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(Wed)16:11

2章 第7話

オリジナル小説 『カタクリズム』
2章 第7話 【王の墓】

今回は思いっ切り書けた感じがします。
久々の27kb超え!楽しかったー(´∀`)

では、続きを読むからどうぞー。








【王の墓】








首都が魔物に侵攻されていた頃、ハーフブリードは西へ向かっていた
ラーズの西に広がるパピルス平原に埋もれる遺跡、王の墓を目指して・・・
首都を出発する際に目にした軍隊を思い出し、彼等の足は早くなっていく
夜の移動は危険が伴うが今はそんな事を言っている場合ではない
彼等は力を手に入れ、大急ぎで戻り、少しでも犠牲を減らそうと思っていた
道中、スナッチャー3体と出会すが、シルトとサラが瞬殺している
移動をしながらシャルル達から回復を受けており、傷はほとんど癒えていた
朝日が登り、日が高くなる頃、目的地へと到着する

「ここらへんのはずだよ」

シルトが古い記憶を頼りに辺りを見渡し言う
平原には30~40センチほどの草が生えているが
この一角だけには70センチほどの高い草が生えていた
その草はしだれ桜のように垂れ下がる緑色の細く肉厚な葉をしていた

「これこれ、この草が遺跡の周りにだけ生えてるんだよ」

「へぇ、それじゃこの辺を探せばいいのかな?」

ラピが肉厚な葉を毟り、じーっと観察していた
肩にいるウェールズがそれを欲し、渋々食べさせている
繊維が多いせいか、ウェールズは食べにくそうにしていた

「窪みがあるはずだから気を付けてね」

「「「「りょうかーい」」」」

10メートル間隔で横一列に並び、遺跡を探し始めた
数分した頃、ウェールズがラピの肩から飛び降り、とことこと走り出す

「どうしたのー?待ってー」

普段はラピから離れる事などしないウェールズが何かに引き寄せられるように駆ける
そして、15メートルほど進んだ所で何かを見つけ、ギャアギャアと吠える
皆がその声に気づき、声のする方へと向かっていた
草をかき分け辿り着いた先には大きな窪みがあり、その先には石の扉があった

「これ・・・だよね?」

「うん、ここだわ」

「ウェールズ、勝手に走ってっちゃダメだよ?」

「チビ助が見つけてくれたんだからお手柄お手柄」

「んー、でもダメだよ?わかった?」

ギャアギャア

ウェールズは遺跡の入口に向かって吠え続けている

「どうしたのー?」

普段のウェールズにはありえない行動だった

「さっきの草食ったのが悪かったとか?」

「えー!それは困るなー」

その時、ウェールズが大きく息を吸い込み、プアッっと黒い煙の輪のようなものを吐き出す
それはノロノロと中空を漂い、力無く落ちていく
しかし、その輪が触れた草は一瞬で枯れ、そして腐った

