンデリアが煌き
会場にはふかふかの赤い絨毯が敷かれ、円形のテーブルが並ぶ
テーブルには絨毯までつきそうな白いクロスがかけられており
その上には銀食器や、果物などが並んでいる

ここに集まったのは、大司祭エレアザル・オシニスを始めとする各神の司祭達
各宗派の幹部や、その出資者達、その他諸々、総勢300名にも及ぶ
主役であるエイン達一行が来るのを今か今かと待っていた
そして会場の一番大きな扉が二人のメイドにより左右に開かれる
会場にいる全員が開かれる扉へと目線を向けた


先頭を歩いて来たのはイエル・エフ・リート、火の巫女だ
彼女は普段の法衣とは違う、祭り事用の祭服を着ている
それは赤と白を基調にした豪華なデザインで、ゆったりとしている

その後ろにぴったり着いてくるようにマルロ・ノル・ドルラード、地の巫女がいる
彼女も祭服を身に纏い、少しだけ歩きにくそうにしていた
地の祭服は茶色と白が基調になっており、彼女には少し大きいくらいゆったりしていた

その後ろには死の巫女リリム・ケルトが続く
彼女の服は急遽用意された祭服で、黒と白の法衣が金色の装飾で華やかになっている

次にエイン・トール・ヴァンレンが続く
彼は黒い燕尾服を着ており、普段の力強さよりも、凛々しさが増していた
しかし、その右腕は消失し、袖はだらんと垂れている

そしてミラ・ウル・ラシュフォードが続く
彼女の登場と同時に、会場からは一斉に歓声が上がる
その美しさたるや、誰もが釘付けになるほどだった
スリットの入った錦糸の白いドレスを着ており、彼女の細さを強調させるような
身体にぴったりと合うような服だった
旅の最中はまとめていた長い金髪も解かれており
その美しい髪はシャンデリアの光を反射し、キラキラとしている
一歩一歩ただ歩く姿が美しい、そんな彼女だった

その後ろにハーフブリードのシルトが続く
彼もエインと同じ燕尾服を着ており、彼の首には蝶ネクタイが結ばれている
普段着ない服にぎこちない雰囲気を出しながら彼は歩く

その後ろにはジーン・ヴァルターとシャルル・フォレストが歩いて来る
ジーンは東方風の和服、着物とも言えるドレスを着ていた
着物と違う点を言うなれば、十二単のような重ねられたデザインというところだろう

シャルルは彼女の髪より薄い水色の光沢のあるドレスを着ていた
足元まであるロングスカート、首から肩まで大きく開かれており
彼女の綺麗な肌と、その大きな胸の谷間を強調している
しかし、彼女のドレスには尻尾の穴がなく、お尻の部分が少しばかり膨らんでいる
シャルルは着慣れない服装に足元が若干おぼつかない

最後にラピ・ララノアとサラ・ヘレネスが会場へと入ってくる
ラピは淡い薄緑色のワンピースを着ており、その背丈に似合った幼さを醸し出す
ダリアの刺繍がされており、彼女の笑顔にはぴったりだった

サラの着ているドレスはシャルルと同じ物の色違いだ
彼女の着ているのはワインレッド色で、ほんのりと銀色のラメが入っている
シャルルと同じで、彼女のドレスにも尻尾の穴はなく、お尻部分が僅かに膨らんでいる
顔を真っ赤にして俯きながら歩く彼女も、足元がおぼつかない

会場からは拍手喝采が起こり、一行を歓迎する
一行は会場の奥の中央辺りの席へと案内される
巫女3名とエインとミラが同じテーブルにつき、ハーフブリードは別のテーブルについた
エレアザルから挨拶があり、乾杯をした後は司祭や出資者達が英雄達に声をかける
簡単な挨拶と自己紹介、その繰り返しがひたすら続けられる
いい加減うんざりしていた頃、やっと訪れる人が途切れ、一行がホッとため息を洩らす


「こういうのは久々で、緊張してしまいますね」

エインはあまりこういう堅苦しい場は好きではない
彼も貴族なので慣れていない訳ではないが、彼は戦っている方がまだ気楽なのだ

「この手のパーティーは必要なことですわよ
 貴方はもうこの世界の英雄ですのよ?諦めなさいな」

ミラとエインが話していると、リリムがエインに話しかけたそうにチラチラ見ている
それに気づいたミラは彼女に気を使って話を切り上げ、席を立つ
リリムとすれ違う時、彼女だけに聞こえるよう「頑張りなさい」と軽く肩を叩く
ミラの心遣いに感謝しつつ、リリムはエインに近寄り、声をかけた

「すごいパーティーですね、私緊張しちゃって」

「俺もです」

二人でクスクスと笑い、ビッフェ形式の料理を取る
エインは片手で器用にリリムの分も取り
彼女に手渡し、二人で談笑しながら食事をとっていた
そんな二人の雰囲気は他の男達がリリムに近づくのを躊躇わせていた
それはエインに近づこうとする女性達も同じだった
死の巫女の存在がそれを止めていたのだ
二人はそんな事には気づかず、料理の話や、好きな食べ物の話で盛り上がっていた



イエルは横にいるマルロの様子を見ていた
少女は死の神の復活以降、ほとんど口を開かない
話しかけても返ってくるのは「はい」「わかりました」その程度だ
感情というものが欠如したような、そんな雰囲気があった
それがイエルにはとても心配だったのだ
クガネと離れる時、あれほど泣いていた少女は、あれ以降一切涙を見せない
間違いなく無理はしているだろう、せめて私くらいは見守ってやらないと
イエルはカナランへ戻る最中に自身の中でそう誓っていた

