2016_02
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(Sat)20:30

2章 第17話

オリジナル小説 『カタクリズム』
2章 第17話 【ハーフブリード】其の五

後1~2話でハーフブリード編も終わりっす。
いよいよ2章も終盤、お楽しみくだせー。

では、続きを読むからどうぞー。









【ハーフブリード】其の五








ジーンが加わり2年近い年月が経ち
ハーフブリードの名はラーズの冒険者なら知らぬ者はいないほどになっていた
最初はハーフキャットという存在が目立つのもあった・・だが、それはキッカケでしかない
リーダーである不動ことシルト、そして天才と名高いジーン・ヴァルター
それに加え、恐ろしいまでの速度で成長を続ける生の魔法使いシャルル・フォレスト
そして、その流れるような剣技は見る者を釘付けにするサラ・ヘレネス
1人1人が2等級の中でも目立つような存在になりつつあった
そんな者達が組んでいるのだ、目立たない訳がない

現在、2等級は11チームあった
その中でも有名なのは3チームある

「ローズガーデン」女性のみで構成された5人組で
2人が近接職、3人が魔法使いという構成だ
その美貌と活躍にファンの多いチームでもある

「アイアンテイル」男性のみで構成された6人組だ
5人が重装備の近接職で、1人が生の魔法使いという偏ったチームだった
その圧倒的火力と防御力でゴリ押しするような戦い方は
一般人を熱くさせるには十分で、熱狂的なファンすらいる

「銀の樹」男性3、女性2で構成されたチームだ
3人が前衛を務め、2人が魔法で支援するバランスの取れたチームだ
彼等は仕事を選ばず何でもこなす事で他の冒険者からは嫌われていたが
一般人からのウケは良かった

ハーフブリードはまだ2等級に上がりたてという事もあり、そこまでの実績がない
しかし、この3チームに引けを取らない魅力があった
2人のハーフキャットが美少女なのは言うまでもないだろう
そして、美人であるジーンが加わり、更に輝きを増したとも言える
そこに真っ黒な鎧で目立つ男、チームとしてではなく個人で有名なシルトがいる
彼等に注目が集まるのは必然とも言えた
そんな話題になっているとはつゆ知らず、彼等は今日も依頼をこなす

「今日の依頼はキツかったねぇ」

シルトが全然余裕そうにそんな事を言う

「シルトさん一人でも行けたんじゃないの?」

「いやいや、一人はキツいんだぞ~?」

実際1人で2等級をやっていた彼が言うのだから間違いないのだろう

「ねぇ、シャルル、どうしてシルさんの手が痺れてるって気づいたの?」

ジーンは不思議そうにシャルルに聞く

「え?なんとなく?違和感っていうか・・・そんな感じ!」

違和感?どういう事なんだろう
ジーンは考えるが全く理解出来なかった

「そ、そう・・・でもそれを感じられるのは凄いね」

「にしし、でしょー!」

「調子乗らないの」

あははは、と皆が笑い合い、中央通りを歩いていると・・・

「ありゃなんだ」

シルトが指差す先を皆が見ると、そこには一人の少女が倒れていた
少女の頭の上には1匹の爬虫類のような生物が立っており、ギャアギャアと鳴いている
シルトとシャルルが駆け寄ると、倒れている少女の耳は異様に長かった

「エルフ・・・だよね」

「かな?」

外傷は無いようだが、こんな大通りの端っこでなんで大の字に俯せで倒れてるんだ?
爬虫類のような生物を降ろし、シルトが少女を抱き上げる

「おーい、大丈夫か~?」

少女の目がゆっくりと開き

「お・・・・」

「「お?」」

「お腹・・・へった・・・」

少女はそれだけ言って目を閉じる

「腹減ってるみたいね」

「だね、どうするの?」

「食べさせてやろっか、こんな小さい子が可哀相だし」

『ホント!?』

起きていた、しかも割りと元気だ
ガバっと起き上がった少女は目をキラキラと輝かせている
そんな少女の顔を見て、シルトは苦笑しながら答える

「いいよ、何食べたい」

「肉!魚!野菜!パン!」

「図々しいな、おい」

遠慮ってもんがないのか!
これはエルフ特有なものなのか?
シルトはエルフなんて会った事もないので比較が出来ず分からない

「ありがとねー!助かるー!」

「聞いちゃいねぇ」

「あはは!この子面白い!」

シャルルが爆笑し、シルトは少女を立たせて服に付いている汚れを払ってやる
その後、ジーンとサラに事情を説明して皆で夕飯を食べに行った

少女は名をラピ・ララノアと言った・・・・いや、それ以上を知らないのだ
ラピは名前だけ名乗り、それからはずっと食って飲んでを繰り返している
それだけ腹が減ってたのだろう、満面の笑みで食べ続ける姿を見て頬が緩む
多すぎたかな?と思った料理も底を尽きそうになった頃
ラピが辺りをキョロキョロと見渡し、店員を見つけて手をあげる

