2016_02
26
(Fri)09:17

2章 第18話

オリジナル小説 『カタクリズム』
2章 第18話 【ハーフブリード】其の六

ついにハーフブリード編も佳境に入りました。
次の話でこの話は一旦終わりの予定です。
その後はこの物語、カタクリズムの核心部分に触れて行きます!
お楽しみに!

では、続きを読むからどうぞー。









【ハーフブリード】其の六








ブドゥール寺院と呼ばれる遺跡には宝が眠るという
そんな噂を聞きつけたハーフブリードは遺跡探索のため家を出る
ラーズ首都より北北東、トヒル火山よりも北、ネネモリとの国境付近にその遺跡はあるという
首都で馬車を借りたハーフブリードは火竜の喉笛亭で1泊し
宿に馬車を預け、そこからは徒歩での移動となった

1日半かけて北上し、現在は山々の間にある峠を進んでいる
足場は悪く、ゴロゴロとした大きな岩が多い
一行は思うように進む事が出来ず、時間だけが過ぎていった

「疲れた~、足痛い~」

シャルルがそんな愚痴をこぼす、この愚痴は既に7度目だ
彼等の履いている靴は革製である
そのため、足場の悪い場所を長時間の移動となると足への負担は凄まじい
シルトは見通しの良い場所を見つけたので休憩する事にした

「じゃ、ここで少し休憩しよう」

荷物を平らな岩の上に置き、近場にある川へと水を汲みに行く
シャルルは靴を脱ぎ、足裏を見て豆ができているのを確認する

「痛かったのはこれかー・・・陽光の暖かさよ」

シャルルの手が黄色く光り、その光で足を照らす
見る見るうちに傷は癒え、痛みは消えてゆく

「シャルル、私にもお願い」

ジーンがブーツを脱いで足を向ける

「やだ、ジーンは自分で出来るじゃん、ってか足向けんな」

「私は精霊魔法のために魔力を温存したいの」

シャルルは悩んだ、確かにジーンの精霊は圧倒的だ
今のハーフブリードにとって要とも言える力だろう
だが、精霊魔法とは膨大な魔力を消費するらしい
そのため、ジーンは普段は生の魔法を使わないようにしたのだ
シャルルはジーンの足裏を見る・・・豆が潰れ、血が出ていた

「仕方ないなぁ・・・陽光の暖かさよ」

数秒でジーンの傷は跡形もなく治っていた
しかし、血は落ちないのでそこは洗ったりしなくてはならない

「ありがと、川で足洗ってくるけど、シャルルも行く?」

「うん」

二人は川へと行き、川の水で足を洗っている
シャルルのつめた~い!という悲鳴が峠に響いていた

ラピは身体が軽いせいか、足へのダメージはそれほどでもなかった
しかし、体力は無いようで疲労の方がキツそうである
ウェールズを肩に乗せているせいもあるだろうか
重い荷物は全てシルトが持っているので、それほどでもないはずだが
元々運動不足なのか、先程から平らな岩の上で大の字に寝転がって肩で息をしている

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

アギャ

「ウェー・・・ルズ・・・はぁ・・・お前は・・・はぁ・・・元気だねー・・・はぁ」

ギャアギャア

ラピの胸の上でウェールズが跳ね、その度にラピが「うっ」と小さな呻き声を洩らす

「ウェールズどいてー・・・うっ」

アギャアギャ

「もお!」

はしゃぐように暴れるウェールズを両手で掴み、横に置く

「怒るよー?」

アギャ?

「もう知らなーい」

ラピは横向きになり、ウェールズに背を向ける
ウェールズがラピの背中に近寄って、耳を甘噛みして甘えてくる

「もう、やめてー!」

くすぐったそうにするラピと、構って欲しいウェールズは戯れ合っていた
その光景を見て、サラがクスクスと笑っている
水を汲み終えたシルトが戻ってきて、笑っているサラへと声をかける

「どったの?何か面白い事でもあったん?」

「ラピとウェールズが楽しそうにしてて」

「あぁ、仲良いよね」

「うんうん」

アギャアギャ

「楽しくないよー!何とかしてー!」

ウェールズに襲われているラピの三つ編みは解けかけてボロボロになっていた

「「あはは」」

「笑ってないで助けてよー」

サラが立ち上がり、ウェールズを抱き上げる

「ウェールズ、悪戯しちゃダメでしょ」

アギャ?

