2016_02
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(Wed)09:12

2章 第14話

オリジナル小説 『カタクリズム』
2章 第14話 【ハーフブリード】其の二

いやぁ、幼いシャルルとサラは書いてて楽しいっすわ。
良いなー、この3人良いなー。

では、続きを読むからどうぞー。









【ハーフブリード】其の二






シャルルとサラが4等級冒険者としての日々を過ごして1年以上の月日が経っていた
シルトは週に5日は顔を出し、サラに稽古をつけ、二人に料理を振舞っている
これが3人にとっての日常となってきていた、そんなある日の朝・・・

「おはようございまーす!」

シャルルが冒険者組合のカウンターに身を乗り出し、受付嬢に元気よく挨拶をする
サラが背伸びして1枚の紙を置き、受付嬢がそれを受け取り、目を通した

「今日はこの依頼を受けるのね」

「うん!」

「ふふ、シャルルちゃんはいつも元気ね」

受付嬢は普段見せない笑顔を少女達に向ける
受付たる者、常に冷静でなければならない、そのため過度の笑顔はしないものなのだ
しかし、シャルルの笑顔は自然と周りの者を笑顔にする不思議な力があった
ハーフキャットという事で最初は毛嫌いされていた彼女達だが
いつも元気に挨拶をし、幼いながらにも一生懸命働く少女達の姿を見て
不快に思う者などいるだろうか・・・いや、中にはいるだろうが
それでもこの少女達を応援する人は少なからず増えていっていた

「お、ちびっ子、今日も元気だな」

「げんきだよ!」

隣の受付にいた3等級冒険者の屈強な男がシャルルに声をかける
カウンターに身を乗り出したまま、歯を見せ笑うシャルルに男の顔も緩んでいく

「今日も頑張れよ」

「うん!がんばる!」

「猫の手も借りたい奴が多いからな、がはははは!」

「あははは!」

これは嫌味ではない、彼なりの愉快なジョークなのだ
それを分かっているシャルルも笑っていた
男は豪快に笑いながら仲間達と共に外へと出て行く
その男の背中を見送ったシャルルは再び受付嬢へと顔を向ける

「あ!そうだったわ、忘れてた」

受付嬢が何かを思い出し、書類の山を漁り始める
その光景を二人は不思議そうに見つめる、今までこんな事が無かったからだ
いつもと同じような毎日でも、こういった些細な違いはある
今日もそんな些細な違いだと思っていた
しかし、二人の予想は外れる事となる

「実はね、あなた達『チェシャ』に依頼が来てるの、ご指名よ」

「ごしめい?」

シャルルが首を傾げ、サラを見るが、サラは首を横に振る
そのやり取りを見た受付嬢が説明してくれた

「指名っていうのは、あなた達がいいって依頼主が言ってるって事よ」

シャルルちゃんは雑用の頃はよくあったでしょ?と彼女は続けた

「あー!そういうことかー!」

「わー、すごーい」

サラは初めての指名に喜んでいた

「どんな仕事なの?」

「護衛みたいね・・・えっと、1年ちょっと前に受けた商人からみたいよ、心当たりない?」

「商人・・・サラ、おぼえてる?」

カウンターから降り、サラを見て聞く
うーん、とサラは記憶を掘り起こし、うんうん、と2回頷いた

「たぶん、カタナつかう人と戦ったのだと思う」

「あー!あれかー!」

二人のやり取りを見て、受付嬢は問う

「どうする?さっきの受ける?それとも指名の受ける?」

二人は目を合わせて頷く、そして声を合わせて言う

「「しめいので!」」

こうして二人は初めての指名での護衛依頼を受けた
二人は力が認められたような気がして上機嫌だった
依頼書を受け取り、落ち合う場所と日時に目を通す

よくシルトから文字は習っているので二人ともある程度は読めるようになっていた
元々孤児であったシルト自身も文字は不得意なのだが、最低限の範囲は使える
それをシャルルやサラにも教えていたのだ
それに加え、シャルルに魔法の基礎を教えてもいた
これは彼がスラウト時代の仲間、ヘカテから学んだ知識だ
基礎すら知らず、感覚だけで魔法を使っていたシャルルにとっては革新的であり
彼女の魔法のレベルを大幅に上げる結果となる
今のシャルルは幼いながらも3等級クラスの生の魔法使いとなっていた