「お姉さん、キンキンに冷えたのジョッキで!」

「ちょ!酒飲むのかよ!」

「え?ダメ?」

「・・・・・えっと、ラピだっけ?君いくつよ」

「66歳だけど?」

『『『66!?』』』

シルトとシャルルとサラが驚き、大声を上げる

「エルフだからね」

ジーンは淡々としていた
口が空いたまま止まっているシルトをよそに、ラピは酒の入ったジョッキを受け取る
そして、ぐびぐびっと一気にそれを飲み干した

「ぷはぁっ!生き返るぅ~~!」

足をバタバタとしながら、ラピという少女はおでこを押さえている
少ししてラピは突然席を立ち、爬虫類のような生物を抱え、皆に笑顔を向けた

「ご飯ありがと!それじゃっ!」

片手をあげ、くるりと後ろを向き、歩きだそうとする

ガシッ

「ちょっと待てーいっ!」

しかし、シルトがそれを許さなかった
ラピの頭を鷲掴みにし、ゆっくりとこちらへと向ける

「いたたたた、離して離してー」

「なーに、しれっと帰ろうとしてんだよ」

「え?もう食べ終わったし?」

「食べ終わったし?じゃないよ!なんであんなとこで倒れてたのかくらい話せ!」

「それはほら・・・あの・・・お腹すいてたんだよ」

シルトがラピの頭を掴む手に少しだけ力を込める
そして、笑顔で言う

「そういう事を聞いてるんじゃないよ?」

「いたたた、え?え?何、何を言えばいいの?」

「どうしてそうなったのかを教えなさい」

「えー・・・めんどく」

「ん?」

シルトの顔はニコニコと微笑んでいるが目は笑っていない

「・・・・話します」

ラピが席に戻り、面倒臭そうに1つため息をしてから語り始める
この少女はエルフの里であるリョースから1人と1匹で来たらしい
連れている爬虫類のような生物は親友のウェールズというらしい
旅の途中で金が尽き、手持ちの物を売って何とか生きてきたが、それも限界になったようだ

「本当に何も持ってないの?」

「ホントだよ、ほらー」

そう言ってラピはカバンの中身を皆に見えるように広げる
中にはカラの水筒、古びた本が2冊、雨合羽、薄い毛布、火打石が入っていた

「っ!」

ジーンの目が大きく開かれ、口に手を当てぶつぶつと何かを呟いている

「確かに金になりそうなの無いね・・・そっか、大変だったんだな」

「そうなんだよー、どうやって生きてこうかなぁ」

ラピは困っているのか困っていないのかよく分からない雰囲気で言う
いや、多分本当に困ってはいるのだろう
しかし、この少女は危機感というものが薄いのかもしれない

「さて、どうしたものか・・・」

シルトが腕を組んで考え込んでいるとジーンが耳打ちしてくる

「シルさん、この子使えると思う」

「え?」

「ちょっと私が話すね」

「うん」

ジーンがこんな事を言ってくるのは本当に珍しい
なので、シルトはジーンの好きなようにさせてみるつもりだった

「ねぇ、ラピ・・・さん?」

「ラピでいいよー」

「じゃ、ラピ」

「うん?」

「もしかして魔法使いじゃない?」

「そうだよー、生の魔法使い」

「やっぱりね、もしかして聖獣も使えるの?」

「おー!なんで分かったのー?」

ラピが目をキラキラとさせて聞いてくる

「その歳で聖獣がちゃんと使いこなせるの?エルフの大人でも難しいって聞くけど」

「使えるよ!ホントだよー!」

「なら1度見せてくれないかしら?」

「えー・・・めんど」

そこでシルトを見てラピは言葉を止める

「分かった、1回だけだよー?」

「ありがと、それじゃ行きましょ」

こうして5人と1匹はハーフブリードの家へと向かった



一行が家の庭に行き、ラピが聖獣を召喚するため本を開いた
ラピの人差し指の先が淡く光、何かをブツブツと呟きながら中空に文字を綴る

あれが聖獣召喚・・・あの文字は知らない文字だな
ジーンは一部始終を見逃すまいと瞬きすらせず見守っている
魔法文字にも似てるけど、少し違うみたいね、エルフの文字なのかな
そんな事を考えているとラピが指を止め、両手を大きく広げ、天へと掲げた

