2016_03
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(Fri)17:12

3章 第3話

オリジナル小説 『カタクリズム』
3章 第3話 【水は掴めない】

新キャラ作るの大変だ~_(┐「ε:)_
ちょっとペース落ちてますが、頑張って書きますです、はい。

では、続きを読むからどうぞー。








【水は掴めない】







イオマンテにマルロとイエルと神殿騎士団達が到着した頃
ハーフブリード達はイオマンテの近くにあるエルフの里リョースを訪れていた
リョースを訪れた理由は2つ、1つはハーフキャット達の様子を確認するため
そして、もう1つはハルに会いに来たのだ

『ハルちゃんー!!』

「ひゃるるお姉ひゃん!サラお姉ひゃん!!」

「元気してた?」

「うん!」

ハルはあれからリョースでエルフから様々な事を学んでいるようだった
まだ同年代の子に比べると遅れてはいるが、ゆっくりとだが成長していた

「ハルね、おべんひょうがんばってる!」

「偉い偉い!」

シャルルがハルの頭を撫でると、嬉しそうに目を細める

「ハル・・・頭わるひから、まだひゃるるお姉ひゃんたひのとこひけなひ」

「ゆっくりでいいんだよ、ハルちゃん」

「そうだよ!私も頭悪かったから!あはは!」

シャルルが豪快に笑うと、釣られてハルも笑顔に戻った
3人がそんなやり取りをしている時、ラピは実家を訪れていた

「ただいま帰りました」

「ラピお帰りなさーい」

「うむ、よく戻った」

ラピの父フレイと母ゲルダが出迎え、ゲルダがラピの頭を撫で繰り回す

「またすぐに行かなくちゃいけない・・・です」

「あら、そうなの?お母さん残念だわ」

ゲルダはそんなに残念そうにしていない
目を瞑っていたフレイが目を見開き、ラピを見据えて言う

「話は聞いている・・・神の御言葉には従え、それがエルフとしての務めだ」

「はい、父様」

「ラピよ、お前は妖精を使えると聞いた、それは真か」

「はい、父様」

「今使えるか」

「はい・・・」

ラピは耳のピアスをぴんっと指で1回弾き
目を瞑り、手を組んでお願いするように口ずさむ

「・・・・おいでませっ、ディナ・シー」

ピアスから奏でられる鈴の音のような音が辺りに響き
彼女の周りにキラキラとした銀の粒子が舞い、それが頭上で渦を巻く
それが弾け、中から15センチほどの少女が姿を現した
頭はピンクの花のようであり、目は全眼で黄色い
花びらで出来たようなワンピースを着ている
その背には蝶のような羽根があり、パタパタと止まる事なく羽ばたいていた
全体的に黄緑色の少女は銀の光を放っており、キラキラと光の粒が舞い落ちる