「マルロ、何か食べたいものあるかい」

マルロは頭を小さく横に振り、ただ座っている
話す事もなく、何かを見る事もなく、ただそこにいる
そんな少女の有様にイエルの胸は痛むのだった



「あはは!シルさんそれはないわっ!」

シャルルがシルトを指差し、爆笑しながら言う

「ち、ょ、う、ね、く、た、い」

あはははは!と大声で笑っている
それにはラピもジーンもサラも笑っており、シルトはむすっとしていた

「うっさい、こんなの着慣れてないんだよ」

恥ずかしそうに横を向きながら彼は蝶ネクタイを外す
そのまま上着を脱ぎ、椅子にかけて、ベストにシャツという格好になる
首元のボタンを1つ外して、ハァとため息をつく

「こうなったら食いまくってやる!」

彼はそう言い、腕まくりをして肉を喰らう
シャルルも負けじとドレスと同じ色の手袋を外し、肉を喰らう
ラピは既に高級酒を飲みまくっており、だいたい出来上がっていた
ジーンはひたすら甘い物ばかり食べている
サラは慣れない格好に戸惑い、胸元近くまでの露出してる姿に恥ずかしそうにしていた

「この肉は柔らかくて美味いなぁ、うちで作れないかな」

シルトが食べながら料理の研究をしていた
そんな彼にジーンが淡々と答える

「それは刻んだ玉ねぎに漬け込んでるんだと思うよ」

「え?そうなの!?なるほどなー」

彼女は自分では作らないが、知識だけはあるのだ

「そんな事より、シルさん・・あれどうにかしなくていいの?」

ジーンの言う"あれ"とは、サラの事だ
普段、肌を一切見せない彼女が大胆なドレスを着ている
それだけでもテンパっているだろう
それに加え、会場の男達が彼女に声をかけようと狙っている
ジーンとシャルルはテーブルについて、ひたすら食べているのでなかなか来ないが
サラは先ほどからビッフェの前でウロウロとしていた
そして、男に話しかけられる度、うろたえて、そそくさと逃げていた

「んー、やっぱ自力じゃ無理かな?」

「無理じゃない?」

「そっか、じゃあ行くか」

彼は立ち上がり、サラの元へと歩いて行く
その背中を見ているジーンにシャルルが親指を立てて

「ジーン、グッジョブ!」

片目を瞑り、笑顔で言ってくる
それにジーンは微笑み、再び甘い物へと手を伸ばす

「おーい、サラー」

シルトの声がし、サラが勢いよく振り向く

「え、な、なに」

どう見てもテンパっていた
シルトが頭を掻きながら、サラの元へ辿り着き言う

「一緒に料理取りに行こう、んであっちで皆で食べよう」

「う、うん」

サラは必死に髪で控えめな胸元を隠そうとしながら答える

「サラは自信を持ちな、大丈夫、似合ってるよ」

シルトが笑顔で言いながら、歩き出す
その後ろに俯きながらついてくサラは、先ほどとは違う動揺をしていた

たくさん料理を取り、テーブルに戻って、皆で食べる
ラピは既にベロベロに酔っており、よだれを垂らして寝ている
シャルルはもう食べれない、とお腹をさすっていた
ジーンは食後の果汁酒をちびちびと飲んでいる

「この後なんだけどさ」

シルトの発言により、ラピ以外の皆が彼を見る

「ラーズに帰るよ」

「うんっ!」

「久しぶりにゆっくりしたいね」

「うんうん」

クー・・・スピー・・・・

ラピの寝息が聞こえ、4人は彼女のだらしない寝顔を見て笑う

「ったく、後で運ばないとな」

シルトが笑いながら言い、そこから優しい顔になって続ける

「今回は沢山稼げたし、しばらくゆっくりしたいねぇ」

「うんうん」

「私は新しい実験を進めたいな」

「ジーンはいっつもそれだねー、よくやるわ」

「趣味だからね、こっちで触媒買って帰ろうかな」

「いいんじゃないの、こっちのが安いだろうし」

そんな会話をしている頃、大聖堂の大きな鐘が鳴り響き
彼等のパーティーは終わりを迎える




翌朝、再び大聖堂へと招かれた彼等は、この世界の現状を知る事となった
それは世界に死の概念が戻り、死体が溢れているという事
それは人の死体だけではなく、動物や虫もそうだった
おぞましい数の死体が大地を覆い、そして腐り、腐臭を放つ
そこから発生した虫が病気を広め、世界には病が広がりつつあった
大司祭エレアザル・オシニスは提案をする

「4カ国での共同火葬を執り行おうと思っているのです」

「共同火葬?」

「はい、巫女様達の力を借り、大規模な火葬を行い、病の拡散を少しでも防ぐのです」

「それはとても良い案だと思いますわ
 さっそく国へ帰り、ドラスリアも参加するよう進言致しますわ」

「それでは、私はネネモリに帰って伝えてきます!」

「俺・・自分はリリムに同行します」

「お願いしますっ♪」

「それじゃ、ラーズは僕らですかね?」

「えぇ、お願い致します」

「了解です・・・あ、ラーズに帰って伝えたら、僕らは戻らなくていいですかね?」

その瞬間、ミラが鋭い眼差しをシルトへと向ける
ヘラヘラとしながら彼は続ける

「契約はもう終えてるので・・・僕らは僕らの生活がありますんで」

シルトはペコペコと頭を下げる
彼等は冒険者、彼の言う事に間違いは一切ない
しかし、ミラはラルアース全土が関係するようなこの出来事に無関心な彼等に腹が立つ
今それを彼に言っても意味が無いので口は開かないが・・・

「分かりました、残念ですが共同火葬には不参加と伝えておきます」

エレアザルは本当に残念そうに言い、話を続ける

「では、場所はナーテアの南の荒野という胸をお伝えください」






そうして話し合いは終わり、それぞれが旅を支度を始めるのだった





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