「カントより・・・おいでませっ!」

足元に魔法陣が出現し、それがラピの身体を通り抜けてゆく

あの魔法陣、やっぱり知らない術式だ
魔力の流れも魔法とは全く違う・・・面白いな

魔法陣はラピの頭上2メートルほどの位置で停止し、くるくると回転を始める
魔法陣は中空に穴を作り出し、その穴は真っ黒な世界へと通じていた
そして、穴から雷を纏った銀色の狼がぬっと姿を現す

あれが聖獣・・・あの穴はどこへ通じているんだろう?
噂に聞く妖精界なのかな、気になるなぁ

「「「おー」」」

シルト、シャルル、サラがパチパチと拍手をし、現れた聖獣を見上げている

「エペタム、そこの人に!」

突如、ラピがシルトを指差す

「え?僕?」

ウォォォォンとエペタムと呼ばれた聖獣が吠え、中空を駆けた
そして、シルトの近くまで行き、ウォォンと再び吠える
その瞬間、エペタムの纏っている雷がシルトへと落ちた

「ちょ」

「シルトさん!」

シルトとサラが慌てるが、シャルルはその光景を見ているだけだった
シャルルには何となくだが分かったのだ、この聖獣が悪い存在ではない事が・・・
一方、ジーンはエペタムの動き、効果などを見逃さないよう目を凝らしていた

「シルトさん、大丈夫なの?」

サラが心配そうにシルトの顔を覗き込む
シルトは手足を軽く動かし、ギュッと握り拳を作った

「はは・・・・こりゃ凄いわ」

シルトは笑いが込み上げてくる
なんだこの溢れてくる力は、どんな強化魔法もこんなに効果はないぞ
今ならどんな相手でも負ける気がしない、そんな気すらしてくる

「ふふん、すごいでしょー」

ラピが無い胸を張り、勝ち誇ったように言う

「エペタムありがとー、戻っていいよー」

ラピがそう言うと、エペタムはウォォォォンと吠え、中空を駆ける
するとエペタムの前方に黒い世界への入口が現れ、その中へと消えて行った
すぐに穴は閉じ、辺りは静寂に包まれる

「今のが聖獣、エペタムだよー」

ラピは幼い声と見た目で言う、シルトは半笑いで少女を見ていた
何なんだこの子は、今の強化は並のレベルじゃないぞ
こんな小さな子が何であんな凄いものを呼べるんだ・・・エルフってそんなもんなのか?
若干エルフという種族に対して警戒を強めるシルトだった

ジーンは今見た現象を全て記憶して分析していた
しかし分からない点が多すぎる・・・やっぱりアレが必要かな
そう結論付けたジーンは行動を開始した

「ねぇ、ラピ」

「うん?」

ジーンを見上げ、不思議そうな顔をしていると

「ラピはご飯食べれなくて困ってるんだよね?」

「うん」

「寝るとこもないよね?」

「・・・・うん」

「だよね、臭いもんね」

『え!くさい!?わたしくさいの?!』

クンクンと自身の匂いを嗅ぐが分からない
そこでシャルルやサラへと目を向けると
シャルルは笑っており、サラは苦笑していた
それを見て理解したラピはがっくりと肩を落とす

「お風呂入ってないでしょ?」

「うん・・・ずっと野宿だったから・・・」

「良かったら入って行く?」

「え!いいの!?」

「もちろん・・・・いいよね、シルさん」

「え、あ、うん、いいよ」

突然振られて焦ったシルトは適当に返してしまう
しかし、これもまたジーンの作戦の1つだ
シルトは困ってる人など放っておけないタチだ
それと、突然話題を振られると適当に返す癖がある、それをジーンは見抜いていた
言質を取ったジーンは計画を第3段階へと進める