「これが・・・妖精・・・」

「あらぁ、可愛いわねっ」

ディナ・シーはラピの頭に乗り、ゆらゆらと楽しげに揺れていた

「ラピよ、その妖精・・・ディナ・シーと言ったか」

「はい、父様」

「それは妖精界の住人、聖獣達を治める者だ」

「そうなのですか?」

「うむ・・・聖獣とは妖精界の獣、その世界を治めるのが妖精と言われている」

ほへー、とラピがディナ・シーがいる頭の上へと目を向ける
ディナ・シーはラピの頭の上で寝転がり、肘をついて退屈そうにしていた

「そして、その妖精を統べる者、それこそが妖精の女王ティターニア」

「ティターニア・・・」

「妖精界の神と言った存在だ」

そこでフレイの表情が険しくなる
それを察したラピもまた姿勢を正すのだった

「祖先にも1人だけ妖精を使役するエルフがいたと言う」

「はい」

「ハイエルフだったとも言われているが、それは定かではない
 その者は世界のために戦い、そして消えたと言われている・・・」

「消えたのですか?」

「うむ、消えたのだ・・・突如な」

「・・・・」

「私はお前がそうならないか心配なのだ」

「父様・・・・」

「ラピよ、こっちへ来い」

「はい」

ラピが恐る恐るフレイの元へと行くと、フレイは優しい笑顔でラピの頭を撫でた

「え?」

父から頭など撫でられた記憶の無いラピは戸惑う

「お前も大きくなったのだな・・・世界を頼むぞ」

「はいっ!」

その後、久々に家族での時間を過ごす
何でもない時間だが、それがラピにとっては懐かしく、嬉しかった



外でラピの帰りを待つシルト達の元へ、1人のハーフキャットが近寄ってくる

「え?シウさん?」

「こんにちは」

「あ、こんちわ」

シウは目の前のシルトなど眼中になく、シャルルとサラを探していた
お目当ての二人を見つけ、シルトの横を素通りして行く

「相変わらず僕には冷たいな・・・」

「人間の男だからじゃないかな?」

「え?なんで?」

「だって、彼女達ハーフキャットは生まれが・・・ね?」

「なるほど・・・」

シウの後ろ姿を見ながらシルトは思う
彼女にも辛かった時期はあったのだろう、と
だからハーフキャットである事すら隠して生きてきたのだろう
そして、人間に対する憎しみじみたものがあってもおかしくない
いくら雇われとは言え、仲間を失ってもケロっとしていた彼女に僅かにながら違和感を覚えた
それは人間の男を人として見ていないのかもしれない、シルトはそう思うのだった

「お久しぶりニャ~♪」

「シウさんだー!おひさニャー♪」

「お、おひさしぶりです・・・ニャ」

「君達、なんでここにいるのかニャ?」

「神さまから言われて北に向かうところなの!ついでに寄ってみたんだよー」

「神さま?神託があったのかニャ?」

「そうだよ!あ、ニャ!」

ふむふむ、とシウが顎に手を当てて考えている
その様子に、何となく思った事をサラが言う

「もしかして、シウさんにも神託が?」

「うん、あったニャ」

「っ!・・・・やっぱり」

「頭の中に声がして驚いたニャ、でも多分あれが神さまなんだと思うニャ」

「うんうん、それは神さまだよー!」

「なんて言われたの?」

「北へ行けって言われたニャ」

「私達と同じだね!一緒に行く?」

シャルルの提案にシウは頭を横に振った

「ううん、仲間がいないから集めてから行くニャ」

「シウさんなら私達とも組めると思うけど・・・こないだ入りたいって言ってたし」

「あれは無しニャ!何となくあの二人とは上手くやれない気がするニャ・・・」

シウがシルトとジーンを見ながら言う

「あぁ・・・シルさん達かぁ・・・」

「シルトさんはいい人だよ、ジーンさんも最初は怖いかもだけどいい人だよ」

「いい人とか悪い人とかじゃないのよ、強い力が集まれば更に強くなる訳じゃないの」

突然真面目にシウが言う
シャルルとサラはそれ以上は何も言えなかった
それは、シウの表情がどこか悲しそうに見えたからだ

「わたしは彼等とは合わない、それだけは分かるニャ」

「そんなもんかー」

「残念・・・ところで、シウさんは何故ここに?」

サラが最初に疑問に思った事を口にすると、シウが首を傾げて不思議そうにする

「?・・・わたしはネネモリの冒険者ニャ?」

「あ、そうでした・・・」

「君達がハーフキャットを解放してくれて
 わたしがハーフキャットである事を公表してからここに住んでるニャ♪」

「そうなんですか」

「彼女達を救ってくれて、本当にありがとう」

シウは深く頭を下げた

「わたしには出来なかった、怖かった・・・すぐ側にいながら何も出来なかった」

シウの目から涙が溢れ、それが大地へと落ちてゆく

「本当にありがとう」

「シウさん頭上げて、実際救おうって言い出して実行したのはシルさんだよ」

「うんうん、シルトさんが私達全員を救ってくれたんだよ」

ゆっくりとシウが頭を上げて、目をこすりながらシルトへと目を向ける
そこでシルトと目が合い、シウは笑顔を向け、深く頭を下げた

突然の事にシルトは動揺していた
あれだけ冷たくあしらわれていたはずなのに、急にどうしたんだ?
本当にあの人は読めない・・・しかし、頭を下げてきている人に無反応なのもどうかと思い
シルトも頭を下げるのだった

「シルさん良かったね、仲良くなれたかもよ?」

「そうなんかな?」

「うん、多分ね」

「そっか、よくわからんけど良かった」

「ふふ、シルさんまた女の子増えちゃうかもね?」

「別に狙って集めてるわけじゃないよ?」

「ふふ、わかってるよ」

ジーンが冗談っぽくそんな事を言う
しかし、気がつけば周りは女性だらけになっていた
ハーフブリード、シウ、そしてハーフキャット達・・・
シルトが女好きという訳ではない、至って普通の男だ
人並みに女性が好きだし、人並みに恋もしたいと思っている
しかし、幼い頃から戦いだけの日々だったせいか、そういうものから縁遠くなってしまったのだ
今はそんな事よりも、ハーフブリードの皆が成長していくのが楽しみだった
サラ、シャルル、ジーン、ラピ、それぞれがいつか相手を見つけるだろう
自分のはそれを見送ってからでもいいかな、彼はそう考えていた