「昼すぎまで時間できちゃったね」

「うん」

「いったん帰る?」

「うんうん」

「じゃ、帰ろー」

二人は手を繋いでニコニコと帰って行く

???「あれがそうか」

???「えぇ、あれでどうでしょう?」

???「そうだな、悪くない」

中央通りからスラム街にある自宅へと続く道に入る二人は
曲がり角から見ている者達がいる事など気づかずに・・・・
そして、その者達もまた別の者に監視されている事に気づいてはいなかった



護衛ともなれば食事の時間などない
帰宅したシャルルとサラは少し早めの食事を済ませ、装備や荷物を念入りにチェックしていた

「しめいってうれしいね」

「うん!みとめられた気がするよねー!」

「うんうん、がんばらないと」

「そうだね!いっしょにがんばろ!」

だいぶ時間より早いが家を出て目的地へと向かう彼女達の足取りは軽かった
依頼書に記載されている時間より半刻ほど早く着き
二人が座って待っていると、二人の男が寄ってくる
片方は見覚えがあり、例の商人だという事が分かった
横にいるのは以前とは違う用心棒らしき男で、巨大なハンマーを持っている
そのハンマーの大きさはシャルルやサラ近くあるだろうか
それを軽々と片手で持っているところを見ると、男の筋力は相当なものだろう

「久しぶりだね、お嬢さん方」

「こんにちは!ご依頼ありがとうございます!」

「ありがとうございます」

「いやいや、こちらこそ、またよろしく頼むよ」

男は帽子を取り、軽く会釈をする
それを真似て二人もお辞儀をするのだった
サラは隣に立つ大男を見上げると、その男と目が合い、すぐに視線を逸らす

「では、行こうか」

「あ、時間まだですけどいいんですか?」

「あぁ、構わないよ、こちらとしては助かる」

「はい!がんばります!」

「がんばります!」

サラが前を歩き、その後ろに商人、その後ろにシャルルが続き、最後尾に大男が続いていた
サラは辺りをキョロキョロと警戒しながら商人の言う方向へと進んで行く
シャルルも怪しい人物がいないかと目を凝らしていた
道は徐々に細くなり、辺りは薄暗くなっていく

「その先にある倉庫に入ってくれ」

「はい」

サラはかなり緊張しているようだった
辺りを警戒しながら進むのは集中力を使う、想像以上に疲労していくのだ
細い路地を慎重に進み、一行は倉庫へと入って行った
中は暗く、見通す事は出来ない

「ここでいいんですか?」

「あぁ、ありがとう、助かったよ」

バンッ!

突如、入口の扉が勢いよく閉まり、倉庫の中は闇に包まれる

「え?」

「なに?」

暗闇の中、二人が動揺していると、シャルルの身体がふわっと浮き上がる

『なにすんの!やめてよ!!』

ジタバタと暴れるが、腰に腕を回され持ち上げられているため動けない
腰に回っている腕はシャルルの胴よりも太く、抵抗など無意味なものだった

「シャルル、なにがあったの!?」

『サラ!・・うっ、サラ!たすけて!』

サラは右手の鉄小剣に力を込めて動こうとするが、正確な位置が分からない
下手に振り回してはシャルルに当たってしまう・・・
サラがどうするか悩んでいるとパッと明かりが灯る

『シャルル!』

巨大なハンマーを持つ用心棒が片手でシャルルを担いでいた
シャルルが暴れるが微動だにしない男はニタァと笑みすら浮かべている

「どういうことなんですか!」

サラが商人へと向き、説明を求めるが商人はヤレヤレと首を横に振る

「まだ解らないのか?お前等はハメられたんだよ」

「え・・・」

「亜人が人間様のように仕事なんてしやがって、思い上がるなよ」

「なに・・を言ってるの・・・これは依頼で、護衛で・・・」

「畜生でも解るように言ってやる、お前等は売られるんだよ!!」

はははははは!と高笑いする商人を見て思う・・これだから人間は!!
2年くらい前は当たり前に思っていた感情が蘇ってくる
歯をギリっと鳴らし、シャルルを担ぎ上げる用心棒を睨みつけた

「やめておけ、無駄な抵抗だ」

『シャルルを返せ!!』

「お前も死にたくはないだろう?」

『返せっ!!』

サラは走り出し、盾を上段に、剣を下段に構える

「チッ・・・・旦那、どうすりゃいい」

「殺さない程度にやってしまいなさい」

「了解」

シャルルを担いだまま男は片腕で巨大なハンマーを振るう
流石にスピードは無いが、リーチもあり、十分驚異だった
サラは身を屈めてそれを避け、男の足の間を通り抜ける
通り抜けると同時に男の左膝裏を横に斬りつける
これは小柄なサラでも大きな敵を倒せるよう、シルトが教えた技だった