「サラありがとー、助かったー」

三つ編みを解き、編み直しながらラピはサラにお礼を言う
手際よく編んでいき、あっという間に元通りになった

「ラピってずっと三つ編みなの?」

「うん、そうだよー」

「大変じゃない?」

「んー、慣れちゃったからなー・・・そんな大変じゃないかな」

「へー、そうなんだ」

サラが少し興味ありそうにしている
その様子が気になったシルトは1つ提案をしてみた

「サラもやってみたら?」

「え?」

「三つ編み」

「わ、私は似合わないよ」

サラの髪はハーフキャットでは珍しい綺麗なストレートだ
前髪は切り揃えてあり、世に言うぱっつんというやつである
シルトはサラのそれ以外の髪型を見た事がない
普段からサラはおしゃれの類いに感心を示す事がなかった
それをシルトは少し気にしていたのだ、我慢しているんじゃないか、と

「そう?そんな事ないと思うけど・・・ね?ラピ」

「うん、似合うと思うよー」

「でも編み方とか分からないし・・・」

「わたしがやってあげるよー!」

「え、でも・・・」

「ちょっとやってみな、興味あるんでしょ?」

「まぁ・・・うん、じゃあラピお願い」

「いいよー!」

サラが座り、ラピが背中側から髪を3本に分けてから編み始める

「髪綺麗だなー、うらやましい」

「そう・・・なのかな?」

「そうだよー」

「ありがと」

少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうにサラは目を細める
そんな会話をしている内にあっという間に三つ編みは完成していた
ラピのように2本の三つ編みでおさげにするのではなく
サラのは背中側に太めの三つ編みが1本だ

「どう・・・かな?」

自分で見えないので不安そうにしているサラはくるりと一回転する

「おぉ、いいんじゃないの」

「うん!可愛いよー!」

「ホント?ありがと」

顔を真っ赤にして照れるサラの表情はとても嬉しそうだった
そこへシャルルとジーンが戻って来る

『わー!サラかわいいーーーー!!』

シャルルがいいなーいいなーとサラの周りをくるくると回る

「シャルルもしてみたら?」

シルトがそんな事を言うが、シャルルは頭を横に振った

「ううん、私の髪だと短すぎて変になっちゃうから」

「そっか、じゃ伸ばしたらやってみたら?」

「伸ばしてみようかなー」

そう言いながら自分の髪を指でくるくると巻き取る

「くせっ毛だからなぁ・・・」

「シャルルのは自然なくせっ毛だから可愛いけどね」

「ジーンが珍しく良いこと言った・・・・」

シャルルが驚きの表情でジーンを見ている

「珍しくって」

ジーンは苦笑する、この子は私をなんだと思ってるんだろう、と

そんな和やかな時間を過ごしていると
思ったより時間も経過しており、日が落ち始めていた
今日はここで野営とし、日の出と共にブドゥール寺院を目指す事となった



まだ薄暗い内から支度を始める
眠い目をこすりながら川で顔を洗い、その冷たさで目を覚ます
軽い朝食を済ませるが、持ってきた果物が腐っており食後のデザートは無かった
一行が出立した頃には日も昇り、辺りは明るくなっていた

「今日こそ寺院に行くぞー!」

「そだね、そろそろ着くはずなんだけど」

シルトが地図を確認しながら辺りと照らし合わせる
冒険者組合で仕入れた情報によると、この先2キロほど行った場所にあるはずだ
足場は悪いが昼前には着くだろう

「あとひと踏ん張り、がんばろー!」

「「「「おー!」」」」

今回は道中に1度も魔物に遭遇せずに来ている、これはとても運が良い
街道はラーズ軍が見回りをし、ある程度魔物を排除してくれている
だが、それ以外の地域は一切手が入っていないと言ってもいい
そのため、街道以外の地域は魔物の巣窟のようなものなのだ
幸い、この辺りに強い魔物が出るといった情報はないが極力戦闘は避けたい
どんなに弱い魔物だろうと、命のやり取りなのは変わりないのだから