「サラが怒っちゃうかもね」

「え?なんで?」

「分からないならいい」

「・・・・・」

微妙な空気が二人の間に流れる
その後、ラピが戻り、シャルルとサラもハルやシウさんと別れて戻って来る
彼等はハーフキャット達の様子を見た後にイオマンテへと戻り
そこで生の巫女ヒミカの力を目の当たりにする事となる・・・





ハーフブリード達がイオマンテのリリムの家まで戻って来ると
そこにはカナラン一行も到着していた
皆が集まって何かをしているので、そこを覗いて見ると・・・

「行キマス」

ヒミカがエインの左手に、ぷにぷにの肉球のある両手をかざしていた
エインは左手の義手を外しており、左手は親指があるだけだ

「・・・生キトシ生ケル全テノモノ、再生ノ鐘ヲ聴イテ下サイ」

ヒミカが言葉を紡ぐと彼女の周りに巨大な魔法陣が出現する
その円は3つ、一番大きな魔法陣は一番下にあり直径4メートル程ある
上に行くにつれ魔法陣は小さくなっていき、一番上の魔法陣は1メートル程である

「我、神ノ目ナリ・・・我、神ノ手ナリ・・・我、神ノ足ナリ・・・」

魔法陣はゆっくりと回転を始め、徐々にその勢いを増す

「彼ノ想イヲ・・・元ノ姿ニ・・・・彼ノ願イヲ・・・元ノ姿ニ・・・」

白い光が増し、その眩しさに皆が目を細める
エインはあるはずのない左手の指の感覚を感じる
激痛が走り、エインの顔が歪むが、ヒミカの黄金の瞳は彼の手だけを見ていた

「彼ノ者ニ祝福ヲ・・・・・再生魔法レゲネーリッ!!」

3つの魔法陣は収束していき、エインの左手へと集まって行く
眩い光が起こり、白い世界へと一瞬で変わると
エインの左手に熱く燃え上がるような感覚が襲う

『うわああああああああああっ!!』

『エインっ!』

リリムが白い世界で叫ぶ
しばらくして光が収まり、目が慣れて来るとエインの左手に指が5本生えていた
親指以外の指はまだ白く、血色が悪い
だが、それは少しの間だった・・・徐々に血色が良くなり、肌色へと変わっていく

「す、すごい・・・指が再生するだなんて」

ジーンが驚きのあまり言葉を洩らす
ヒミカの身体が揺らぎ、シャチが神殿騎士団を跳ね除け駆け寄り、ヒミカの身体を抱き寄せた

「・・・・っ」

エインはまだ苦痛に顔を歪ませている
それも少しずつ和らぎ、徐々にだが手に感覚が戻る

「動く・・・凄い、動くぞ!」

エインが自身の左手をぐーぱーぐーぱーと何度も動かす
彼の後ろにリリムが寄り添い、そっと肩に手を置いていた
その表情はとても優しいもので、死の巫女という物騒な肩書きが嘘のようだった

「ヒミカ様、有難う御座いました」

エインは気を失っているヒミカに深くお辞儀をする
シャチは無言で頷き、ヒミカを抱き上げてリリムの家へと入って行く

「良かったわね、エイン」

ミラがエインに微笑むと、エインは少し申し訳なさそうに言う

「はい・・・折角義手を作って頂いたのに・・・申し訳ありません」

「そんな事どうでもいいのですわ
 それにあれは急遽作った粗悪品、あまり気にしないでいいですわよ」

ハーフブリード達が到着する少し前
ヒミカがエインの手を再生すると言い出したのだ
指4本くらいなら1回の再生魔法で治せると彼女は言った
残念ながら右腕はそうはいかない
5回ほどで治せるかもしれないが、その間、彼は義手すら使えなくなるだろう
右腕の再生はエイン自身が断ったのもある
エインにとって新しい右腕、ミラが作ってくれた銀の腕
それが本当の右腕よりも大事に思えたからだ

再生魔法とは生の巫女のみが使える究極魔法の1つである
その効果は絶大で、生の魔法では不可能とされている人体再生が可能なものだ
しかし、それもまた万能ではなく、人体の一部を再生する程度しかできない
そして、その消費魔力は尋常ではなく、1度使えば20時間は気を失う事になる