「ぐぉっ」

男が左膝を突き、ぐらついた所にサラの追撃の突きが放たれる
それはシャルルを抱えている左腕への一撃だ
鉄小剣が3センチほど刺さり、男が痛みで手を離す

『ガキがっ!!』

男が叫びながら腕を振るう
シャルルが勢いよく飛び退き、男の振るう腕を避け、体勢を立て直した
サラもシャルルの元へと行き、盾を前へと構える

「サラ、ありがと♪」

「ううん、無事でよかった」

にししとシャルルが笑い、サラも微笑む

「1年前から随分強くなったようだな・・・仕方ない」

パンパンッ!と商人が手を叩き、その音が倉庫の中で反響する
しばらく静寂が続く・・・

「む?どういう事だ」

商人は辺りをキョロキョロと見渡し、再びパンパンッ!と手を叩く

『おい!お前等!出て来い!』

商人の大声が響くが、一向に誰も出てくる気配は無かった

「くそっ、どうなってやがる・・・まぁいい、子猫が2匹だ、お前だけで何とかしろ」

巨大なハンマーを持つ用心棒は商人の言葉に頷き、左足を引きずりながらも立ち上がる
この時、男は考えていた
先ほどの動き、子供とは思えない早さだった
そして、的確に急所を狙う攻撃、ただの子供ではないのは明白だ
話が違うじゃねーか!心の中で愚痴をこぼし、男はハンマーを両手で構える
見た目は10歳前後の子供二人だが「油断すると殺される」男はそう考えていた


その頃、倉庫の外では・・・


「ふぅ、こんなもんかな」

1人の男が汗を拭っている・・いや、それは汗ではなかった・・・血だ
しかし、男は怪我1つしていない
そう、男は返り血を全身に浴びていたのだ、それもかなりの量だ
そして、男の通った道には死体の山が築かれている、数としておおよそ20
全員ゴロツキのような格好の盗賊崩れのような奴等だった

返り血により赤黒くなった鎧の男は倉庫の中を小さな窓から覗き込む
少女が二人、巨大なハンマーを持つ屈強な男と向かい合っていた

「ありゃ・・・大丈夫かな、あれ」

返り血まみれの黒い鎧の男は移動し、静かに裏口から倉庫内へと侵入していった・・・



ハンマーの男が動きだし、その両手に抱える巨大なハンマーを振るう
それをひらりとかわし、サラは小剣を振るうが、男もそれを回避する
慣れない実戦からサラの体力は急速に失われていった
しかし、シャルルの回復魔法がサラの身体を包み込む
サラの体力は一気に回復していき、疲れからくる握力の低下などは和らいでいく

「ガンガン攻めちゃって!!」

「うん!」

一方、巨大なハンマーの男は徐々にだが動きが鈍くなっていく
それもそうだ、そんな大きな武器を延々と振り回し続けられる人間などいない
互いの実力差は徐々に徐々に埋まっていく

「こごえる夜のあたたかな火のようにサラの身体をいやして・・・!」

シャルルが枯れ木のような杖を構えると、杖が淡く光り出す
シルトから魔法の基礎を教わったシャルルは、イメージを膨らませる言葉を必死に考えた
その結果、少し長い呪文になってしまったが、前より数段効果は大きくなっていた
そして、生の神信仰を始めたシャルルは、より深く魔法を感じる事ができるようになっていた
それにより、より具体的なイメージがしやすくなったのである

サラの身体が淡く光り、疲れが和らいでいく
男のハンマーの動きは鈍くなり、避ける事が容易くなってきている
この時、サラは思っていた
シルトさんに比べたら何でもない相手だ、と
それが少女の自信へと繋がっていた、このくらいの相手なら勝てる、と

巨大なハンマーは空ばかり切り、疲労した男の体勢は大きく崩れる
サラが一気に近寄り、男の左太ももを斬りつけながら背後へと回る
ついに左足が言う事を効かなくなり、男は膝を突く
そこへサラが突きを放とうとすると、男は巨大なハンマーを地面に置き、両手を上げた