日が高くなってきた頃、ボロボロに崩れかけた遺跡が見えてくる
おそらくあれがブドゥール寺院と呼ばれる遺跡だろう

「あったー!」

シャルルの足取りが早くなる

「シャルル!待って、先行しないで」

「はーい」

基本的な隊列はシルトが先頭で、その後ろにシャルル、ジーン、ラピと続き
最後尾をサラが務めている
これは盾役である二人が前後を守るためだ

一行が遺跡の入口へと歩を進める
それほど大きくない遺跡だが、どこか壮大な雰囲気すら漂っていた
それは寺院という独特な場所だからだろうか
そこら中にツタが生え、まるで寺院全体を飲み込もうとしているかのように感じられる
入口の岩の扉は半分だけ開いており、誰かが入った形跡がある

「荒らされてないって噂だったけど・・・」

「中を確認して、魔物がいたから引き返したんじゃないかな」

ジーンが地面を確認しながら分析結果を言う

「それに、難易度シルバーって認定されてるでしょ?誰かが確認したって事だしね」

「それもそうか」

シルトが入口に片足を入れた所で止まり、振り向いた

「どうしたの?」

ラピが首を傾げながら聞くと、シルトの表情からいつもの緩さが消える

「僕が先に中を見てくる、みんな待ってて」

「一人で?」

「うん、待ってて」

そう言うとシルトは一人で中へと入って行ってしまった
残された4人は呆然と立ち尽くしていた

「あんなシルさん珍しいね」

「うん・・・どうしたんだろ」

「そうだね、いつものシルさんなら皆の意見聞いてから動くよね」

「何かあったのかなー?」

「・・うーん」

シャルルが目を瞑り頭を捻る・・・

「わからん!」

「何となく、シルトさん怖がってたように見えたかな」

「え?怖がる?シルさんが?」

「うん、何となくね」

サラは先程のシルトに違和感のようなものを感じていた
それはどこか不安そうな、寂しそうな、恐れているような
そんな雰囲気を感じ取ったのだ

「気のせいかもだけど」

「シルさんって怖いもの無さそうだもんねー」

「あれだけ強いとね」

「そういうジーンだって怖いものないじゃん」

「無い事もないよ?」

「そうなの!?何、何!」

「ふふ、それは秘密」

「えー!なんでー!教えろー!」

シャルルがギャーギャーと騒いでいるとシルトが戻って来る

「どったの?何かあった?」

「ううん、何でもないよー」

「そっか、中見てきたけど少し厄介そうだわ」

「情報ではガールグユがいるんだよね?」

ガールグユとは蝙蝠のような大きな翼を持ち
口は鳥のクチバシのようであり、目は蛇のようで、指は長く、爪は鋭い
皮膚は硬く、その肌には毛が1本も生えていない
一番の特徴は、石像に擬態する事である
この魔物は正確には魔物ではない、魔法で作られた生物なのだ
普段は石像として神殿や寺院を飾り、守っている
侵入者や危害を加える者が現れると途端に動き出し、その爪を振るう
1体なら大して強くはないのだが、基本的に複数いるのが厄介なのだ
そして、ガールグユは空を飛ぶ、それが冒険者にとっては天敵とも言える相手だった

「うん、情報だと4体だったんだけど、よく見ると6いるわ」

「6か・・・ちょっと多いね」

「そだね、どうすっかな」

シルトとジーンが悩んでいると、ラピがシルトのマントを引っ張る

「ん?」

「ねぇねぇ、ここまで引っ張ってくればいいんじゃない?」

「へ?」

「ここなら道幅もないし、1体ずつ戦えない?」

「あー・・・それでもいいけど、外出られたら厄介だからなぁ」

遺跡内は天井がある分、奴等の飛行能力が十分には発揮されない
しかし外は別だ、縦横無尽に飛び回られると流石に手に負えない
さて、どうしたものかと悩んでいるとジーンが1つ提案をする