「「「「「え?」」」」」

全員がその光景を見て驚いた

「今の・・・死の魔法?」

ジーンが片手を口に当てて考え込んでいる

「ウェールズ、死の魔法使えるの!?」

ラピが驚き、ジーンを見上げる
ジーンが腐った草の元へ行き、しゃがみ込み、それを調べている

「うん、これは死の魔法だね・・・それも上位くらいの」

「上位!なんで!?」

「私も分からないよ」

「そう・・・・だよね、ごめん」

「ウェールズって何なの?こんな高度な魔法使う魔物ってそうはいないんだけど」

ジーンが前から気にはなっていたが聞かなかった事を聞く

「んと・・・ウェールズはエルフの秘宝だった卵が孵って出てきた子なの」

「卵?」

「うん、孵った時に私がいて、ウェールズが最初に見たのが私なの」

「それで着いてきてるんだ」

「うん、親と思ってるのかな?」

「多分そうだね・・・・で、何の卵なの?トカゲにしては翼があるし」

「えっと・・・・これ内緒だよ?」

「うん」

「わかった!」

「了解」

「うんうん」

「・・・・ドラゴンっていう種族の子供みたい」

「「「ドラゴン?」」」

シルトとシャルルとサラは聞いた事がなく想像も出来なかった
そんな彼女達にジーンが説明する

「古い文献に載ってる伝説の魔獣、それがドラゴン
 竜とも呼ばれていて、全ての生物の頂点に君臨する種と言われてるよ」

「ウェールズすごーーーい!」

「うんうん、何かカッコイイねー」

「でも、もう絶滅したって載ってたけど・・・もしかして最後の生き残り?」

「えー・・・ウェールズかわいそー」

「かわいそう・・・」

シャルルとサラが涙ぐむ
ジーンの説明に補足するようにラピが続きを話す

「えっと、この子はね、外の世界から来たみたいなの」

「外?」

「うん、ラルアースじゃない世界、山の向こう、海の向こう、森の向こうから」

「外の世界か・・・面白そうだね」

シルトがよからぬ考えを巡らせている、おそらく金の事だろう

「そっちにはまだ竜いるのかな?」

サラが心配そうに聞いてくる

「ちょっと分からないけど・・・どうなのかな?」

ラピがジーンに助け舟を求める

「その可能性は大いにあるだろうね」

その言葉を聞いて、シャルルとサラが笑顔になり、手を合わせている
ラピがしゃがみ込み、ウェールズの頭を撫でる

「良かったね、お友達ができるかもだってー」

ギャア?

吠えるのをやめたウェールズがラピの顔を見て首を傾げていた

シルトが石の扉を開き、入ってすぐのところで彼等は野営の準備を始める
外は風が強くなってきたので中に入ったのだ
ここまで強行軍で来ていた彼等は眠気や疲労の限界でもあった
まだ日が高いが、彼等はそこで眠りにつくのだった・・・

その日の夜

シルトは新しく購入したミスリルウォーシールドを持ち、腕を動かしている
ラージシールドより少し小さいが、悪くない出来だった
ぐっすりと眠る4人の寝顔を見てから、彼は立ち上がる
真っ暗な大部屋を眺め、目を閉じた
彼の脳裏に焼き付いたスラウトの最後を思い出し、拳に力が入る
しかし、思うように力が入らず、自身の手を見る
その手は僅かに震えていた

「くそっ・・・まだダメなのか・・・・しっかりしろ」

小声の愚痴をこぼし、拳で自身の鎧を叩く
篭手と胸当てがぶつかり合い、高い音が響き、シルトはハッとする
寝ている彼女達がもぞもぞと動いていた

「セーフ・・・セーフ・・・」

再び自身の手を見ると、そこに震えはなかった
その手と眠る彼女達を見比べ、シルトは少し笑顔になるのだった

夜も深けた頃

皆が起き、それぞれが戦闘準備に入っている

「シルさんの話を聞いて作戦立ててみたんだけど」

「ん?どんな?」

「石像はこの大部屋には入れないんだよね?」

「多分ね、ここまで来たら引き返して行ったよ」

「なら、攻撃して、ここまで引いて、攻撃を繰り返せばいいんじゃない?」

「なるほど、流石ジーンさん、汚い」

「あはは、汚いってひどい」

ジーンが腹を抱えて笑い、皆も笑っていた

「それじゃジーンさんの作戦通り、ここまで引っ張って攻撃と退避繰り返しで」

皆が頷く

「あの斬撃は尋常じゃない速度だから、僕とサラ以外は間合いに入らないようにね」

「私達は大部屋から出ない方がいいよね?」

「そうだね、サラと僕で囮になるから、ジーンさんの精霊で倒そう」

「分かった、大きいみたいだし、風の精霊がいいかな?」

「地でもいいと思うけど、そこは任せる」

「了解」

「それじゃ、行きますかっ」

「「「「おー!」」」」

シルトとサラが大広間に入る前にラピが聖獣を召喚する

「クンネチュプより・・・・・おいでませっ!」

ラピが両手を上げ、彼女の足元から魔法陣が上昇していく
それは5メートル近い天井付近まで上り、回転を始めた
天井付近の空中に黒い穴が作られ、そこから黒い梟が飛び出す
それはラピの頭へと降り立ち、黄金の大きな瞳を開く
その額には満月のような紋様があり、それが第三の眼のようであった

「クンネレ、いっけー!」

クンネレがラピの頭から飛び立ち、大部屋をぐるりと回り
急降下し、シルトとサラの間を通りすぎる
黒い羽が舞い、その瞬間二人の視界は一変した
暗い闇の世界だった大部屋や大広間は明るい部屋のように見え
その先にある祭壇、2体の巨大な石像すら見えるようになっていた

「ありがとラピ、助かる」

「いえいえー」

3人を残して、シルトとサラだけで大広間へと入っていく
天井は15メートルはあるだろうか、広間は奥行200メートル、横幅50メートルほどある
そこに巨大な柱が規則正しく20メートル間隔で左右に2本ずつ並んでおり
柱の太さは3メートルはあるだろう
数本の巨大な柱を通り過ぎた時、2体の石像が動き出す