「ま、待ってくれ!負けだ負け、俺の負けだ」

サラがゆっくりと男の正面に回り込み、巨大なハンマーを足で遠ざけようとする
が、重すぎて全く動かなかった

「武器からはなれて」

サラが剣を男の顔へと向けたまま言う
男はそれに従い、両手を上げたままゆっくりと下がって行った

『おっさん!まだやるの!』

シャルルが商人へと凄い剣幕で怒鳴る
商人は1歩2歩と後ろへ下がり、チッと舌打ちをした
商人も両膝をつき、両手を上げる
悔しいがこの二人は強い、逆らえば殺されてもおかしくはない
商人は従うしかなかった

商人から詳しい話を聞き出すと、この商人は奴隷商人だという事が分かった
以前依頼した時に二人を見て、成長するのを待っていたらしい
話を聞いた二人は、商人にハンマーの男を縄で縛らせ
商人はシャルルが縄で縛り上げた
その縄を柱へとキツく結び、二人は冒険者組合へと報告に戻るのだった



倉庫には静寂が戻り、商人の愚痴がこぼれる

「ったく、高い金を払ったのにガキ2匹に負けるとは」

「いやいや、あのお嬢ちゃん達は強かったよ」

「くそっ、亜人めっ、くそっ」

そんな話をしていると、コツコツ、と誰かが歩いて来る音がする
そちらを向くと、闇の中から血まみれの男が姿を現した

「ひっ!なんだお前は!」

「どもども、ただのゴミ掃除ですよ」

「お、おま、お前は・・・不動!」

ハンマーの男が激しく動揺する

「不動だと?何だそれは」

商人は知らないようでハンマーの男に聞く

「俺達の天敵だ、こいつに幾つもの組織が潰されてる」

「ははは、有名なんだね僕」

不動と呼ばれる男は2等級冒険者としても有名であったが
それ以上に、暴力を生業にするような連中にとっては知らぬ者がいないほどに有名だった
容赦なく、誰一人残す事なく、皆殺しにする黒い男、それが不動だ
彼は非人道的な行いをする者に対しては、どこまでも冷酷だった

緩い表情で頭を掻いてる男を見て、商人は腹が立つ

「くそっ、傭兵が出て来なかったのはお前の仕業か!」

「あぁ、彼等なら外で寝てるよ」

「くそっ」

「ふ、不動!待ってくれ、俺はただの雇われだ!こいつとは無関係なんだ!」

ハンマーの男が激しく動揺しており、必死に命乞いを始める
その変化に商人は驚いていた、この男は何故ここまで怯えているんだ?と
不動と呼ばれる男、シルトがしゃがみ込み、二人の顔を薄ら笑いで見る

「んー、ごめんね、それは無理」

「ま、待ってくれ!!」

「君らは手を出しちゃいけない相手に手を出した、その罪は重いよ」

「あ、あのハーフキャットの事か?」

「そう、彼女達は僕の家族、君らはそれを傷つけようとした」

「知らなかったんだ!本当だ!勘弁してくれ!!」

「君らの事を調べてたらまさかあの子達を狙ってるとはね、運が無かったね」

「運・・・頼む!助けてくれ!」

「だから無理だって、残念だったね」

男の必死の嘆願をシルトは無視をして立ち上がり、剣を構えた

「な!お前!なんで!待て待て待て待て!金ならやる!」

商人が状況を理解したようで慌て出す

「うるさい、死ね」

シルトの顔から微笑が消え、冷酷な眼へと変わる
その瞬間、商人の首は飛び、血が吹き出した
その血は隣に縛られている男にかかり、首を跳ねたシルトにも降り注いだ

「ひっ!待ってくれ!本当に雇われただけなんだ!」

「コイツがどんな奴かわかってて雇われてるよね?」

片足で商人の頭を踏みつけながら彼は言う

「なら同じだよ、もう死になよ」

「待っ」

シルトの剣が空気を切り、ヒュっと音が鳴る
そして、ハンマーの男の首がゴトっと地面に落ちた
遅れて男の首からも血が吹き出し、再びシルトの身体が返り血まみれになる
血塗られたマントを掴みながら彼は愚痴をこぼす

「洗うの面倒だな」

そんな事を呟きながら、シルトはその場を跡にした



その後、シャルルとサラが冒険者組合に商人の悪事を報告し
少しして警ら隊の一団が現場へと踏み込むと、そこには死体しか無かった
切り口からサラの使う小剣ではないのは明白で、少女の力で両断は不可能だろうと判断された
そして、残された書類などから商人の悪事が判明し
芋づる式で巨大な奴隷商人の組織が検挙される事となった
その後、シャルルとサラは軍から表彰状が送られる