「ここだと外に出られる危険性あるけど、中に入って閉めちゃえばいいんじゃない?」

「入ってすぐのとこでやるって事?」

「うん、2体ずつになると思うけど、少しは安全じゃないかな」

「じゃ、それでいこっか、皆おっけー?」

「「「おっけー!」」」

「よし、決まり」

一行が遺跡の中へと足を踏み入れる
独特な空気が漂っている、カビ臭いというか埃っぽいというか、そんな感じだ
あまり良い環境ではないのは確かだった
扉を閉め、辺りが真っ暗になると、シャルルが呪文を唱える

「生命の輝きよ」

シャルルの杖から眩い光が溢れ、辺りを照らしてゆく

「ラピ、聖獣お願い」

「いいよー!」

ラピは本を開き、光る指で中空に文字を綴った

「カントより・・・・おいでませっ!」

両手を広げて上げると足元に魔法陣が出現し、それがラピの身体を通り抜けてゆく
中空で回転する魔法陣は黒い世界に繋がり、中から銀色の狼が姿を現した
狼は雷を纏っており、グルルルと唸っていた

「二人に!」

ラピがシルトとサラを指差し、狼の聖獣エペタムがウォォンと吠え、雷を落とす
二人は身体の内から湧き上がる凄まじい力を感じる

「やっぱラピの強化は凄いな」

「うん、今なら何でも出来そうな気がしてくる」

「へへへ、でしょー」

ラピが笑顔でエペタムを撫で、身体から放たれている雷で少し痺れる

「それじゃ、サラはここで待機、僕が釣ってくる」

「うん、わかった」

シルトはゆっくりと奥へと向かう
シャルルの杖から放たれる光の範囲から離れ、シルトの姿は闇の中へと消えた
しばらくして、奥の方で何かがぶつかる音がする

「何の音だろ・・・」

「石投げつけたとか?」

「あー、そうかな?」

少しすると、ガチャガチャと喧しい音を立てながらシルトが全速力で走って来た

『来るぞー!』

サラが盾を少し上に構え、待ち構える
その後ろにジーンとシャルルが並び、その後ろにラピがいる
シルトはサラの横に並ぶと同時に盾を構え、ガールグユを待ち構える

・・・・ギギャ・・・・ギャギャ・・・・・ギギギャギャギャギャ!

ガールグユは興奮しているようで、喚き散らしながら向かってくる

「シルさん何したの?あちらさんめっちゃ怒ってるみたいだけど」

「まぁ色々とね」

「後で教えてね!」

ガールグユの鳴き声はどんどん近づいており、すぐそこまで迫っていた
そして、1体目のガールグユがシャルルの放つ光の範囲へと入ってくる
そのガールグユは頭から赤い液体のようなものを被っていた

「え?何したのシルさん」

「腐った果物投げつけた」

「そりゃ怒るよ!」

「でも、それで動かなかったから石投げたんだよ」

「そりゃもっと怒るよ!」

そうこうしている内にガールグユはシルトの目の前まで迫り
バサバサと羽ばたきながら、その長く鋭い爪を振るう

キィィン!

シルトがそれを盾で右へと受け流し、右にいるサラが突きをガールグユの喉元へと食らわす
その一撃でガールグユは絶命し、ゴトッと音を立てて落下した
そう、ガールグユは喉が弱点なのだ
全身を硬い皮膚に覆われているが、喉だけは柔らかい
死んだガールグユは岩のようになり、皮膚が更に硬質化していく
まるで本物の石像になったように・・・

・・・・ギャギャギャ・・ギギギャ!