ゴゴゴゴゴ・・・

「サラ!気を付けて!」

「うん、シルトさんも」

二人は盾を構え、待ち構える

「相変わらずか、くっそ・・・やっぱデカいな」

石像は足は遅かった、人が全力で走れば追いつかれない程度の速度しかない
ズーン、ズーン、とゆっくりと歩いて来る
その音を聞いて、後方でラピが詠唱を始めた

「カントより・・・・おいでませっ!」

彼女が両手を広げ、魔法陣が彼女の身体を通り抜け、上昇していく
魔法陣は中空で回転し、黒い世界へ繋がった
そこから雷をまとった銀色の狼が現れた

「エペタム!いっけー!」

ラピが指を差し、エペタムは中空を駆け
シルトとサラの中間に止まり、ウォォォォォンと遠吠えをあげる
エペタムから雷が放たれ、二人の背中へと落ち
身体の中から熱くなるような感覚があり、二人の身体能力は飛躍的に跳ね上がる

石像から目を離さず、ゆっくりと後ずさりながら引き寄せる
仮面の石像が振りかぶり、大刀を振るうがシルトの手前1メートルで空を斬った
大部屋まで残り10メートルのところでサラが後ろを向き走り出す
シルトは残り5メートルの位置まで下がって盾を構えた

『シルトさん!戻って!』

サラが叫ぶがシルトは動く気配はない
彼は心の中で城壁防御と呟いた

「ジーンさん、1体頼む」

「わかった」

彼は確かめたかったのだ、今の自分が石像の1撃を防げるのかを
それが分かるだけで皆を助けられるかが判断できる
そのために彼は賭けに出たのだ

「おいで・・・シルフィーヌ」

ジーンが指を鳴らし、それが反響していく
シルトの横7メートルほどの場所につむじ風が発生する
それは次第に強くなり、竜巻へと変わり、幅2メートル、高さ10メートルにもなる
竜巻は弾け、中から緑の服の70センチほどの風を纏う少年が姿を現す

「右の石像の頭部を狙え」

ジーンは石像を目視して、弱点を見抜いていた
ゴーレムに共通する弱点、それはコアとなる部分が頭部にあるという事だ
それはこの石像にも言えた事だった
鬼の石像の額には赤い宝石のようなものが煌めいている
仮面の石像の額にも赤い宝石のようなものが煌めいていた

仮面の石像の上段から下段へと振り下ろしが放たれる
それをシルトはミスリルウォーシールドで受けた
凄まじい衝撃が伝わるが一直線の斬撃など、今のシルトには通じない
彼は盾を傾け、大刀は盾の表面を滑り、地面へとめり込む

いける!

彼の口元が緩む
仮面の石像はすかさず左手の大刀も振るった
それを盾を真横に構え、足を踏ん張り待ち構える
横からなぎ払うような斬撃はシルトの盾に当たり、彼は盾を少しだけ持ち上げる
大刀は盾の表面を滑り、上へと払われた、その大刀は柱へとめり込む
ミスリルウォーシールドは表面が削れ、多少変形するがまだ問題はない

鬼の石像が大刀を振るうがシルフィーヌはふわりとかわし、上昇していく
そして、鬼の石像の顔付近に行き、両手を伸ばした
両手からは風の大玉というべき凝縮された暴風が放たれ
鬼の石像の頭部を丸ごと吹き飛ばした
6メートル近い高さから頭部がズズーンと大きな音を立てて落下する
顔は割れ、額の赤い宝石がカランっと鳴りながら外れていた
シルフィーヌは中空でふっと消え、辺りの風の音は消えていった

崩れ去る鬼の石像を横目に、シルトは今だ動かない
2本の大刀が突き刺さったままの仮面の石像は引き抜こうと暴れていた
そこへサラが駆け寄る、その瞬間柱に刺さっていた大刀は抜け、物凄い速度の斬撃が放たれる
横へ払うような斬撃をサラは跳躍し身体を捻ってかわす
地面に刺さっていた大刀が抜け、再び上段からの斬撃が放たれた
それをシルトが再びウォーシールドで防ぎ、受け流す
ウォーシールドの表面は削れ、右側の一部が折れる
地面に再び大刀が刺さり、その瞬間シルトが叫ぶ

