2016_04
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(Sun)14:35

3章 第8話

オリジナル小説 『カタクリズム』
3章 第8話 【神槍】

予定より大幅に増えてます・・・(´・ω・`)
このペースだとアムリタ編どうなってしまうん・・・。

続きを読むからどうぞー。








【神槍】







エイン達一行は牢に幽閉されていた
彼等の主張は聞いてもらえず、見張りには耳の不自由な者が任されている
何故見張りに耳の不自由な者を使わせたのか
これは"赤の獅子"の命令ではなく、更に上からの指示だ
アムリタ王位継承権第二位レンブラン・ノイシュタット・リ・アムリタによるものである

彼は明後日の誕生日に王位継承権第一位になる事が決まっている
アムリタでは20歳を迎えないと王位に就けない制度となっていた
そのため、今の彼は王位継承権は第二位という事になっている
現在の第一位はレノの姉マリアンヌ・フュンシュタット・リ・アムリタである
彼女は既に20歳を過ぎており、現段階では唯一王位継承権を持っていると言ってもいい
しかし、来月のレノとルアの誕生日を過ぎるとその権利は第三位へと変化する
王位継承権は第一位がレノとなり、第二位がルアとなるためである
条件を満たしている男児がいる場合はそちらが優先されるという訳だ


ここでアムリタという国の組織図を記載しておこう

まずトップに国王ヴァーテンベルグ・ヌルシュタット・リ・アムリタがいる
その下に今は亡き王妃クレーヴェ・フンダートシュタット・リ・アムリタがいた
次に長女マリアが続き、レノとルアといった具合に続いていく

王族の下には宰相(さいしょう)ボツダム・アーヘンがいる
彼は王の代役といった立場で、政治や軍事関連はほとんど彼が担当していると言ってもいい
王とは国の顔であり、民のため外交のために必要な存在、そういうものなのだ

続いて聖騎士団長達が横並びにいる
青の大鷲団長ディムナ・マックール、赤の獅子団長クー・セタンタ
そして緑の蛇団長レヴィ・コナハトの3名である

緑の蛇は青の大鷲や赤の獅子に比べると新しい騎士団だが
挙げた功績により青と赤の聖騎士団と同格の扱いを受けている
その功績とは大きく分けて2つある
1つ目は、2つの大きな戦争を無血勝利を収めた事である
ゾンビという死者の軍団を使い
その圧倒的な数で1人の犠牲者も出さず隣国との戦争を終わらせた
今では隣国とは和平が結ばれ、事実上戦勝国となっている
2つ目は、1つ目とも繋がるが、ゾンビ・・・死者の再利用である
これを実用的なものとした功績はアムリタにとって大きなものだった


これがアムリタという国である
赤の獅子団長クーに、皇子であるレノの命令を拒む権利は無かったのだ

「ディムナ達はどうしている」

「はっ!大人しくしております!」

「そうか・・・警戒を怠るな」

「はっ!」

赤の獅子の部下に命じ、クーは自室に戻る
右手に持つ赤い槍、神槍ゲイボルグを壁にそっと立てかけ
ふぅ~という大きなため息を1つ洩らして彼は椅子に腰を下ろす
クーは天井を見上げ考え事をしていた

あのオエングスを負かしたという男がいるという
それが事実だとしたらとんでもない化け物だ
そして、決闘決議により彼等は解放されるだろう
皇子の命令とは言え戦友であり親友であるディムナを牢へ入れるなど・・・チッ
最近のアムリタは何かがおかしい

クーは立ち上がり、ゲイボルグを手に取り目を瞑る・・・・

内から湧き上がる尋常ならざる力、それを肌で感じ取り、彼は心の中で目を開く
それはまるで瞼を閉じたまま目を開くような感覚だった

彼に見えているのは1つの光景
何時如何なる時でもこの光景だけが見えるのだ
それをクーは神の啓示と思っていた

その光景とは・・・

自分の腹が裂け臓物が飛び出しており、辺りは自分の血で赤く染まっている
顔を上げると、その先には一人の人影が見える
逆光により顔は見えないが、その人物を見上げ、クーは崩れ落ちる