次のガールグユが迫ってくる
シルトとサラは石のようになったガールグユの死体を跨ぎ、その前で待ち構える
シルトが1歩前へと出て盾を構え、そこへガールグユの1撃が放たれる
それを盾で払い、喉元へと剣を突き立てた
2体目のガールグユが地面に落下し、ゴトッと鈍い音が響く
二人はその死体を跨ぎ、次のガールグユを待った

入口からの通路は細く、天井の高さもそれほどない
精々2体のガールグユしか通れないだろう
しかし、少し先へ行くと道は広がっていき、3~4体を同時に相手をしなくてはならない
シルトとサラならその程度なら平気かもしれないが、それをシルトがよしとしなかった
前へ出ようとしたサラを盾で阻み、頭を横に振る

「前には出ないで、僕が流すからサラはトドメを」

その言葉には強い意思のようなものを感じた
シルトは前からこういう事がたまにある
そういう時のシルトは何を言っても無駄なので、サラはそれに従う事にしていた
無言で1度頷き、サラは盾を前へと構え、突きの体勢に入る

・・・・ギギギャ・・・ギャギャギギギャ!

複数のガールグユが迫っているようだ
唾を飲み込み、光の届く範囲に入ってくるのをじっと待つ
ジーンとシャルルとラピはいつでも回復魔法を飛ばせる準備をしている
少しの時を待つと奴等の姿がシャルルの放つ光に照らされた
数は4体、どうやらまとめて来たようだ
しかし、通路は狭く、2体ずつしか進めないようだ
ジーンの狙い通りに事が進み、皆の表情が僅かに緩む

「サラ、1体お願い」

「うん、任せて」

シルトは左の1体に狙いを定める
鋭い爪の生えた長い指を鉤爪のように振るい、それを盾で防ぐ
しかし、その長い指で盾を掴み、ガールグユは盾にしがみつく形になった
すぐにシルトが戦術を変え、盾を掴むガールグユを岩壁へと叩きつける

ガゴッ

ガールグユには痛覚というものがない
壁に叩きつけられても平然としているガールグユに対し
シルトは全体重をかける、盾と壁で挟み込む形だ
そのまま盾を下へとずらし、喉元をさらけ出す
そこへ剣を滑らせ、喉を貫いた
喉を貫通し、シルトの剣が壁へと当たり、キンッ!と高い音が響く
すぐに剣を抜き、次のガールグユへ備えた

サラはガールグユの爪を盾でいなし、突きを放つがそれは顎辺りに当たってしまう
剣は硬い皮膚に弾かれるが、サラはそれでも諦めなかった
ほんの僅かに剣を持つ腕を引き、そして前へと突き出す
今度は喉に当たるが、勢いが無かったせいか浅かった
ガールグユが空を飛んでいる事もあり、上手く押し込めなかったのだ

「ごめん、倒せなかった!」

「大丈夫」

喉を少し刺されたガールグユは少し引き、後ろの2体と合流する
奴等はこの狭い通路に入って来ないようだ、流石に学んだのだろう
3体のガールグユは空中で高度を維持しながら待っている
こちらが行くまで動かないつもりだろうか

「見た目以上に頭いいな・・・仕方ない、3体同時にやろう」

シルトが1歩踏み出すとガールグユ達が一斉に声を上げる

「サラとシルさんがんばれー!」

「無理しないでね」

「がんばー!」

シルトの後にサラが続き、二人は広がった通路へと足を踏み入れる
そこは天井も高くなり、4メートルほどはある
ガールグユは上昇し、3体はバラバラの位置へと広がっていった

「サラ、後ろ任せるよ」

「うん」

シルトとサラが背中合わせに立ち、盾を少し上へと構えて待ち構える
ガールグユが回り込もうとするとシルトとサラも同じように回る
そして、2体のガールグユが同時にシルトとサラ目掛けて急降下してきた

キィィンッ!キィンッ!