「幼い君達がこんな大きな手柄を上げるとはの・・・
 もはや4等級の実力ではないのぉ、どうだろう?ヒューズ君」

ヘヴィレイン中将が表彰状を持ったまま、冒険者組合長ヒューズ・ウォールに目を向ける

「はい、今回の件で実力は明白、3等級に昇進が妥当かと思います」

「サラ!」

「シャルル!」

二人が手を繋いでぴょんぴょんと跳ねて喜んでいると
ヘヴィレイン中将が大きく咳払いをして、微笑む
シャルルが二カッと笑い、サラが微笑み、姿勢を正した

「おめでとう、小さき冒険者達よ」

表彰状が渡され、こうしてシャルルとサラは3等級冒険者となる
その日は家に戻ってからシルトを混じえてのお祝いパーティーが開かれた

「本当におめでとう」

「「ありがとー!」」

今日はシルトの作った豪勢な食事が並んでいる
鳥の丸焼き、サラダの山盛り、柔らかいパン、果物のジュース
更には生クリープたっぷりの苺が乗ったケーキまで置いてあった

「これなぁに?」

シャルルが指を差して聞いてくると

「これはケーキって言うんだよ」

とシルトは答えた

「ケーキ?おいしいの?」

「うん、とっても甘いんだよ、食後に食べようねぇ」

「うん!」

「わー、うれしいー」

笑いの絶えない食事が済み、ケーキにロウソクを立て、部屋の灯りを消す

「ね、サラ、シャルル」

「ん?」

「なに?」

「ずっと前から考えてた事があるんだ」

ロウソクの灯りが揺らめく中、二人はシルトを見つめて首を傾げる

「良かったら僕の家で暮らさないかい」

「「え?!」」

「それともう1つ、良かったら僕とチームを組まないかい」

『えー!?』

「シルトさんと・・・いいの?」

「うん、僕はそれを望んでる、家族になりたいと思ってる」

「家族・・・」

「・・・うっ・・ぐすっ」

サラが涙を流し、シャルルがその頭を撫でる
そんなシャルルの瞳にも涙が溢れていた

「あらら、泣かないで」

シルトはどうしたらいいのか分からず慌てている
涙を流し、鼻をずずっと鳴らしながら、シャルルは最高の笑顔で答えた

「うん!なろう!」

「うん・・・ぐすっ、わたしも」

サラも泣きながら答え、シルトへ必死に笑みを向ける

「ありがとう・・・嬉しいよ」

微笑むシルトの瞳にも光るものが見えた

「それじゃ、二人でロウソクの火を吹き消して」

「これをけすの?」

「うん、願いを込めながら消すと叶うらしいよ」

「わー、すてき」

「へー!なににしようかなー」

二人がうーんうーんと悩み、願いが決まったようで微笑み合う
二人でこそこそと内緒話をして、せーのっと声を合わせる

「「ずっと笑顔でいられますよーに!」」

ふーっと息を吹きかけ、ロウソクの火が揺らめき、かき消える
すぐにシルトが灯りをつけ、パチパチパチと手を叩く

「二人ともおめでとう、それと、ありがとう」

「シルさんこれからもよろしくね!」

「よろしくおねがいします」

「こちらこそ、よろしくね」

その後、3人でケーキを食べ、二人はその甘さに尻尾がピーンとなるほどだった
後日、引越しの準備が始まり、二人はシルトの家へと移り住む事となる



そして、3人は新たなチーム【ハーフブリード】を結成する事となった



3人はラーズ首都から4キロほど離れた平原へと来ている
この辺りに住み着いたオーガ3体を討伐するのが今回の目的だ
ハーフブリードとしての初依頼、それが今回のオーガ討伐である
3等級としてはなかなか難しい分類に入る依頼だが
シルトにとっては何でもない相手なので引き受ける事にした
報酬は2金貨+1体ごとに8銀貨である
ずっと2等級でやってきたシルトにとっては安い依頼だが
シャルルとサラにとっては目が飛び出るほど高額な依頼だった