いつもそこで終わってしまう光景だ
これが自分の最後なのだろうと彼は思っていた
何故この槍がこれを見せるのかは分からない
だが、自分には意味のある事なのだろうと確信していた

クーは悩んだり落ち込んだりするといつもこの光景を見ていた
普通なら自分の最後の場面など嫌でしかないだろう
だが、彼はこの最後の場面に辿り着くまで精一杯やれる事をやろうと決めていた
アムリタのために・・・・その決意が彼を元気づけ、精神を安定させる

本当の瞼を開き、彼はゲイボルグを壁にそっと立てかける

「本当に不思議な槍だな、お師匠様も大変なものを押し付けてくれる」





スカー・サハ、彼女はクーの師匠である
若き日のクーが戦場で死にかけ、数十の追っ手を全員殺し、迷い込んだ深い森
そこで出会った女性、足首まであろう長い黒髪
夜の月のような黄金の瞳、白蝋で出来たような滑らかな白い肌
身体に張り付くようなピッチリとした黒い革の拘束具のような服が
彼女のスタイルの良さを際立てる
年齢は20半ばといったところだろうか

追っ手と勘違いしたクーはスカーに槍を向け、渾身の突きを放つ
それを彼女は人差指のみでいなし、あっという間に懐まで滑り込む
そして、その人差指をクーの喉元へと突きつけ笑ったのだ

「ふふっ、お前さんなかなかやるのぅ」

「くっ・・・・殺せ!」

「あっはっはっは!わらわがお前さんを殺す理由がないのでな」

「追っ手ではない・・・のか・・・」

「追っ手とはお前さんが作り出した37の肉塊の事かえ?」

37、そんなに殺していたのか・・・そう思った瞬間、クーは気づく

「何故それを・・・見ていたのか・・・?」

「この森はわらわの領域、知らぬ事など無いわ」

「お前は・・・何者だ」

「わらわか?スカーという、ただの世捨て人じゃ」

こうしてクーとスカーは出会った
その後、深手を負っていたクーはスカーの作ってくれた薬により命を取り留め
スカーの強さに憧れ、彼女に弟子入りを申し出た
スカーはクーを気に入り、弟子にする事とした
そして、クーは知る事となる、スカーという人物の桁違いの力を・・・

助走もなしで20メートルはゆうに跳躍し
風よりも早く駆け、手刀でいとも簡単に大木を切り倒す

それだけではない、彼女は眠らないのだ
弟子入りしてから1年、一瞬たりとも彼女が眠っている姿は見た事がなかった
鈍感だと親友のディムナに笑われるクーだが流石に気づく
スカーが人間ではない事に・・・・

彼女の正体については敢えて聞かなかった
出会った時に彼女は世捨て人と言った
聞かれたくない過去の1つや2つあるだろう
恩人であり師である彼女に不快感を与えたくないクーは聞かなかったのだ
彼女が人間であるかどうかなど彼には関係ないのだから

「おい、弟子よ」

「はい、お師匠様」

「酒が飲みたい、買ってこい」

「またですか・・・飲みすぎは良くないですよ」

「えぇい!うるさいうるさいっ!飲みたいのじゃーーー!」

スカーという女性は時折このように子供のようになる
まるで駄々っ子だ、その力が普通であれば・・・
彼女が駄々をこねるだけで小さな山が半壊した事がある
なのでクーは逆らう事はできない、すぐに出かける準備をし酒を買いに行くのだ

3時間ほど行った場所にある小さな農村で酒を分けてもらう
対価としてスカーに持たされたどこかの国の金貨を置いてくる
明らかに過剰な金額を払っているが、それには口止め料も含まれているのだという
スカーがここで暮らしてることを口外する事なかれ、そういう取り決めらしい
急いで家へと戻ると、家の前で仁王立ちをしているスカーと出会す