ヒミカは生の巫女になって日も浅く、幼い事もあり
再生魔法を行使するには身体への負担が大きかった
彼女はこの後25時間ほど目を覚ます事は無かった
シャチは25時間ずっとヒミカの側から離れず付き添っていた
彼女がうなされれば頭を撫で、寝返りをうてば毛布をかけなおし
眠気を我慢してヒミカが目覚めるのをじっと待っていた






ヒミカが目を覚ました日、マルロとイエルはとある人物と遭遇する
その少女は薄いグリーンの髪をしており、肩口で切り揃えられている
寝癖なのかくせっ毛なのかそこら中が跳ねており、ずぼらな印象を受ける
しかし、服装はとても綺麗な法衣を着ており、汚れ1つ見当たらない
眠そうな目に、二カッと白い歯を見せ笑う少女
この少女を見た瞬間、マルロとイエルは彼女が何者であるか気づいた

「お待ちください」

マルロが少女を呼び止める
少女は年齢は16~18歳程度だろうか
眠そうな目を向け、歯を見せ笑う少女は口を開いた

「何~?」

「貴女は・・・巫女ですか?」

「そうだよ~、水の巫女やってま~す」

その言葉にイエルの目が見開かれる
水の巫女と言えば行方不明になって数年が経っているのだ
どこの国にも属さず、放浪の旅を続けており
困っている民の元に現れ、水を与え、病気を治していくという
一部の者からは救世主とも言われる巫女だ

「初めまして、私は地の巫女マルロ・ノル・ドルラードです」

「私は火の巫女イエル・エフ・リートってんだ」

「お~?巫女が二人も?」

全然驚いているようには見えないが、どうやら驚いているらしい

「あちらには生の巫女ヒミカさんと死の巫女リリム・ケルトさんもいらっしゃいます」

「お~、4人も」

「あんたを入れて5人になるね」

「おお~、何何?お祭り?」

眠そうな目が少しだけ開き、興味深々に聞いてくる

「いえ、そういう訳では・・・」

「そっかぁ、お祭りないのかぁ~・・・じゃ、あたしはこれで」

残念そうにした少女は片手を上げて去ろうとする

「えっ!待ってください!」

「何~?」

まだ何かあるの?みたいな顔で彼女は言った

「あの・・・水の巫女さんは神託は授かったのでしょうか」

「ん?あったよ?それが?」

「え・・・あの、北へ向かうのですよね?」

「そうだけど?」

「あぁ!話が進まないね!私が話すよ」

耐え兼ねたイエルが間に入る

「あんた、北へ向かうなら一緒にどうだい」

「え?なんで?」

「一人じゃ危ないだろう?」

「そう?ずっと一人だけど問題なかったけどなぁ~」

「・・・・そうかい」

「うん、それじゃあたしは行くね」

「・・・・・」

水の巫女の少女はとことこと歩いて行ってしまう
その後ろ姿を見送る事しか出来ず、二人の巫女は呆然と立ち尽くしていた

噂では少しは聞いた事があった
自由な女性だと、掴みどころの無い女性だと
想像以上だ、あれとはまともに会話できる気がしない
しかし、神託の旅をする以上、水の巫女の力が加わる事はとても大きな事だ

マルロとイエルは皆の元に戻り、今あった出来事を伝える
神殿騎士団が急いで彼女を探すが、既にその姿は無く、完全に見失ってしまっていた





ヒミカの体調が良くなり、一行が旅に出たのは翌日の日の出だった
神は言っていた、もう災いは始まっている、と
その言葉が彼等を焦らせていた、自然と早足になり、強行軍で森を進む

森は大分薄くなり、光が差しているほどだ
しかし、大地は虫の死体で覆い尽くされており、その光は大地には届いていない
死体から発せられる独特な臭いが森中に広がっていた

メキメキッ・・・・ズズーン・・・・・

突如、森の先の方で大きな音がする・・木々が倒れたような音だ

「何事でしょう・・・警戒を」

先頭を歩くバテン・カイトスが皆に指示を出す

現在の隊列はこうだ
先頭をバテン率いるドラスリア騎士団の3名が並び
その後ろにハーフブリード、その後ろにエインとリリム
そして、マルロとイエルが続き、最後尾を神殿騎士団8名が続いている