「二人は援護よろしくね、無理に前には出ないで」

「うん」

「わかった!回復はまかせて!」

「あはは、期待してるぞ~」

そんな呑気な会話をしていると、目的のオーガを見つける
オーガはこちらに気づき、ゆっくりと向かって来ていた
その巨体にサラとシャルルは怖気ずく
今まで倒した事がある魔物と言えば小鬼(ゴブリン)くらいなのだ
ゴブリンとは身長1メートル前後の醜い顔をした弱い魔物である
それに比べ、オーガの身長は2メートル前後はある
手には巨大な丸太や大岩を持っている事が多い
そう、武器を持っているのだ
ゴブリンに武器を持つ知性はない、オーガとの戦闘能力の差は圧倒的に違うのだ
その巨大な魔物が3体も迫ってくるのだ
まだ幼い少女の彼女達にとってそれは恐怖でしかなかった

「うそ・・・あんなにおおきいの・・・」

「シルさん、にげよう?むりだよ」

「いやいや、お仕事だから、二人は下がってて」

そう言うとシルトは一人で前へと出て抜刀する
薄紫色の刀身のブロードソードを下段に構え、右手に持つ大盾を前へと構える
平然と歩いてくシルトの背中を二人は見ている事しかできない
そして、オーガが走り出す

ガンッ!

オーガの振り下ろした巨大な丸太の一撃をシルトは右手の大盾で防ぎ、右へと受け流す
オーガの体勢が崩れ、前のめりになると同時に、シルトの剣がオーガの喉を貫いた
そのまま横へ払い、オーガの首が残った皮でぶら下がる
オーガは前のめりに倒れ込み、それを避けたシルトは次の目標へと足を進める

「え・・・」

「うそ・・・シルさんあんなにつよいの?」

2体のオーガが激怒し、同時に迫っていた

『シルトさんあぶない!!』

サラが叫ぶが、シルトは一切動かない
そして、オーガの持つ大岩が振り下ろされた

ガキィィンッ!

右手の大盾で防いで再び受け流す、そしてシルトの剣は再び喉を貫いた
すぐさま剣を抜き、次のオーガの大岩での一撃を大盾で受け流す
そして、シルトの剣は最後のオーガの首を跳ねた
3体のオーガが地に伏し、痙攣をする
シルトは剣を振り、血を払い、それを懐から出した布で綺麗に拭き、納刀する
振り向いたシルトはいつもの優しい笑顔で、何も無かったように歩いて来た

「おつかれ~」

「え、あ、うん、おつかれさま」

「シルさんすごーい!」

戦闘時間は1分もかかっていない
目の前の男はずっと2等級で一人でやって来た強者なのは知っていたが
まさかこれほどとは思っていなかった
サラは憧れの目でシルトを見つめ、シャルルは興奮している

「あ、オーガの耳取っておいて、倒した証拠が必要だから」

「うん」

「はーい!」

二人はオーガの耳を切り落とし、革袋に入れていく
改めて近くで見るとその大きさに恐怖した
そして、オーガの持っていた大岩を見て、それを簡単に防いだシルトの実力が信じられなかった
防いだ時に彼は1歩も動いていなかったのだ
これが不動と言われる理由なんだ、そう二人は感じていた

帰り道でシャルルとサラは思う
何も出来なかった自分と、少しでも役に立ちたい、横に並びたい自分
途方もない距離を感じるが、二人はもっともっと頑張って、彼に近づきたいと強く思っていた