「遅い、遅いぞ!お前さんを待つ間に可愛いおばあちゃんになるところだったぞ!」

「そんなには待たせていないでしょう、しかも自分で可愛いって」

「何を言う、わらわは可愛かろう」

「いや・・・美人ではあるでしょうけど・・・」

「なんじゃ?文句でもあるのかえ?」

スカーの黄金の瞳が怪しく煌く、その眼に背筋に冷たいものを感じ、クーは首を横に振った

「我が弟子は反抗期と見える、仕置が必要じゃな」

「そんなバカな」

「構えろ、クー」

スカーの眼は本気だ、それを察したクーは槍を手に取り、本気の殺意を向ける
そうしなければ間違いなく自分が死ぬからである

「今日は片手で勘弁してやる、ありがたく思うのじゃ」

「それは嬉しいですね」

内心全く嬉しくなんてない、全身から嫌な汗が溢れてくる
スカーは今までクーとの稽古で人差指以外使った事がないからだ
それが今日は片手を使うと言う、それはより死が近づいたという事だ

「おっと、そうじゃった、1つ忘れておったわ」

「何をですか?」

ふふっと小さく笑うスカーは自身の右の手の平を小さく傷つける
血は赤いんだ・・・クーはそんな事を思いながらその光景をじっと見ていた

スカーの手から溢れる血は中空に集まっていき、球体を形勢する
その血の球体にスカーが手を突っ込み、抜き出したのは1本の槍だった
不思議な事に槍を引き抜いた血の球体は一瞬で槍に吸い込まれるように吸収され
その槍、ゲイボルグは高い振動音のような音を放っていた

「これは魔槍ゲイボルグ」

「魔槍・・・・」

「お前さんにくれてやろう」

「っ!・・・いいのですか?」

「お前さんには才能がない、だからこれで少しでも生きるのじゃ」

才能がない、その一言が胸に刺さった
確かにスカーからしたら才能のないゴミ以下の存在でだろう
だが、それは普通の人間なら全てそうなるのではないか?
誰もが貴女のような化け物ではないのだから・・・

「いいか、クーよ、よく聞くのじゃ」

「はい、お師匠様」

「その槍の力は使うでないぞ、才能の無いお前さんでは身が持たん」

「槍を使うなと?どういう事ですか?」

「違う、そうは言っておらん、槍の力を使うなと言ったのじゃ」

「力?ですか」

「そうじゃ、その槍には山をも貫く力がある
 だが、それは使ってはならない、分かるかの?お前さんが死ぬからじゃ」

「はい・・・」

「いいな、使うでないぞ」

「はい」

「では、仕置を始めるとしようかの、槍を受け取るのじゃ」

スカーから受け取ったゲイボルグは握った瞬間全身の血が逆流するような力を感じた
とんでもない武器だ、人間の域に無い代物だ・・・これならあるいは!
クーは手に握るゲイボルグに力を込め、目の前に迫る死と対峙していた

「いくぞ、決死の覚悟でかかってこい」

スカーの重心が一瞬下がったと思った時、彼女の姿が消える
辺りを見渡すが彼女の姿は見えない、その代わり、空気が裂ける音が響いていた

キィィィィィン

デタラメすぎる・・・こんなスピード、どうやってついていけばいいのだ
その時、クーは視界に赤い筋が見えるのに気がついた
なんだこの赤い筋は・・・空中に漂っているようだが
本当に何となくだった、何となくゲイボルグをその筋に沿って動かしていく
すると、激しい衝撃と何かがぶつかり合う音が響いた

ガキィィィンッ!!

「ほほぅ、もうそこまで使いこなしたか、やるではないか」

ゲイボルグとスカーの爪がぶつかり火花を散らす
スカーの顔は口角が上がり、とても嬉しそうだった

「次で終わらしてやる」

スカーが再び消え、辺りからは空気の裂ける音が鳴り響く
クーは精神を集中させ、次の一撃に全てを賭けるつもりだった
そして再び赤い筋が姿を現す・・・ゆらゆらと揺らめくそれに槍を這わせ
その先に来るであろう存在、スカーへと渾身の一撃を放つ

ギィィィンッ!!