『サラ!おいで!!』

着地したサラはシルト目掛けて全力で走った
シルトは両手で盾を持ち、ハンマー投げのようにくるくると2回転する
それを見て理解したサラがシルト目掛けて跳躍し、彼女は彼の盾に着地する
シルトは盾でサラを大きく上へと放り投げ、足が離れる瞬間にサラも自身で跳躍する
それは5メートル近い高さまで及んだ
しかし、仮面の頭部までは届かない・・・・そこへ石像の左手の大刀が放たれる
それは左下から右上へと斬り上げで、サラは空中で身体を捻る
彼女の盾に剣がかすり、柱へと突き刺さる
サラはミスリルロングソードを石像の胸に刺し、それを足場にして跳躍する
シルトは腰のミスリルブロードソードを抜き、彼女目掛けて全力で投げつける

『サラ!』

目だけで彼を見て、剣が向かって来るのを確認したサラは空中でくるりと回転し
彼の剣をキャッチする、そのまま回転し、石像の頭部へと1撃を食らわした
それは的確に宝石を捉え、パキッと音を立てて宝石が割れる
勢いが無くなったサラは急速に落下していく
浮遊感が彼女を包み、石像の頭部が離れていく
宝石が割れたのは見えたので、彼女は満足そうに微笑んでいた
6メートル近い高さからの落下だ、下手をすれば死ぬだろう
想像をした瞬間、サラの脳裏に恐怖の二文字が過ぎる
しかし、その考えは現実にはならなかった
下でシルトが待ち構えており、サラをお姫様抱っこのようにキャッチした
いくら線の細いサラでも、チェインシャツを着込み、盾と剣を持つ彼女は軽くはなかった
それが6メートルから落ちてきたのだ、その衝撃は凄まじいものだ
シルトは必死に足を踏ん張り、両腕に力を込めて耐える

「ぬぅぉぉぉ!!」

必死に耐えるシルトの顔を見て、サラは胸の奥が熱くなる

ドキンッ

何とか耐え、シルトがゆっくりとサラを降ろす

「ふ~、危なかったぁ・・・いやぁ勝った勝った」

額の汗を腕で拭い、シルトが大きなため息を洩らす
サラはそんな彼の顔をじっと見ていた
それに気づいたシルトが彼女の顔を覗き込む

「ん?どったの?どっか痛い?」

「えっ、ううん、大丈夫」

サラは途端に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして後ろを向いた
そこへシャルルとジーンとラピが駆け寄ってくる

「勝ったー!!」

「いぇーい!」

シルトとシャルルがハイタッチをし、ラピもぴょんぴょんとして混ざりたがる
3人で手をパンパンと合わせ、喜んでいた
ジーンはシルトが投げ捨てた盾の元へ行き、表面を指でなぞる

「すごいねこれ・・・・」

「ん?あぁ、ギリギリって感じかな」

「もう使えそうにないね、これ」

「だね、買ったばかりなのにな」

シルトが苦笑し頬を掻く
そんなシルトにサラが自分のミスリルカイトシールドを手渡してきた

「シルトさん、これ」

「ん?」

「私が使うよりシルトさんの方が上手く使えるから」

「ん、そっか、ありがと」

シルトはカイトシールドを装備し、軽く腕を回す
いつもより遥かに軽い盾に違和感を覚えるが、無いよりはマシだろう

「それじゃ奥へ行きますか」

「おっ宝~♪おっ宝~♪」

シャルルが上機嫌に前を歩く
それにジーンとサラが続き、その後ろにラピが小走りに着いて行く
彼女達の背中を見て、崩れ去った石像2体を見て、シルトは肩が軽くなった気がしていた




祭壇へ向かう途中、シルトが皆を呼び止める

「あ、ちょっと待って」

シルトが小走りに広間の隅の方へと行き、何かを拾ってきた
それは昔、シルトが投げ捨てたミスリルロングソードだった
それをサラに手渡す

「僕の昔使ってた剣だけど」

「あ、ありがと」

サラは剣をシャルルの持つ松明で照らし、微笑む

「サラは2刀流もいけるって聞いたからさ」

バルバトス戦の話は皆から聞いていた
その時のサラはシルトのブロードソードを使い、2刀流で戦った

「あれは必死だっただけで・・・」

「またそんな機会があるかもじゃん?持っておきな」

「うん、わかった」



一行は祭壇まで辿り着く



辺りには骨となったスラウトのメンバーが横たわっていた・・・
シルトは1人1人の遺体を綺麗に並べ、持ってきていた清潔な白いシーツをかける

「ダーヴィさん、ヘカテ、ヒコマメ、リック・・・遅くなってごめん」

彼の目から涙が溢れ、地面を濡らしていく
そんな彼の背中を4人はただ見ている事しか出来なかった・・・
しばらくしてから彼は立ち上がり、涙を拭っていつものにやけ顔になる