ジーンの計画とはこうだ
まず、ラピの聖獣を見せてもらうという名目で家まで連れてくる
その後、臭いという理由で風呂を勧める、そして家に招き入れる
そして・・・・

一行は家へと入り、ラピはハーフブリード宅の豪華な風呂へと入った
居間ではラピの話題で盛り上がっている
一瞬会話が途切れた隙にジーンが少しトーンを落とした声で言う

「ね、みんな聞いて」

皆がジーンの顔を見た
視線が集まったのを確認したジーンは言葉を続ける

「あの子、ハーフブリードに誘ってみない?」

「え、あんな小さい子を?」

シルトが心配そうに言うが、ジーンは首を横に振る

「あの力見たでしょ?あの子、強化使いとしては一流だよ」

先ほど受けた強化を思い出し、シルトは反論が出来ない

「まぁ・・・確かに」

「そんなに凄かったの?」

「うん、かなりのもんだよ、2人から強化もらってもあんなにならないかも」

「そんなに・・・」

シルトが言うのだ、サラは疑いもしない
ラピという少女への認識を改めるだけだ
そこでシャルルが立ち上がる

「私は賛成!あの子面白いし、仲良くなれそう!」

シャルルの反応にジーンは計算通りと心の中でガッツポーズをする

「シルさんとサラはどう?」

この流れを逃してはいけない、ジーンはすぐに追い討ちをかける

「うーん・・・幼すぎるのがなぁ・・・でも66歳だしな・・うーん」

シルトは迷っているようだ
そんなシルトを見つめるサラもまた答えを決めあぐねているようだった

「ラピは戦力としては申し分ないと思うよ?
 それに、食べる物も寝床も無い幼い子を放り出すの?」

これを言えばシルトは反論できないだろう、ジーンはそう確信している

「まぁ・・・そうなんだけどさ・・・1つ気になってるんだけど聞いていい?」

これは予想外だ、シルトから返してくるとは思っていなかった
何を言われるんだろうと少し不安になるが、そんな動揺を見せないようジーンは言う

「なに?」

「なんでジーンさんそんなにあの子を推すの?珍しいよね、そういうの」

「そ、そうかな?」

どもってしまった、失敗した
案の定、シルトもそれには気づいている

「やっぱ何か隠してるよね?」

「・・・・」

「良かったら言ってよ、ちゃんと理由があるならあるで聞いてから決めたい」

ジーンは大きく息を吐き出し、眼を瞑る
失敗だ、仕方ない・・・本当の事を言おう、それでダメなら諦めるしかないか
計画を破棄するのは悔しいが仕方ない、今このチームはジーンにとってそれだけ大事だった

「あの子が持ってる本、それが欲しいの」

「本?」

「そう、聖獣召喚にも使ってたでしょ、あの本」

「なんで?そんな凄い本なの?」

「あれはエルフの秘術書、絶対世間に出回らない本だよ」

「ほー、んでジーンさんは本が欲しいからラピを加入させたいと」

「う・・・・まぁそんなとこ、でもあの子の実力は確かだと思うけどね」

シルトがシャルルとサラの顔を見て言う

「二人は今の聞いてどう思った?ラピを入れたいと思う?」

「私はいいと思うよ!あの子面白いし、それは変わらないもん」

「うん、いい子だとは思う」

「そっか、じゃもう決まりだね」

「え?」

「あの子を誘ってみよう、最終的にはあの子の意思次第だしね」

「うんうん、私も賛成」

丁度その時、ラピが風呂から出てくる
昔サラが着ていた寝間着が残っており、それを着ている
身体からほかほかと湯気を上げ、魔道具により食品などを冷やしている棚へと向かう
そして、勝手に開け、中を物色し、麦で作られた酒を取り出す
その蓋をウェールズに開けさせ、腰に手を当てぐびぐびっと飲み始めた

