2015_11
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(Tue)00:18

1章 第6話

オリジナル小説 『カタクリズム』
1章 第6話 【神】

戦闘以外を書くのはあまり得意ではありません。
でもこの話は何か書いてて楽しかったです。

続きを読むからどうぞーい。











【神】






ドラスリア、カナラン、ネネモリの一行は風の聖域へとたどり着いていた
しかしそこにあったのは巨大な風の壁、竜巻である
その場から一切動かず、しかし止まる事はなく発生し続けている
この竜巻は不思議な事に風を感じさせず、草木は揺れてすらいない
まるで結界、その竜巻だけ別の空間のようなそんな気さえしてくる

先ほどクガネが小石を投じ、その石は弾かれたり吹き飛ばされたりする事なく
粉微塵に粉砕され、その姿を消した
一行は辿り着いたは良いがその場で足踏みしている状態だった

「どうしますか」

カナランの生の魔法使いエール・ボア・エンジュが困った顔で尋ねる
誰もそれに答えない、いや、答える事ができずにいた
沈黙・・・辺りには竜巻が鳴らすゴォォという音しかしない
しびれを切らした一人が口を開く、神殿盾騎士団長ガゼム・アン・ダイトだ

「どうもこうも、これではどうしようもないではないか」

当たり前の事を言う、そんな事は誰もが分かっていた

「しかし、このままじゃ埒が明かないね」

火の巫女イエル・エフ・リートが言う、それに数人が頷いた
そこで一人の青年が前へと出る、エイン・トール・ヴァンレンだ
彼は無言で竜巻の3メートル前まで行き、腕を組み悩んでいる
一同がそんな彼の行動を横目で見ながらどうしたらいいか考えていた
エインの横へと進む女性がいる、死の巫女リリム・ケルトだ
彼の横まで来て、耳打ちする

「神様を呼んでみたら開けてくれませんかね?」

少しいたずらっぽく、ふふっと笑いながら彼女は言う
そんな冗談に、なるほど!とポンと手を叩く彼にリリムは驚く
そしてエインは2歩ほど足を進める
そんなエインの行動にあわあわとするリリムだった
何やってんだ、皆がエインの事を見ていた・・・・そして



『神よ!いるなら我等を入れていただきたい!!』



竜巻が放つ音よりも遥かに大きな声でエインは叫ぶ
一同はそんな光景をぽかーんと眺め、リリムは慌てふためいていた


そして、突如竜巻は消えた


全員が、え?という顔をした、エイン以外の全員がである
エインが振り向き、リリムのおかげだ、と笑顔を見せている
一番驚いていたのは言った本人である彼女だ
まさか本当にそんな事で竜巻がなくなってしまうなんて
目をまんまるに開き、口は開いたまま放心していた

竜巻が消えた事により姿を現したのはクリスタルの祭壇だった
大きさは直径30メートルほどになる
地面や壁と思われる場所も全てクリスタルで出来ており、光を反射し虹色にも見える
その壁は水面に水滴を垂らし跳ねた時にできるような王冠のような形をしている
屋根はなく、平らなクリスタルの地面があるのみだった
恐る恐るクリスタルの地面に足をつけ、ゆっくりと進んで行く

「・・・・な、何もいないではないか」

ガゼムが辺りをキョロキョロと見渡すが神らしき姿は見えない
そこで地の巫女マルロ・ノル・ドルラードが指をさし口を開いた

「みなさん!中央を見てください!」

全員の視線がクリスタルの祭壇と思われる場所の中央へと向く
皆が何があるんだと見ているが、特に変わったものは・・・・・あった

そこに浮いていたのは綿毛だった

15センチほどの綿毛で、下には黒い種らしき物がついている
タンポポの綿毛を巨大化したようなものだ
高さ3メートルくらいの所にふわふわと浮いている

「まさか・・・・これが神とでも言うのか・・?」

ガゼムがそんな馬鹿な事があるか、といった顔をしている
カナランで信仰してる神の像はこんな形ではない
人を模した形をしており、風の神は美しい女性の像なのだ
しかし、巫女であるイエル、マルロ、リリムはそれが神であると確信していた
そんな彼女等の表情を読み取り、全員が綿毛へと視線を向ける
そして、長い沈黙が流れる・・・


《・・・・人・・・何故・・・・来た・・・》


声が響く、正確には脳内に直接響く
巫女以外の全ての者が驚き、その不思議な声に恐れおののく
だが巫女達は何故か笑顔になっていた
それは彼女達が神託を受けた時に聴いた声に似ていたからだ