バテンは背中からミスリルで出来た大剣を抜き、それを肩に担いで歩いて行く
見る見るうちに彼の表情が変わっていき、その目は野生の獣のようだった
これが彼の唯一の欠点、剣を握ると性格が変わるのだ

一行が慎重に進むと、死体の臭いに混じって鉄臭さが鼻に届く

「血の匂いだな」

バテンがニヤリとすると、その横にいるプララーとアシュも口角を上げる

少し進むと木々がなぎ倒れ、大きく拓けた場所へと出る
まるで以前にマルロが巨石魔法を使用した後の森のような光景だ
木々は左右に倒れ、大地はえぐれ、辺りは水浸しになっている
この一帯にだけ洪水にでもあったかのようだった
そして、その一角に座る少女がいる、水の巫女だ

「ん?また君達?何?ストーカー?」

少女は疲労した顔でそんな事を言う
皆が彼女の元へと行き、そこで一旦休憩とする
神殿騎士団とドリスリア騎士団の11名で見張りを務める
ここまで強行軍で来たため皆の足は棒のようになっていた

「水の巫女殿、お初にお目にかかります、エイン・トール・ヴァンレンと申します」

「ミラ・ウル・ラシュフォードよ」

「初めまして!リリム・ケルトです!」

「ヒミカダヨ♪」

「・・・シャチ、ダ」

「どうもどうも、あたしは水の巫女やってるマナ・マクリールで~す」

眠そうな目を何とか開きながらマナは言う
先ほど究極魔法を使って今にも意識を失いそうなのだ

「巫女殿、この光景は貴女が?」

「そうだよ~、魔物がいっぱい出てきてさ~」

マルロとイエルも彼女の元へと来て、イエルはため息を1つ吐き出す

「言わんこっちゃないね」

「ははは」

マナは笑う気力もないようで、乾いた笑いになっていた

その様子を少し離れて観察していたハーフブリード達は小声で話す

「あれが水の巫女・・・これを作り出した張本人か」

「そうみたいね、やっぱ巫女の魔法は桁が違うなぁ」

ジーンが吹き飛んだ森を見て悔しそうに言っている

「可愛い子だね?」

「そうだねー」

サラとラピは見た目の話をしていた
シャルルは珍しく黙って彼女をじっと見ている・・・・そして目が合った

「っ!」

シャルルの耳がピクピクと動き、尻尾は大きく揺れている
疲れきっているマナの瞳にも輝きが戻ってきていた
そして二人は走り出す、互いの方へと吸い込まれるように・・・

がしっ!

右手同士をがっちりと組み合い、二人は歯を見せニカッと笑いあった

「君、名前は!」

「シャルル・フォレストだよ!アナタは?」

「マナ・マクリールだよ!」

「「にししっ」」

二人は自己紹介を終え、太陽のような笑顔で笑い合う
外見は似てはいないが、不思議と二人の雰囲気は似ていた
それを感じ取ったのだろうか、二人は惹かれ合うように目だけで通じていた

「お友達になろう!」

「うん!いいよ!」

目が合ってから1分、彼女達は既に親友のような雰囲気すらあった

「シャルル~あたしを癒して~、もう疲れたよ~」

へろへろ~っとマナが座り込み、シャルルが支えて切り株へと座らせる

「あまり効果ないかもだけど・・・・陽光の暖かさよ・・・」

シャルルの杖が光り、マナを照らす
その光を浴びたマナは気持ちよさそうに目を閉じた
・・・その5秒後、彼女は寝息を立てて寝ていた

「あはは!もう寝ちゃった」

気持ちよさそうに眠るマナの髪を撫で、シャルルが微笑む
不思議な気分だった、まるで姉妹にでも再会したかのような感覚だ
一瞬であの子は私と同じだ、と見抜いたのだ
今まで感じた事がない感覚に、シャルルの大きな胸はドキドキと高鳴っていた





しばらく休憩した後、神殿騎士団の1人がマナを背負い、一行は北へと向かった
マナが作り出した道を進む、森を進むより遥かに早く歩けるためだ
見渡しがいい事もあり、辺りを警戒しながら進む森の中とは大違いだった
だが、その道も50メートルほどで終わり、また深い森の中を進む事となる