「ごめんごめん、お待たせ」

「シルさん・・・」

「シルトさん、無理しないでいいよ」

「うん、そうだよ」

「うん」

「ちょ、やめてよ・・・まじで泣くから、そういうの」

彼は苦笑しながらも、その目には光るものが見える
4人がシルトに駆け寄り、シャルルが彼の頭を撫で、サラが背中をさする
ラピは彼のマントを掴み見上げていた
ジーンは1歩離れてその様子をただじっと見つめている
彼女達の優しさがシルトの涙腺を崩壊させる
目から涙が溢れ、声を出してわんわんと泣いていた
しばらくして落ち着きを取り戻し、鼻声のシルトは言う

「はぁ、泣かされた泣かされた・・・あーもぉ!」

4人が笑っていると、釣られてシルトにも笑顔が戻る

「ダーヴィさん、ヘカテ、ヒコマメ、リック・・・
 これが今の僕の仲間ハーフブリードだよ・・・最高でしょ?」

彼は遺体の前で眼を瞑る

「君達の事は忘れない、君達がいたから僕は強くなれた・・・ありがとう」

眼を開き、後ろを向く

「みんなお疲れさま、またね」

片手を上げて彼は歩み出す、新しい仲間達と共に・・・





祭壇の石棺周りを調べるが特に変わった物は見つからなかった

「やっぱこの道行かないとダメか」

祭壇の左右には細い横道が2つあった

「だね、どっち行く?」

「多数決取ろうか」

「了解」

皆で多数決を取り、4対1で左の道が選ばれた
ちなみに右を選んだのはシルトだ
細道は少し下り気味に30メートルほどあり、抜けた先には再び大広間が広がっていた
反対側の細道も同じ広間に出るようで、多数決をした意味はなかった
クンネレの魔法により暗闇の中を見渡せるシルトとサラは目にした
200メートルはある広間の最奥に横たわる、巨大な生き物を・・・いや、その亡骸を

「あれ・・・死体だよね?」

「うん、多分」

「何かいるの?」

暗闇で見えない3人は少し不安そうにしている

「うん、なんだろあれ・・・デカいトカゲの死体なのかな・・・」

「でも翼生えてるよ?」

「あ、ホントだ」

「トカゲ?翼?・・・・ウェールズと一緒?」

「そんな感じ、ドラゴンってやつなのかも」

ギャアギャアギャアギャア!

ウェールズが鳴き止まず、ラピはずっと頭を撫で、なだめていた
一行が足を進めていると鼻を刺激する強烈な腐臭が辺りに漂ってくる

「くっさっ!何これー!」

シャルルが鼻をつまみ、ジタバタと暴れている

「うぅ、これはしんどい・・・」

サラも鼻をつまみ、口で呼吸していた
他の3人はまだ臭いを感じていなかったが、少し進むとその腐臭の洗礼を受ける

「うわ、これは・・・おぇっ」

「うー、くさーい」

「結構キツいね」

シルトが嘔吐き、ラピが鼻をつまみ、ジーンは鼻と口を手で覆う
ジーンが本を取り出し、魔法を唱える

「生命の輝きを」

本が光り輝き、50メートルほど先にある"それ"が照らされる
それは全長30メートルはあろう生き物の死体だった
肉は腐り、所々骨が顔を見せており、道を塞ぐように横たわっている
2本の鋭い角、長い首、短い手足、鋭い爪、長い尻尾、大きな翼
ウェールズの特徴と酷似する点がいくつもある生き物の死体であった

「臭いの原因は間違いなくこれだな」

若干涙目になるシルトが吐き気を我慢しながら言う

「くさいくさいくさい!」

シャルルが地団駄を踏み、サラが目をギュッと瞑り耐えている

「ウェールズこんなデカくなるのか」

ギャアギャアギャアギャア!