昼過ぎに組合に戻り、報酬を貰った3人は中央通りを歩いている

「早く終わったからどうしよっか、買い物でもしてく?」

「行くー!」

「うん」

「よーし、じゃあ今日の報酬で二人の服を買おう」

「いいの!?」

「わるいよ」

「いやいや、シャルルもサラも年頃なんだから、おしゃれも大事だよ?」

年頃と言ってもまだまだ幼いのだが

「ハーフブリードの初仕事のお祝いだよ、遠慮しないの」

「やったー!」

「ありがとー」

二人はシルトと手を繋ぎ、中央通りの服屋へと入り、色違いの可愛いワンピースを購入した
帰ってからすぐに着替えた二人は部屋の中ではしゃいでいる

「こんなかわいい服着たの初めてー!うれしー!」

シャルルがぴょんぴょんと跳ねて喜びを全身で表している
サラは少し気恥かしそうにワンピースの裾を掴んでくるくると回って見せていた

「二人とも似合う似合う、可愛いよ」

にしし、とシャルルが歯を見せ笑い、Vサインをしてポーズを決める
サラは頬を赤く染め、もじもじとしながらシルトを上目遣いで見ていた

夜になり、小腹が空いてきた頃

「それじゃご飯作っておくから先にお風呂入ってきな」

「はーい!」

「うん、お洋服しまってくる」

二人がお風呂に向かうと、シルトは料理を始めた
シャルルとサラはお風呂というものをこの家に来てから初めて知った
今まではお湯につけたタオルで身体を拭いていただけなのだ
お風呂を知った二人はその気持ちよさの虜になっていた
特にこの家の風呂は一般家庭にも無い凄い設備がある
それは24時間いつでも温かい湯が張ってある事だ
魔道具によるものだが、シルトが風呂好きなのもあり、大金を出して設置したのだ

しばらくして料理が出来上がる頃、風呂場の扉が開く
どたどたどたと走る音が聞こえ、シルトが振り向くと・・・

「シルさんごはんー!」

真っ裸のシャルルが走ってきた

『お前は服を着ろーーーーー!!』

少し遅れて、片手で自身のタオルを押さえながら
もう片方の手に別のタオルを持つサラが追いかけてくる

「シャルルー!タオルー!」

サラからタオルを受け取ったシャルルはタオルで身体を拭いて身体に巻きつける

「ったく、シャルルはもっと恥じらいを持ちなさい」

「はじらいってなに?」

「んー・・・男の人に裸は見せない事!いいね!」

「なんで?」

「なんでって・・・うーん、世の中危ない人もいるからね?気を付けようね」

「よくわかんない、でもわかった!」

ははは、と乾いた笑いを洩らすシルトだった

「シャルル、おいで」

「ん~?」

「そこ座りな」

椅子を引いてシャルルを座らせる
シルトは1枚の真新しい綺麗なタオルを持ってきて、シャルルの頭を拭いてやる

「わふー!きもちいいー!くすぐったーい」

「あんま動かないの」

「はーい」

「よし、もういいよ、後は自分でやりなね」

そう言ってタオルをシャルルへと渡す

「はーい!」

シャルルはそれを頭から被り、ソファへとダイブしてジタバタと暴れていた
その姿に1つ息を吐いて、サラへと目を向ける
すると、サラは上目使いでチラチラとシルトを見ていた

「サラもおいで」

「うん!」

サラの目がキラキラと輝いて、とたとたと走って来て、椅子に座る
シルトが真新しいタオルを1枚持ってきて、サラの頭を丁寧に拭いていく

「ふふ、くすぐったい」

「痒いとこはございませんか~?」

「ないでーす」

幸せそうなサラの表情にシルトもつい笑顔になっていく

「よし、後は自分でやりなね」

「はーい」

「それと二人とも、早くパジャマに着替えなよ?風邪引くぞ」

「「はーい」」

お揃いのパジャマに着替えてきた二人と賑やかな食事を終え
食後にシルトが用意したココアを手渡す

「これ飲んだら寝なね」

「はーい」

「うん、ありがとう」

この家に来てからというもの、彼女達は初めての事ばかりだ
ココアなんて飲んだ事すら無かった、存在すらも知らなかったくらいだ
タオル1枚とってもそうだ、あんなにふかふかで真っ白なタオルなんて見た事がなかった
ここは彼女達にとっては天国のような環境だった
暖かく柔らかい布団で寝れて、美味しいご飯が食べれて
楽しく、賑やかな毎日が送れる・・・そんな日々が本当に幸せだった

「「おやすみなさーい」」

シャルルとサラが客室である自室に戻り、夜が深けてゆく・・・
シルトは金勘定を終え、今後の生活費などを計算する

「まだかなり余裕あるな、あの子達でも出来る簡単な依頼でも受けるか」

そんな独り言を呟き、シルトは大きなあくびをした

「もうこんな時間か、そろそろ寝るかぁ」

金や家計簿を片付け、居間の灯りを落とす
手燭の灯りで寝室へ戻る途中、扉が半開きだった客室を覗き込む
薄暗い部屋の中、二人が寝息を立てていた

「ったく、シャルルはとんでもない格好で寝てるな」

布団を蹴り、腹を出して寝ているシャルルの元へ行き
パジャマを直して、布団をかけ直す
サラの方を見ると布団にシワが無いくらい綺麗に寝ていた
対照的な彼女達に少し笑いがこぼれる
二人の頭を軽く撫で、小さな声で言う

「おやすみ」

シルトは手燭を持ち、部屋を後にした






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