「神よ、風の神よ・・・私達は死が消えた原因を知りたいのです」

リリムが口を開き、その美しい声で綿毛・・風の神へと語りかける

《・・・理由・・・・求む・・・》

「このままではラルアースは滅びます、私達はそれを止めたいのです」

リリムは力強く、そして決意の篭った声で言う

「死の神が原因なのであれば、赴き、死を戻していただきたいのです」

静寂・・・・それはとても長かった
この独特な空間には何か重みのようなものを感じる
それが時間を長く感じさせているのかは分からないが、その静寂はひどく長く感じた

《・・・・・承諾・・・》

皆の表情がパッと明るくなった気がした
リリムはエインを見て笑顔になる、彼もそれに笑顔で返した、その時

《・・・・死・・・神・・・・衰退・・・》

リリムは膝から崩れ落ち、俯き、わなわなと震えている
そんな彼女にエインが駆け寄り、肩を支える
彼女は、そんな・・嘘・・・やっぱり・・と小さな声でぶつぶつと言っていた
そして、神の言葉は続く

《・・・・死・・・神・・・・いずれ・・・消ゆ・・・》

リリムが顔を上げ、神を見上げる
その瞳からは涙が溢れ、絶望の表情をしている
震える肩に置いた手に軽く力を込め、エインも神を見上げた

「死の神が・・・消える・・・だと」

リヨンが嘘だと言わんばかりに数歩下がり、バランスを崩し、尻もちをつく
そして、ガゼム、ダリル、エールが膝から崩れ落ち、涙を流す
暗い空気が流れ、自然と俯く者が増えていく

《・・・・救う・・・方法・・・存在・・・》

全員が顔を上げ、神を見上げた
リリムの瞳には僅かに希望の光が宿る

「お教えください!その方法を!」

リリムの悲願の叫びが響く
その手はまさに祈るような形で組まれ、皮膚に爪が刺さるくらいの力が込められている

《・・・・四神・・・・巡り・・・力・・・・・乞え・・・》

四神、すなわち火・水・風・土の神の事である
カナランの教えでも生と死の神は別扱いで語られる事がよくあるくらいだった
神が四神と言うくらいだ、その説は正しかったのだろう

《・・・・四神・・・力・・得・・・・生・・死・・・聖域・・・行け・・・》

そこでガゼムが口を開いた

「神よ!偉大なる風の神よ!無知な我等に知恵を授けください
 我等は生と死の神の聖域の場所を知らないのです、どうか知恵を!」

膝をつき、手を組み、祈るようにカゼムは涙を流しながら教えを乞う
そんなガゼムの願いは聞き届けられた

《・・・・生・・・死・・・・神・・・・聖域・・・・・・・生・・泉・・・死・・・谷・・・・先・・・》

おぉ、神よ、とガゼムが涙を流して感動している
ダリルやエールも涙を流し、神を見上げていた

《・・・・力・・・・譲渡・・・》

その神の声が脳内に響いた瞬間、辺りは眩い光に包まれる
目をあける事が困難なくらいの光に、一同は眼を手で覆い、顔をしかめた
ふっと光が消え、一同は目にする・・・こぶし大の玉である
深い深い緑色をしており、透き通っているようで
その奥には深淵に続きそうな闇が見える
それが神の前に浮かび、ゆっくりとリリムの手元へと降りてくる

《・・・・風・・・力・・・託す・・・》

リリムは大切そうに胸に抱き、涙を流して頭を下げる

「ありがとうございます、ありがとうございます、ありがとうございます」

頭をクリスタルの地面にこすりつけ、何度も何度も感謝の言葉を綴る
そんな彼女をエインは見ている事しかできなかった
その時、風の神はふわっと舞い上がる

《・・・人・・・・去れ・・・・》

突如、風の神を中心に物凄い突風が発生する
足で踏ん張る事などできないほどの突風に全員が転がり、吹き飛ばされ、追い出される
竜巻があった場所より遠くまで吹き飛ばされ、風は止まった
そして、再び竜巻が発生し、幻想的なクリスタルの祭壇は見えなくなった




一行は呆然としていた
神との対峙は彼等の中で大きな変化をもたらした
予想外の見た目ではあったが、姿など些細な問題だった
その力は人智を超え、絶対者である事を物語っていた

カナランのガゼム、ダリル、エールは神との対峙に涙を流し、膝をついたままだ
クガネは人類ではどうする事もできない存在を目の当たりにし、舌打ちをする
ネネモリのリヨンは死の神が助かる可能性を知り、感動のあまり号泣している
巫女達は微笑みあっており、その瞳は潤んでいるようだ
エインはそんなリリムを眺め、もう大丈夫そうだと安堵する
そこへミラが歩いて来た