「これがいたから騒いでたのかな?」

「多分そうだね」

「横を通って行きましょう」

ジーンが口元を手で覆い、曇った声で言った

「はやく行こー」

ラピが鼻をつまみながら涙目になっている
一行がドラゴンの死体の顔の前を通り過ぎようとした時
腐り落ちているはずのその片目の奥に紫の光が宿る

『ええええええっ!』

シャルルが叫び、皆も気づく

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

どう見ても腐っている巨大なドラゴンの死体が動き出した

『3人は離れて!サラ!』

「うん」

シルトがカイトシールドとブロードソードを構え
サラはミスリルロングソードを2本構える
全力で走る3人は30メートル以上距離を取り、振り返る
完全に腐っていたはずの死体は起き上がり、グルルルルという唸り声すら上げていた

「どうなってんの!死体じゃんあれ!」

「もしかして・・・ゾンビ?」

「ゾンビってなに?」

「アンデッド、簡単に言うと動く死体の魔物」

「えー、むちゃくちゃなー」

「まずい、シルさん達にも知らせないと」

ジーンが少し前に出て叫ぶ

『シルさん!サラ!そいつ毒持ってる!それと、物理攻撃は効かない!』

『まじか!』

『生の魔法と火の魔法だけ効くからこっちで何とかする!』

『分かった!頼む!』

ふぅ、と一息ついて後ろを向くと、シャルルの目が輝いていた

「ん?どうしたの?」

「生の魔法が効くの?」

「うん、アンデッドには生の魔法が特効だよ」

『おーーーーっし!!まっかせなさーーーーーい!!』

シャルルが腕まくりをして気合を入れる

「「え?」」

ジーンとラピが驚き、固まっていると

『私の時代がきたああああああ!!』

ジーンに両手杖を押し付け、シャルルは足を開いて踏ん張り、両手を大きく広げる

『根源たる生の灯火よっ!』

両手に青い炎が宿り、それを見てニヤリとする
その頃、シルトとサラは動き出したドラゴンゾンビの噛み付きや腕をかわし、盾で防いでいた
遠くからシャルルの叫び声が聞こえ、気にはなっているが目が離せない
ドラゴンゾンビの動きはそれほど早くはないが、1撃1撃が重いのだ
それに加え、シルトが使っているのはサラのカイトシールドだ
そして、サラは今は盾を持っていない
1撃を食らえば不味いこの状況では一瞬たりとも目を離す事は出来なかった

『私に任せろおおおおおっ!!』

シャルルが叫びながら走り出す
ハーフキャットである彼女の足は驚くほど早い
そこへラピが詠唱を始めた

「カントより・・・・おいでませっ!」

魔法陣が上昇し、中空に穴をあけ、そこから雷をまとった銀色の狼が現れる

「エペタム!シャルルを!」

彼女を指差し、エペタムが中空を駆ける
シャルルがドラゴンゾンビの脇腹に到達すると同時にエペタムの雷が背中に落ちる
全身から湧き出る力にシャルルの口元が緩み、拳に力を込める


『生の灯火ぱーーーーーーーーーーーーんちっ!!』


ドゴッ!という鈍い音を上げ、ドラゴンゾンビの脇腹に60センチはある大穴があく
しかし、ドラゴンゾンビは気にもしていなかった
ゾンビには痛覚が無いのだ、そのためシャルルの存在に気づいていなかった

『おーりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーっ!』

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ!

シャルルが生の灯火が宿った両手で連打を食らわす
腐肉が蒸発するように消え、骨が崩れさり、次第にシャルルが体内へと入って行く

『くっさーーーーーーーーーーーーー!!』

ドラゴンゾンビの体内から彼女の叫び声が響き、ジーンが頭を抱え、ため息をつく
そこでジーンがある事を思い出し、シャルルへ向けて叫ぶ

『シャルルっ!体内のどこかに核があるはず!それに生の魔法を叩き込んで!』

『任せろおおおおおおおおおっ!!
 おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーーーーーっ!!』

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴッ!

徐々に彼女の叫び声が小さくなっていき、完全に姿を消す
強烈な腐臭の中、シャルルは腐肉と骨を破壊し突き進む
右も左も分からず闇雲に進んでいた
これじゃキリがないと判断したシャルルは魔法の重ね掛けをする

『根源たる生の灯火よおおおおおおっ!』

両手の青い炎が勢いを増し、その1撃1撃で破壊する範囲が広がった

『おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーーーーーっ!!』

そして彼女は見つけ出す、ドラゴンゾンビの核となる部分を
30センチもある赤い宝石が禍々しいオーラを放って鎮座していた
シャルルは右手にありったけの力を込めて魔法を唱える

『魂の再生っ!!』

両手の青い炎が消え、右手に眩い白い光が宿る
光を浴びた腐肉や骨ががどんどん消滅していく

『これでっ!ラストォォォォォォォっ!!』

ドゴーーンッ!