「・・・・・」

一同がその様子をただじっと眺めている

「ぷはぁ!風呂上りはこれだよねー」

「・・・・・」

「うん?どうしたのー?」

皆の視線が集まっている事に気づき、ラピは首を傾げている

「・・・・あれ本当に誘うの?」

あれ、とはラピの事だが、シルトは親指でラピを指差しながら皆に聞く

「あはは!やっぱ面白い、この子」

シャルルは笑っている、ジーンも呆れ顔で笑っていた
サラは苦笑しながら席を立ち、バスタオルを1枚取ってラピの頭に乗せてあげる

「あ、ありがとー」

そのタオルで頭を拭き、さっぱりしたラピはソファに座って再び酒を飲んでいた
隣に座っているシルトは1つ息を吐き
何かを決めたように、何かを諦めたように口を開く

「ね、ラピ」

「うんー?」

「うちで働かない?」

「え?」

「僕ら冒険者やってるんだ、良かったらどうかな」

「冒険者・・・ご飯食べれるの?」

「うん、ここに住んでもいいよ」

「ホント!?なるなる!」

「そっか、良かった」

「「おおー!」」

シャルルとサラが笑顔で手を合わせている
ジーンは少し計算が狂ったがラピが加入した事を喜んでいた

「これからよろしくね」

「うん!よろしくねー!」

こうしてラピはハーフブリードの一員となった



後日、ラピを冒険者組合で登録をし、正式にハーフブリードのメンバーとなった
ラピから秘術書を借り受けたジーンは数日徹夜でその本を研究する
基本的に書いてある事は分かるが、知らない言語が存在した
それをたった4日でおおよそだが読めるようになり
聖獣召喚の基礎を全て頭に叩き込んでいた

「ねぇ、ラピ」

「ん~?」

「術式とかは分かったんだけど、聖獣呼べないんだけど・・・コツ無いのかな?」

「えー・・・・そもそも聖獣ってエルフしか使わない術だからなぁ」

「ラピはどうやって呼んでるの?」

「うーんと・・・びびーっと来て、お願いって感じで呼ぶの!」

「全然わかんない・・・もっと具体的に言えないかな」

「そんな事言われてもなぁ」

ラピはうーんうーんと頭を捻るが上手く言葉には出来なかった
魔法とは全く違った性質を持つ召喚魔法
ジーンは確かにその手応えは感じているのだ、しかし決め手がない
そこでラピに聞いてみたのだが答えがこれだ、さっぱり分からない

「びびっとねぇ・・・・」

ジーンが顎に手を当てて考える
本を手にしてからずっと感じている繋がりのような感覚に集中した
この感覚何なんだろう、不思議な感じ
これがラピの言うびびっとなのかな?
それならもしかして・・・・

ジーンは中空に文字を綴る
そして魔法陣を作り出し、それがジーンを通り抜けた

「来なさい、ウンディーネ」

ジーンがそう言うと、魔法陣が回転し、黒い世界へと繋がる
そこから水の玉のようなものがゆっくりとだが姿を現した

「なにそれ・・・初めて見る」

ラピがジーンの呼び出した水の玉を見て驚いていた
水は徐々に膨張し、大きくなっていく
しかし、2メートル近くなった頃、玉は揺らぎ、大きく波打つ

「えっ」

不安定な玉は膨張し、そして炸裂した
バシャーっと辺り一帯は水浸しになり、ジーンもラピもびしょ濡れになっていた

「失敗か・・・うーん」

「待って、ジーンさん待って」

「ん?」

「今の何?聖獣であんなの無いよ」

「そうなの?ウンディーネって名前が浮かんだんだけど」

『ウンディーネ!?』

「うん、そうだよ」

ジーンはまだ理解してない、自身が呼び出そうとした存在を
ラピは気づいてしまった、この人が自分とは違う次元の事を成そうとしていた事を

「不安定になるのは術式が・・・・いや・・・なら・・・」

ジーンはブツブツと独り言を呟きながら考え事に浸っている
そんなジーンを見てラピは思う
いやいや、まさかそんな、ジーンさんが使えるわけ・・・でも不安定とは言え呼べてたし・・・
ありえない、ありえないよ、ないないない
気のせいだったんだーとラピが納得しかけた頃

「そっか、あの術式変えたらいけるかも」

ジーンが本を開いて魔法陣を書き換えている

『ちょっとー!落書きはダメーーーー!!』

ラピが焦ってジーンを止めようとするが、ジーンがラピの頭に手を置いてそれを止める

「まぁ見てて」

ジーンはそのページを開いたまま、指をパチンッと1回鳴らした
その音は反響し、進んで行く

「・・・・おいで、ウォーターウンディーネ」

中空に水滴が集まって行く、それは小さな水の玉のようになっていき徐々に膨張していく
その大きさは3メートル近くまで膨れ上がるが今度は安定していた
そして、水球が弾け飛ぶ
中から透き通るような青い髪の水色の肌の裸体の女性が姿を現した