二人は同時にそれを防ぎ、シルトは剣を横へと払う
それはガールグユの喉を半分以上切り裂き、首が後ろへと折れ曲がった
そのガールグユは落下し、石のように硬くなる
サラは防いだ盾を引き、ガールグユが前のめりに体勢を崩した瞬間、剣を喉へと突き刺した
やった!サラは内心ホッとする、さっきの失敗を気にしてたのだ
サラの貫いたガールグユも落下するが
剣を抜き忘れていたため、サラの右腕はその重さに耐え切れず下へと落ちる
切っ先が地面に当たり、高い音を鳴らす
急いで剣を抜いたサラは構え直そうとするが、最後の1体を見失っていた

「あれ?どこだろ」

キョロキョロと辺りを見渡すがガールグユの姿は見えない
その時、少し離れた位置から、ゴッ!という鈍い音が響いた
そちらへと目を向けると、シャルルが杖でガールグユの顔面をぶっ叩いたところだった

「あっちいけ!」

ぶんぶんと杖を振り回し、威嚇する
サラがシャルルの元へと走ろうとすると、シルトが既に動いていた
ガールグユの横へと回り込み、横から大盾を使ったタックルを食らわす

「シルさんありがと!」

「ごめん、1匹逃した」

「大丈夫!無傷だよ!」

にししと笑顔を見せるシャルルにシルトは安堵した
そして、吹き飛ばしたガールグユへと目を向ける
タックルを食らったガールグユは壁まで吹き飛び、地面へと落ちていた
再び飛び立とうとするが、地を這うように物凄いスピードでサラが距離を詰める
それを見たシルトはニヤリとして、剣を下げた
サラはその勢いのままガールグユの喉を貫き、剣が貫通し、壁へと当たる

「・・・ふぅ」

剣を抜いたサラが深く息を吐き、呼吸を整える

「お見事」

シルトが剣を鞘に収め、笑顔を向ける

「ううん、今日は失敗ばっかり」

しかし、サラの表情は暗かった
少し困った顔をしたシルトはサラへと歩み寄り、肩に手を乗せ言う

「十分いい動きだったよ、みんな無傷だし万々歳っしょ」

「うーん」

少し不満そうなサラに、シルトは肩に乗せた手を離し
その手でサラの頭を撫でる

「よくやっ・・」

シルトが頭を撫でると、サラは飛び退くように離れていた

「え?」

「あ、うん、ありがと」

サラは自分でも何で離れたのか分からず、戸惑っていた
シルトは上げたままの手の行き場がなく、そのまま自分の頭を掻いて誤魔化す

「じゃ、奥に行こっか」

「「おー!」」

一行は辺りを警戒しながら先へと進み、その後も2体のガールグユを倒す
そして、寺院の奥にある石像の足元に大きな石で出来た箱を見つけた

「お?これお宝かな」

「あったー!ホントにあったー!」

シャルルがはしゃぎ、大声を上げる
ラピも嬉しそうにピョンピョンと跳ねている

「何が入ってるのかなー?」

ラピが箱に興味深々な目を向けている

「シルさん開けて開けて」

「へいへい」

シルトが石の箱の蓋を持ち上げる、予想より重い

「ぬぉぉ・・・おっもっ」

ズゥン・・・

石の蓋が低い音を立てて地面に落ち、大量の土埃が舞い上がる

「ゲホゲホッ・・・・静かに置いてよー!」

「ゲホッ・・・んな・・・ゲホ・・・無茶な!」

箱の中を覗き込んだラピが、おー!!と大きな声を上げる
その声に皆が箱の中を覗き込み、おぉ~と声がハモっていた

中に入っていたのは3つ

1つは長い杖だ
古木なのは間違いないが、しっかりとした作りになっており
見ただけで魔法使いようの武器なのが分かる

1つは赤いロングコートだ
真紅とも言える赤で、炎のようであり血のようでもある
古い物のはずだが、真新しさすら感じられるそのコートは
何かの魔法が掛かっているのは明らかだった