再びゲイボルグとスカーの爪が交差する
しかし、スカーが腕を払うと、その桁違いの力に負け、槍を手放してしまう
空中で何回転もしたゲイボルグは地面へと落ち、大地に突き刺さる
弾かれた格好で固まっているクーの目の前に、スカーの手が見えた
刹那、彼の身体は後方に15メートルほど吹き飛ぶ事となる

何が起きたのか一切分からなかった

答えはとても簡単なものだ
スカーはデコピンをしただけなのだ
クーの額当ては砕け、おでこからは血が吹き出す
気を失ったクーを部屋へと運び、スカーは薬を塗ってやるのだった
2日後に目を覚ましたクーは、突如スカーに言われる

「お前さん、もう帰れ、邪魔じゃ」

「なっ!?お師匠様!破門という事ですか!!」

「あぁ、そうじゃそうじゃ、はよどっか行ってしまえ」

「そんな・・・」

「二度と来るな、そしてわらわの名も口にするな、分かったな?」

「・・・・」

「分かったな!」

殺気、今まで向けられた事がないほど強大なものだ
歯がガチガチと音を立て、肩は震える

「は、はい・・」

こうしてクーは森を後にした
1年ぶりに国に帰ると、彼は戦死扱いになっており
誰もが幽霊でも見たかのような顔で彼を出迎えた

その後、クーは魔槍ゲイボルグを使い、数々の武功を挙げる
そして、彼は言った・・・これは魔槍ではない、我が神から頂いた神槍だと




遥か昔の思い出に浸っていたクーは槍を手に部屋を後にする
ここは城の右隣、東にあたる位置にある赤の獅子の宿舎だ
西には緑の蛇、北には青の大鷲の宿舎がある
城を囲むように青、赤、緑の聖騎士団の宿舎が並んでいた

宿舎から出たクーは城門へと足を進める
すると、門兵が慌ただしく駆け回っているのが目に付いた

「おい、どうした」

「はっ!見張り台からの伝令で第二皇子が向かって来ていると」

「ルーゼンバーグ皇子か・・・開門の準備をしろ」

「はっ!」

一応出迎えた方がいいか、来ると知ってしまったからな
クーはルアの事があまり好きではない
日の高いうちから酒を浴びるように飲み、女を買い、自堕落な生活を送っている
王族としての誇りが無いのだろう
こんな事では民に示しがつかないのだが、誰も文句など言えないので放置されている

「せめてレンブラン皇子のように逞しくなってくだされば・・・」

いや、それも言い過ぎか・・・あの皇子はあの皇子で問題はある
そんな事を考えていると、大きな城門が低い音を立てて開いていく
そして、皆が背筋を伸ばし腰から上体を深く折り曲げ、真下よりやや前方に視線を落とす
斜め45度に腰を折った最敬礼だ

門が開き切り、ルアがよしとするまで視線を落としていると
足音が一人でない事に気がつく
視界の隅で誰がいるのかを確認しようとクーは2~3度だけ頭を上げる
すると、そこには珍妙な連中が着いてきていた
光すら吸い込みそうな黒い鎧の男と半亜人の二人
なんだこの連中は・・・また皇子がくだらない事を始めないといいが・・・

2年ほど前にルアが城に娼婦達を呼んで宴会を開いた事がある
その時のルアは王ヴァーテンベルグにこっぴどく怒られたものだ

「おっと、頭上げていいよ」

ルアの一声により全員が頭を上げ、彼等を見る

「ルーゼンバーグ皇子、そちらの方々は・・・」

「僕の客人、そんな事よりも彼等の仲間が来たはずだけど?」

「仲間・・・ですか?」

「あぁ、なんて名前の人なのかな」

「エイン・トール・ヴァンレン卿、ミラ・ウル・ラシュフォード卿
 死の巫女リリム・ケルト、地の巫女マルロ・ノル・ドルラード
 火の巫女イエル・エフ・リート、水の巫女マナ・マクリール、その他数名いたはずですが」

『なっ!!』

ルアが大声を上げ、赤の獅子の一同が息を飲む

巫女・・・だと?それに爵位持ちだと?まさか先日幽閉した者達がそうだと言うのか・・・
いや、流石に嘘だろう、巫女などいるはずもない
しかも4人などおかしいではないか、そうだ事実であるはずがない