ここは大森林の奥底、人が踏み込んではいけない領域だ
大森林は奥に行けば行くほど強い魔獣がいるという
そのため、誰もこんな奥まで来ないのだ

先程、水の巫女が究極魔法で作った道には11体の魔物の死体があった
魔物の名は"ヴリトラ"、巨大な蛇の魔物だ
見た目は普通の蛇と大差ないが、その大きさが異常である
太さは1メートルにもなり、全長は15メートル以上はある
それが11体だ、並の人間なら既に死んでいただろう
猛毒を持っている事から、1体でも危険な魔物とされているほどだった
ヴリトラの厄介なところは、1度に大量の卵を産む事で有名である
今回の11体は全て1体の親から産まれた子達だろう

死体を横目に眺めながら彼等は進んだ
この先こんな化け物が大量に出てくるのかと思うと気が重くなる
それと同時に、より一層の警戒をしながら彼等は進むのであった

それから数時間歩き続け、日が落ちた頃に野営の準備を始めた
今日はそこで休んで、日の出と共に再出発するのだ
やっと野営になった事で彼等はすぐに横になり休んでいる
見張りは常時6人体制で行っていた
交代で見張りをし、火を絶やす事なく夜を過ごし、何事もなく朝を迎える

今だ目を覚まさない水の巫女を背負いながら彼等は進んで行く
大森林の更に奥へ奥へと・・・

昼過ぎに水の巫女マナが目を覚まし、神殿騎士団の背中から飛び降りる

「お~、ありがと!悪いねっ!」

「いえ、巫女様のお役に立てる事は本望です」

「あはは!ありがと~う!」

バシバシと神殿騎士の背中を叩き、マナは凝った身体をほぐすため伸びをする

「ん~~~~~~っぷぁ」

マナが隊列の先の方へと歩を進め、シャルルを見つけてその横に立った

「にししっ、魔法ありがとね~」

「あ、マナ起きたんだ!よかったよかった」

二人で笑い合い、同じ歩調で進んで行く
それからマナはハーフブリード達と仲良くなり、彼等と行動を共にする事が増えていった

シルトはジーンに言われた言葉を思い出して頭を抱える
また女の子が増えてしまった・・・意図しないにも関わらず、何故だ・・・
チラっとサラを見るが、怒っている様子はない
ジーンが言った事は何だったんだ、シルトにはよくわからなかった

そして、一行は3日ほど大森林を進み
道中で1度ナーガの群れとの戦闘があったが、それ以外は特に変わった事もなく進んでいた
ナーガの群れは5体ほどいて、そのナーガは全てリリムの一撃で葬られている
改めて見るリリムの力に、一行は恐れにも似た感情を抱いていた
しかし、エインだけは別であった

「やはりリリムは強いな」

「え?そう、かな?」

「あぁ、でも俺は君を守るから」

「・・・う、うん」

リリムが顔を赤くして俯きながら歩いていると、木の根に躓いてしまう

「っと・・・大丈夫か」

エインが再生した左手で彼女の腰を抱く

「あ、ありがと、エイン」

「リリムは変わらないな」

「え?」

「ほら、前にも同じような事があっただろう?」

「・・・あはは、そうですね」

少し恥ずかしそうにリリムが笑うと、エインも笑顔になっていた
そして、二人は密着した状態なのに気づき、赤面して距離を取る
その様子を後ろから見ていたマルロとイエルは目のやり場に困っていた

私もあんな風にしてくれる男が欲しいもんさねぇ
イエルはそんな事を考えながら進んでいる

エインさんは大胆ですね・・・クガネさんがあんな風に・・・キャー!
想像の中だけでマルロは悶える

二人の巫女が考えている事など知る由もない神殿騎士団達は
巫女達の足取りが若干遅くなった事を気にしていた






一行が旅立ってから7日目の昼の事である


彼等の前に突如見知らぬ人影が姿を現す
その数は42、全員がフルプレートメイルを着込んだ男達だった
最初はゾンビの軍勢かと警戒したが、彼等は全員生者のようだ
白銀の鎧を身に纏い、海のような青い厚手のマントを身に付け
マントにはどこかの国の紋章だろうか、それとも騎士団の紋章だろうか
大鷲のマークが大きく刺繍されていた

先頭の男は長髪で、サラサラの金髪をした薔薇のように美しい男だ
透き通るようなグリーンの瞳をしており、独特な形の大盾を持っている
男は大地に剣を突き立て、声を張り上げた

『我はアムリタの聖騎士が一人、名はオエングス・オディナ!』

エイン達が立ち止まり、彼の声に耳を傾ける
距離はおよそ40メートル、2つの一団は睨み合いのような状態だった





『ここより先は我が祖国、聖アムリタの地!通りたくば掟に従い、決闘をせよ!』




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