1つは60センチほどの黄金色の鳥の彫像だ
おそらく金で出来ているであろうそれは、かなりの価値があるだろう

「すごい!お宝だ!!」

「おおー!デカい金塊!」

「うんうん、綺麗なコートだなー」

「ラッキーだったね」

「こういうのワクワクするよねー」

「うんうん」

シルトが黄金の鳥を取り出そうとして、その重さに驚く

「やば、これマジで金の塊だ」

彼の顔は完全に緩んでいる、誰が見ても今の彼はだらしない顔をしていると思うだろう
おりゃーっと声を上げてシルトが金の鳥を持ち上げ、箱から出す
彼がそれを地面へと置くと、ゴトッと鈍い音を立てていた

杖はジーンが取り出し、魔力の流れを調べている

「・・・・・これ生の魔法の効果が上がるみたい」

『なにー!!』

シャルルが大声を上げる
そんな彼女を見て、皆が目を合わせ、無言で頷いた

「これはシャルルだね」

ジーンが杖を差し出すと、シャルルは目を丸くして尻尾はピーンと立っている

「え!?なんで?いいの?」

「うん、もう私よりシャルルの方が優れた生の魔法使いだから」

「え?え!?そうなの!?」

「そうだよ?気づいてなかったの?」

「え、だって私まだ上級8章だよ?」

「私なんかより遥かに優れた目を持ってるでしょ」

「目?」

「うん、シャルルは誰よりも早く
 誰よりも正確に身体の異変に気づける、それは私には無い才能だよ?」

ジーンが微笑むと、シャルルは皆の顔を見渡す
皆はシャルルに笑顔を向けていた

「もらっちゃいな」

「うんうん、シャルルにぴったりだよ」

「わたしもそう思うよー!」

「みんな・・・」

シャルルの瞳に涙が光る
それをぐしぐしと拭き、シャルルは歯を見せ笑った

「ありがと!大切に使うね!」

続いてジーンが箱から赤いロングコートを取り出し、魔力の流れを調べている

「わー・・・広げるとホント綺麗だなー」

サラがそのコートをキラキラした目で見つめていた

「ならサラが着ちゃいなよ」

シルトが唐突にそんな事を言う

「いやいやいや、私前衛だし、鎧着なくちゃ」

「いいんじゃない?中にチェインシャツとかでも」

「でもそれじゃ・・・」

「それにサラが鎧着てもさ、長所である速さを失うだけだと思うよ」

「・・・そうなのかな」

「うん、サラは僕より速いからそれを活かした戦い方を学んでくといいよ」

二人が話していると、ジーンが割って入る

「このコートは火の耐性あるみたい、前衛でもいいんじゃないかな?」

「赤はサラだよ!」

「だねー」

「それじゃ・・・貰っちゃおうかな?」

「はい」

ジーンがサラへとコートを手渡し、サラがそれを広げて目を輝かせる

「良かったね」

シルトが笑顔を向けると、サラも満面の笑みで応えた

「うん!」

すぐに袖を通し、サイズを確かめる
ほんの僅かに大きいが、まだ成長中のサラには丁度良かった

「ふふふ、嬉しいかも」

微笑むサラの顔を見て、シャルルの頬が緩んでいる
幼い頃はずっと暗い表情だったサラがこんなに明るくなった事が嬉しかった

その後も辺りを調べるが、目ぼしい物は見つからず、一行はブドゥール寺院を後にした
シルトは金の鳥を背負い、フラフラと歩いている

「おもっ・・・でも、これは持って帰るぞ!!」

自分に言い聞かせるように彼は何度もそう言っていた
3日かけてラーズ首都へと戻り、その足で金の鳥を売りに行った
700金貨という大金になり、彼等はその金で色々な装備を購入した
帰った彼等は今回の冒険の思い出をあれこれ語り合い
夜遅くまでその話は続いていた




こうして彼等の装備は一気に整い、実力も装備も充実していくのだった
その後も彼等は2等級冒険者として活躍し続けた

シルトとサラとシャルルが出会ってから8年
ハーフブリードが結成されてから6年
ジーンが加入してから4年、ラピが加入してから2年を迎えようとしていた頃
彼等の人生が大きく変わる出来事が起こる
今の彼等はそんな事が起こるとは知らず
いつもと変わらない日常を過ごしているのだった・・・




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