「シルト殿、それは真か」

「ん?嘘を言う意味が無いと思いますけど」

当然のように彼は言う、ルアは人の嘘を見抜くのは得意な方だ
そして、ルアの経験が答えを言う・・・彼は嘘をついていない、と

「巫女様達はここを訪れたのか、クー・セタンタ団長」

「はっ!巫女かどうかは分かりかねますが・・・先日捕らえた者なら・・・」

「捕らえた・・・?何故だ」

「はっ!ルーゼンバーグ皇子の兄上、レンブラン皇子の命に御座います」

「レノが・・・ふむ」

ルーゼンバーグが顎に手を当て考え込んでいる
そもそもレンブランがこんな命令を出している事にも違和感はあったのだ
皇子の命令ならばと従ったが、全くもって理解は出来なかった
親友であり、良きライバルであるディムナ達までも幽閉するなど・・・

「実は・・・青の大鷲も幽閉しております」

「なに!?何故だ!それも兄上の命令なのか?」

「はっ!」

「血迷ったか、レノ・・・・すぐに釈放しろ!国が割るぞ!」

ルアは焦っていた、この国を支える3本の柱の1本を敵に回すような行動だったからだ
そして、3本の柱の中でも一番古く、一番武功を上げている青の大鷲を、だ
この国の根幹から崩れる可能性があるぞ!レノは何をやっているんだ