彼女の右手が赤い宝石にめり込み、ヒビが入っていく
右手の光が輝きを増してから消え、赤い宝石は崩れ落ちた

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

地鳴りが響く

「え?」

シャルルが辺りをキョロキョロと見渡していると、上から腐肉の雨が降ってくる

『ぎゃあああああああっ!くっさーーーーーーーーーいっ!』

ビチャッ、ビチャッと真新しい服を汚し、彼女は腐肉まみれになる

『わああああああああっ!』

崩れ落ちるドラゴンゾンビの中でシャルルは腐肉に包まれた



ドラゴンゾンビは崩れ落ち、今は腐肉の海と化している
骨格だけが残り、その中から腐肉まみれのシャルルが姿を現した

「う"・・・・おえっ」

シャルルが嘔吐し、がっくりとうなだれている
ビチャ、ビチャ、という水音の含む足音を立てながら歩いて来る

「・・・・・うっ」

シャルルは涙目で吐き気を我慢していた

「くっさっ!」

シルトが鼻をつまみ、眉間にシワを寄せる
サラも鼻をつまんで目をギュッと瞑り、横を向いていた
ラピは笑いながら鼻をつまんでいる
ジーンは口元をハンカチで覆い、苦笑していた

「お風呂入りたい・・・」

「今は我慢我慢・・・・くさっ」

「臭いって言うなーーーー!」

シャルルがシルトを蹴飛ばし、腐肉が飛び散る
女性陣はザザッと一瞬で離れ、距離を取る

「なんだよー!皆してー!」

確かに臭いけど・・・としょぼくれるシャルルだった
サラが荷物袋からタオルを出してシャルルに手渡す、鼻をつまみながら

「ありがと・・・」

シャルルは涙目で服や髪を拭いていた
鼻が慣れてきた一行は次第にシャルルの心配をする

「シャルル、毒平気なの?」

ジーンが彼女の服を念入りに拭きながら言う

「毒?ん?平気みたい」

「そっか、その服の効果すごいね」

「うん!買って良かったー!・・・汚れちゃったけど・・・」

「洗えば大丈夫だよ」

「うん・・・早く洗いたい」

「それじゃ、さっさとお宝ゲットして帰りますか」

「「「「おー!」」」」

その時、ウェールズがラピの肩から飛び降り、走り出す

「どこいくのー?」

ラピがとたとたとウェールズの鳴く方へと走る
ウェールズはドラゴンゾンビの頭蓋骨の前でギャアギャアと吠えていた
ラピが頭蓋骨を覗き込み、目の奥に何かを見つける

『シルさーん』

「ん?」

シルトがラピの元まで駆け寄り、どったの?とラピの指差す竜の眼を覗き込む
その奥には紫の宝石のようなものが見えた

「お?お宝かな?」

シルトが手を伸ばしそれを掴む

「よっと・・・ほい、ラピのもんね」

彼が手渡した3センチほどの紫の宝石はドクンドクンと脈打っていた
ウェールズがその宝石に向かい吠える
ラピがしゃがみ込み、ウェールズにその宝石を近づけると
その宝石に頬ずりをしていた、どうやら気に入ったらしい
ラピは宝石を綺麗に拭き、ウェールズに手渡してやると
両手でしっかりと掴み、クークーと嬉しそうな声を洩らしていた


一行が骨だけになったドラゴンゾンビの死体の横を通り
その奥にある祭壇へと辿り着く
そこにも石棺があり、今はジーンが罠が無いか調べている
何も無い事を確認し、片側をシルト、反対側をジーンとサラとシャルルで持つ
一気に横にずらし、石の蓋がゴトッと大きな音を立てて地面に落ちる
ジーンの魔法により照らされた石棺の中には様々な物が入っていた

一番目につくのは大きな盾、ラージシールドに似た形の漆黒の盾だった
艶がなく、吸い込まれそうな黒のそれは、シルトが着る鎧と同じ素材に見えた
銀色の縁取りがされており、中央には狐の顔のような紋様が彫られている
それは広間にある柱に刻まれた紋様と同じものだった