「話があるわ、来なさい」

顎をしゃくり、着いてこいと合図する

「はっ」

エインは彼女に付き従い、一行から少し離れた位置を取る
そこにはイシュタールもいた

「ミラ様、話とは・・・」

イシュタールが口を開きかけるが、それをミラが手で制す

「貴方達はこれでいいのかしら?」

「これで、とは?」

イシュタールがミラの言葉の意味が分からず聞き返す
エインも分かっていない様子だったので
ミラが面倒そうに、分かってないの?とでも言いたげに口を開く

「神より託された、あの宝玉よ」

イシュタールとエインはお互い顔を見合わせ、さっぱり分からぬ様子だ
はぁ、と彼等に分かるようにため息をし、言葉を続ける

「我等がドラスリア王国が所持するべきではないかしら」

エインの目が開かれる
イシュタールはニヤりとし、数度頷いていた
イシュタールの態度にミラが満足したように頷き、それにエインが反論する

「待ってください!かの宝玉は死の巫女様が神より託されたものです
 それを我等が奪うなどできません」

ミラの冷たく鋭い視線がエインへ向けられる

「奪うだなんて心外ね、わたくしは宝玉を守るために言っているのよ」

あの子はもう力が無いのでしょう?と続けるミラにエインが食らいつく

「しかし、神は彼女に託しました!彼女こそがそれを持つべき人なのでは?」

「まぁまぁ・・エイン君、熱くならずに」

イシュタールが間に入ってくる
彼はミラへと身体を向け、自身の考えを口にする

「ミラ様はこうおっしゃりたいのですよね
 死の巫女に預けていては奪われる危険性があると」

「えぇ、確かに巫女の力は凄まじいですわ
 それでも身体能力で言ったらわたくしの方が遥かに上
 家畜共は信用できませんし、わたくしが所持した方が安全だと思いますわ」

流石はミラ様、とおだててくるイシュタールに少し苛立つが
彼女は今回の任、世界救済の任を重く受け止めていた
そして、そこでの功績を上げようと必死だったのだ
神より託されし至宝は自分達ドラスリアが守りきった、それが欲しいのかもしれない
そんな貴族の考えにエインは嫌気がさしていた

「ミラ様、それには首を縦に振れません」

エインはハッキリと強い意思を込めて言う
そんな彼の気迫に一瞬たじろぐが、ミラは捲し立てる

「では、貴方は宝玉が奪われてもいいと言うの!
 それではこの旅は失敗してしまうのよ!
 このままでは世界に命が溢れ、虫が蔓延り、滅びますのよ!
 何の力もない巫女に預けるなんて愚策もいいところですわ!」

「それでも、神は彼女に託しました
 自分はそれに従いたいと思っております」

エインは譲らなかった
そんな彼の頑なな態度にミラはため息を洩らす
どうやっても彼の意思は変わらないだろう、そう思いこれ以上言うのをやめる

「エイン君、それは甘いのではないかね」

そう言うイシュタールにエインは鋭い目つきを向ける

「・・・死の巫女は今は何の力もない少女だ
 そんな人物に預ける事がどれほど愚かか、分からない訳ではあるまい?」

「俺・・自分が守ります」

エインの意思は硬い、そして彼の実力を知るイシュタールに反論はできなかった
この若造が!心の中でエインを殴りつける妄想をし、気分を晴らす
そんな妄想に浸っていると、エインはその場を去って行く

「まったく・・・困った若者ですね」

イシュタールがミラの機嫌を取ろうとそんな事を言う
この男のこういう態度が気に入らないのだ
エインは自分の意見に反論しているが、自身の意思を明確に表現しているだけだ
それはミラにとって新鮮であり、好感を得るものだった
しかし、自身の考えが理解されない事に苛立っていた




リリムは神より託された緑色の玉を撫で、眺めていた
その深い緑の先にある闇には底知れない力を感じ、心が暖かくなるような気がする
これがあれば死の神を救える、それは彼女にとって希望の玉だった
そこへエインが真っ直ぐに歩いてくる、その顔は真剣なものだ
どうしたのかと不思議に思っていると彼は早足になり彼女の元へと来る

「リリム、話がある」

「え?・・・はい」

凄く真剣な表情、鋭い眼差し、僅かにつり上がった眉
硬く閉じられた口、そんな彼の表情に気圧される

「俺は、何があろうと君を守る」

「え?」

突然のことに理解できず言葉が出ない
少し間を置きリリムの顔は真っ赤に染まる

『えええええええええ!?』

彼女は大声を出す、それに何人かが反応するが、またアイツ等かと視線を逸らす
リリムは慌てふためき、緑色の宝玉を落としそうになる
何とか宝玉を掴み、しっかりとそのふくよかな胸に抱き、ほっとため息を洩らし
そしてエインの顔を見てまた慌てる