クーは驚いていた、あのルーゼンバーグが的確な指示を出している
ただの遊び人と思っていたが、芯の部分は腐っていないのかもしれんな

「はっ!直ちに!」

クーが部下へ命令を下し、青の大鷲とエイン達一行が解放される事となった



エイン達一行が解放され、城門へと集まっている

「やっと分かってくれたか」

ディムナがクーの元へと行き、肩に手を置いて言う

「いや、実はルーゼンバーグ皇子の命でお前達を解放したのだ」

「ほぅ、あの皇子がな・・・」

二人の団長が一人の皇子を見る、遊び人と言われ、バカだと罵られる皇子を
すると、その問題の皇子が膝をついて頭を垂れるではないか

「な、なんだと!」

「皇子!お止めください!!」

二人の団長が必死に皇子を止めに入る・・・が
ルアが二人を睨み、大きな声でこう言った

『貴様等、頭が高いぞ!巫女様の御前であるぞ!!』

ルアの普段見せない姿と声に2つの聖騎士団全員の動きが止まる
そして、団長であるディムナとクーに続き、全員が地に膝をつけ、頭を垂れた

アムリタという国では巫女とは神に最も近い存在、伝説上の人物なのだ
神の代弁者とも言えるその存在は、人間の王族ごときでは手の届かない存在なのだ

「巫女様・・・御無礼をお許しいただきたい・・・何卒」

ルアが真剣な表情で頭を下げる、その顔には冷や汗のようなものが光っていた

「いえ、お気になさらずに、頭を上げてください」

リリムの綺麗な声が響き、一同が頭を上げた

「失礼ですが、本当に巫女様なのでしょうか?私達は初めてお会いするもので」

何か証拠のようなものがあれば、とルアは付け足す

「証拠・・・ですか・・・どしましょう、エイン」

「そうですね・・・究極魔法を見せれば納得いただけるのでは?」

「なら、私の出番さね」

イエルが懐から溶焔の宝玉を取り出し、頭上に掲げる

「我、汝の手なり、我、汝の足なり・・・」

イエルを中心に巨大な魔法陣が現出し、不思議な文字が中空を漂う

「我の行く手を拒む者に、灰塵と化す力を・・・」

イエルが目を見開くと、彼女は空を見上げる
その場にいる誰もが空を見上げ、そして目を疑った

そこにあったのは巨大な火球だ

直径20メートルはあるだろうか、赤い炎がゆらゆらと揺らめき
上空から熱の雨を降らせていた

「っ・・・っとまぁ、こんな感じさね」

イエルが宝玉を下ろすと巨大な火球は一瞬で消え失せる

間違いない、本物の巫女だ
この場にいた誰もがそう思った
あんな規模の魔法は見た事がない、次元が違うと言ってもいい

「人があんなものを作り出せるのか・・・巫女とはそこまでの存在なのか・・・」

2つの聖騎士団の誰もが恐怖した
とんでもない相手を敵に回すところだった、と

「あれ?マナさんは?」

サラがマナがいない事に気づき、リリム達に聞いている
それにはマルロが答えた

「マナさんはここには用が無いとどこかへ行ってしまいました」

「そっかー、マナさんらしいなぁ」

サラはシャルルとマナに似た感覚を覚えていた
そのため、彼女にとっても親近感の湧く人物なのだ

「これで信じていただけたでしょうか?」

「はい、もちろんです・・・疑うような真似をし、申し訳ありませんでした」

ルアが再び頭を垂れる、それに習い聖騎士団一同が頭を垂れた

「あわわわ、頭を上げてくださ~い」

慌てるリリムは巫女という恐ろしい存在とは到底思えない少女だった

先程、究極魔法を途中でやめたイエルは片膝をつき、肩で息をしている
プララーが回復魔法をかけていた

「それは・・・まさか再生魔法ですか?」

「違うわよぉ~、こ・れ・は、生の魔法☆」

プララーが即答すると、ディムナが聞いてくる

「生の魔法とはかすり傷を治す程度しか出来ないはずですが・・・?」

「骨折程度ならすぐに治せるわよん?」

「なんと・・・プララー殿も巫女様なのですか?」

「まさか、私は普通のお・ん・な☆」

「そ、そうですか」

ディムナは半歩後ろへ下がりつつ続ける

「この世界の魔法は貴女方が使うものと比べたら気持ち程度の効果しかありません」

「へぇ・・・ラルアース人特有なのかしら?」

イエルの治療を続けながらプララーは考え込む
少し離れた位置でクーがオエングスに詰め寄っている

「お前の負けた相手とは、あの黒い鎧の男か?」

「はい、彼・・・シルトは神器モラルタの一撃を簡単に弾き返しました」

「そうか、巫女といい、神器を弾くといい・・・なんて無茶苦茶な連中だ」

「神の使徒ならば当然かと思います」

「っ!彼等が神の使徒だと言うのか」

「はい、間違いございません」

「我等は何と愚かな事をしてしまったのだ・・・神の使徒、それに巫女までも幽閉するなど」

「ですからあの時に言ったではありませんか!」

「戯言と流しておった、すまぬな、オエングスよ」

そんなやり取りが行われている場所から少し離れた位置にいるミラは
皇子、ルーゼンバーグに膝をつき嘆願する

「初めましてアムリタの皇子
 わたくしはドラスリア王国ラシュフォード家が三女
 ミラ・ウル・ラシュフォードですわ、以後お見知りおきを」

「これはこれはご丁寧に・・・
 僕はルーゼンバーグ・アインシュタット・リ・アムリタ、この国の皇子だ」

とても綺麗な女性、それがルアのミラに対する第一印象だ

「不躾で申し訳ありませんが、王との謁見を願います」

「目的は?」

「はい、ラルアースとアムリタの和平を望んでおります」

「なるほど、平和の使者という訳ですね」

見た目に騙されそうになるが、この女性は頭が切れそうだな
ルアの中でミラという人物の評価を修正していく

「では、僕から父王に嘆願してみましょう」

「有難う御座います」

「ですが、僕はその場にご同行致しませんよ」

「?・・何故ですの?」

「酒が飲みたいので、政は僕には向かないのさ」

「そう・・・ですの、分かりましたわ」

ミラのルアに対する第一印象は最悪なものだ
皇子たる者が何て事を言い出すのだ、と
上がこんなだから国が歪むのだ、と




そして、一同は王との謁見のため城内へと案内される
もちろん青の大鷲と赤の獅子も同行している

死者の溢れる国、陰謀渦巻く聖アムリタ城
ついにエイン達は王との謁見が出来るところまで来た
そこで彼等を待つ者とは・・・・


腐敗したこの国の真実を彼等はまだ知らない



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C.O.M.M.E.N.T

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