「これは・・・常闇の盾かな」

「おー!すごいね!」

シルトが大盾を手にすると、心の中に言葉が浮かび上がる・・・

「反射・・・・常闇・・・王?」

「ん?なにそれ」

ラピが興味深々に聞いてくる

「この鎧もそうなんだけど、装備すると言葉が浮かんでくるんよ」

「へぇ、不思議だねー」

「反射か、後で試してみよう」

続いて目につくのは巨大な斧だ
金色のそれは細かい装飾が施されている

「これは誰も使えなそうだね、後で売ろう」

「だね」

「うんうん」

続いて、石棺からブーツを取り出す
何かの魔物の革で出来たそれは驚くほど軽く、そして硬かった

「すごい、これバイコーンの革だ」

ジーンがブーツを手にして驚いている

「バイコーン?」

「バイコーンっていうのはね
 双角獣って言われて、ユニコーン・・一角獣と対になる魔物なの」

「へー!どんな魔物なのー?」

「ユニコーンは処女の心の綺麗な者しか乗せないとされていて
 バイコーンはその反対、淫乱な女性しか乗せないと言われている魔物だよ」

「あはは!えっちな魔物だ!」

シャルルが爆笑し、皆もクスクスと笑う

「あ、待って・・・・これアーティファクトだ」

「「「「え?」」」」

ジーンが眼鏡をくいっと上げ、ブーツを念入りに見る
この眼鏡は魔力の流れを見やすくするレンズを使っているのだ

「うん、アーティファクトだね、スピードアップ系みたい」

「「「「おー!」」」」

「じゃ、サラがもらいな」

「いいの?」

「それがいいよー!」

「うん!私もそう思う!」

「ありがとう・・・バイコーンは複雑だけど」

サラが苦笑しながらジーンからブーツを受け取る
続いて石棺から取り出したのは十字のマークが6つ入ったブレスレットだった
ジーンが手に取り、魔力の流れを見る

「嘘、これもアーティファクトだよ」

「どんな効果なの?」

「んー、魔力を増やすみたい、バジリスクの瞳のもっと凄いのと思ってくれればいいかな」

「おおー!」

「それジーンがいいんじゃない?」

「そうだね、精霊は魔力消費激しいからな」

「ありがと、大切に使うね」

さっそくブレスレットを腕に通したジーンは胸の奥から膨大な魔力を感じる

「うわ・・・これすごい魔力量」

「おー!良かったね!」

「うん、ホントありがとう」

次に取り出したのは2つの指輪だった
片方はベージュ色の薔薇の指輪で、もう片方は青い宝石がついた王冠のような指輪だった
その2つの指輪はチェーンで繋がっていた
ジーンがそれを手に取り、調べる

「これは・・・・すごい」

「なになに!」

「それもアーティファクトとか?」

「うん、これもアーティファクト、しかも2属性の」

「「「「おおー!」」」」

「生と風の魔法みたい」

「はいはいはい!私が欲しい!」

シャルルが真っ直ぐに手を上げ、ぴょんぴょんと跳ねる

「これはシャルル以外ありえないよね」

「うんうん」

「そうだね、シャルルがいいと思う」

「私もそう思うー」

「ありがとー!」

早速指輪をはめ、手をかざしニコニコとするシャルルだった
彼女の頭の中に不思議な感覚が流れ込む

「っ!?」

シャルルが驚き、尻尾がピーンと立ち上がる

「どうしたの?」

「不思議な感じ・・・何かこれすごいかも」

「後で試してみようね」

「うん!」

続いて石棺から取り出したのは小さな花のピアスだった
それはスズランの花の形をしていた
ジーンが手に取り調べ始める

「これ可愛いねー」

ラピがその手を覗き込んでぴょんぴょんと跳ねる
そんなラピに微笑みを返したジーンの表情が急に強張る

「何これ・・・信じられない」

「ん?どったの?」

「これ、ラピしか使えないと思う」

そう言い、ジーンがラピに手渡す

「このピアスは異界に通じてる、しかもラピと繋がってる」

「異界!?」

「だ、大丈夫なの?」

「分からない・・・ラピ、どう?」

ピアスをつけてみたラピが目を瞑る

「あ・・・・すごい温かい感じ・・・」

「なら、大丈夫かな・・・私の繋がった"あれ"はどす黒い感覚だったから」

「なんで私と繋がってるのかな?」

「んー・・・私にも少しだけ繋がりがあるから、エルフの血が関係あるのかも?」

「なるほど」

「推測でしかないけどね」

石棺から最後に取り出したのは鍵だった
ジーンが手にし、魔力の流れを調べる

「これはただの鍵かな・・・でも魔力は感じるから何か魔法が掛かってそう」

「お宝の鍵かな!?」

シャルルが目を輝かせて聞く

「だといいね」

ジーンが微笑み、その鍵はシルトへと預けた
辺りを捜索したが道らしいものはなく、そこで行き止まりだった
一行はアーティファクト装備を5つ、巨大な斧を1つ手に入れ王の墓を後にするのだった





その頃、ラーズ首都では再び会議が行われていた




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