「できた」

ジーンが小さいガッツポーズをする
その横でラピがわなわなと震えていた

「う、うそ・・・」

騒ぎを聞きつけたシルトとシャルルとサラも庭に出てきてそれを目にする

「わ、なにこれ」

「綺麗ー!」

「魔物・・・じゃないよね?」

ジーンがウンディーネに眼を向け、心の中で命令を下す
そこへ座れ、と
ウンディーネは静かに大地に降り立ち、ゆっくりとした動きでジーンに片膝をついた

「制御もできてるみたいね、良かった成功かな」

「うそ・・・・そんな、これ・・・」

ラピは動揺している、その様子が気になったシャルルはラピの元へと駆け寄った

「大丈夫?」

「う、うん・・・でも、これって・・・精霊だよ」

「精霊?」

「え?聖獣じゃないの?」

呼び出した本人であるジーンが驚いていた
精霊なんて聞いた事もない、それもそうだ、精霊とはエルフの中でも伝説の存在だからだ

「これ強いの?」

シルトが素朴な疑問をぶつける

「どうだろ・・・膨大な魔力は感じるよ」

ジーンは内心精霊の力を使いたくてうずうずしていた

「シルさん受けてみる?」

「え!やだよ!」

「あはは、冗談冗談」

ジーンが笑うが、シルトは引きつった顔をしていた

「ジーンさんが言うと冗談に思えないから怖いわ・・・」

「もう帰っていいよ、ウンディーネ」

ジーンが言うとウンディーネの身体はぐにゃりと形を変え、水球へと変わり
そしてビシャっと水になって大地に降り注いだ
ふぅ、と大きなため息をついたジーンは予想以上に魔力を消費している事に驚く
これはキツいな、でも上手く使えれば大きな力になるかも
新たな力を手に入れたジーンは、その力に胸を躍らせるのだった

「なんで精霊が・・・ジーンさん人間だよね?」

「そのはずだけど?」

「だよね・・・うーん・・・・どうやって呼んだの?」

「えっと、びびーっと来て、どーっと魔力を送って、ぐいーっと引っ張る感じ?」

「ぜんぜんわかんない・・・・」

「あはは、私もよく分からないや」

「うーん・・・・ま、いっか」

ラピは諦めた、おそらく感覚の問題なのだろう
自分にはその感覚はない、という事は聞いても無意味なのだ
そして、それが使えるジーンが少し羨ましくもあった

「ジーンさん、その本あげる」

「え?いいの?」

「うん、わたしよりジーンさんの方が上手く使えるみたいだからー」

「ありがと、大切に使うね」

ジーンは大切そうに胸に本を抱く
先ほど成功した精霊召喚の感覚を忘れないよう脳裏に刻み付けるのだった




その後、ジーンは精霊使い「元素のジーン」と呼ばれる事となる
ハーフブリードに加入した事により有名になったラピは「白銀のラピ」と呼ばれ
一部のコアなファンがつくようにもなる
5人になったハーフブリードは更なる活躍をし、次第に名声を得ていった
その頃にはシャルルは「蒼天のシャルル」と呼ばれ
サラは「紅焔のサラ」と呼ばれるほど有名にもなっていた

異名持ちは冒険者の中でも数が少ない、それは相当な実力者でない限り呼ばれないからだ
ハーフブリードは全員が異名持ちとなり、そのチーム名は国外でも知る者が増えてきていた

ラピが加入してから1年ほど経った頃のある日
今日は依頼もなく、ハーフブリードは暇を持て余していた
そんな時に1つの噂を聞き出す
難易度シルバーの遺跡がまだ荒らされず残っているという
シルバーという難易度は2等級冒険者でも1チームでは厳しい場合が多い
本来であれば危険なので近寄らないのがベストだが、そこにはお宝が眠っているという噂がある
それを聞きつけたシャルルとラピが皆に行こう行こうと言い出したのだ

「ねー!行こうよー!暇じゃーん!」

「お宝探し行こー!」

こうなってしまった二人を止められる者はいない
シルトは諦め気味に二人を止めるが、やはり意味は無かった

「行くのは分かったけど、危なそうなら即撤退するからね」

「おっけー!」

「わかったー!」

「サラは僕の後方待機であまり前に出ないでね」

「うん、わかった」

「ジーンさん、いざとなったら精霊を盾にしてもらっていいかな」

「いいよ」

「それじゃ準備して行こうか」

「「「「おー!」」」」

こうして5人は難易度シルバーの遺跡、ブドゥール寺院へと向かうのだった







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