「え、あの、その、それって・・!」

リリムが手足をバタバタさせ、慌てていると真剣な表情のままのエインが口を開く

「俺から離れないでくれ」

「・・・・・」

リリムの思考は完全に停止した・・いや、ショートしたというべきか
顔だけではなく耳や手足など、露出してる部分は全て赤く染まり
口から煙でも吐きそうな感じで停止している
そんなリリムの様子にエインは何かがおかしいぞ?と考え込む

「リ、リリム?大丈夫だろうか」

「・・・・は、ひゃい!」

大丈夫ではなさそうである

「とにかく、君と神から託された宝玉は俺が守る、だから安心してほしい」

そう言い、エインはいつもの笑顔になる
が・・・・そっちかー、とリリムは肩を落とすのであった

そして、一同はラーズの面々と合流するため一度ナーテアへと戻る事にした







少し時間を戻そう


ラーズの一団は水の聖域へと辿り着いていた

洞窟を抜けたというより広い場所へ出ただけとも言える
辺りは壁に囲まれ、天井には大穴が空いており、陽の光が入っている
湿度が高いせいか天井からは水がポタポタと垂れていた
そして、目の前にあるのは重力を無視したドーム状の水の塊
シャルルが水の壁に触れようと手を伸ばした時、後ろからジーンが声をかける

「待って、触れない方がいい」

振り向いたシャルルが不思議そうな顔をしてると、ジーンは上を指差す
シャルルは上を見る、そこからはポタポタと水が垂れている
それがドームに落ち、弾けたり飲み込まれたりする事なく消滅していた
まるで薄い膜があり、そこに触れると消滅するようであった
それに気づいたシャルルの尻尾がブワッと膨らむ、そして一歩飛び退く

「なるほど、これは厄介だな」

ロイは顎に手をやり、まじまじと眺めている
どうしたものかと考えていると、ラピとサラが話しているのが聞こえる

「この中にはお魚いるのかなー?」

「お魚いたらいいねー」

ねー、と二人で言っている、そこにシャルルも加わりワイワイ騒ぎ出す
呑気な奴らだ・・・ロイは若干苛つき、再び思考を始める
そこで、ドームをぐるっと一周してきたシルトにジーンが声をかける

「どうだった?」

「ダメだね、入口っぽいのは無いかも」

「そっか、困ったね」

ジーンは全然困ってなさそうにしてる、どうしたもんかなーとシルトは悩んだ
そこで1つ閃いた

「何か開く呪文があるとか?」

「呪文かぁ・・・・私は知らないなぁ」

ジーンが知らないなら他の皆も知らないだろう、シルトは更に悩む

「どうしたもんかなぁ・・・」

困り果てたシルトにシャルルとラピとサラが歩み寄る
そんな三人にシルトが聞いた

「どったの?」

「今三人で話してて、入れないなら呼べばいいんじゃない?って」

「なるほど、いいかもね」

シルトはドームへと向きを変え、すーっと息を吸い込んだところで

『お魚さーん!いーーれーーてーーーーー!!』

シャルルが大声を上げた
壁に反響し、洞窟の方で木霊のように繰り返し聞こえる
吸い込んだ行き場のない息をハァと吐き出し、シルトはシャルルをジト目で見ている
そんなシルトにシャルルは、にししと笑いかけていた


そして、水が動き出す


「え?まじ?」

シルトが素っ頓狂な声をあげる

「あはは!やっぱりお魚さんいるんだー!」

とシャルルとラピとサラが爆笑している
シルトは何だかなーと頭を掻いており、ジーンはふふっと笑っている
そんな光景をロイはポカーンと口をあけてた

水はうねり、形を変え、シュッと集まるように一瞬で消える
視界は広がり、風の聖域と同じクリスタルの祭壇が姿を現す

「おおー、綺麗だねぇ」

シルトが唸っている、それに対し4人はうんうんと頷いている
ロイだけはポカーンとしままだ

「これクリスタル?だよね?」

「多分そうだねー」

ジーンが即答し、シルトはいくらになるだろうと皮算用を始める
そこでロイは意識を取り戻し、なんて事を話してるんだと怒り始める

「ここは神の聖域だぞ!もっと真面目にやらないか!」

「いいんじゃないかな、それで中に入れたわけだし」

ジーンの言葉に反論はできない、むぅと唸り黙る
一同は足を進め、中央付近まで移動した

「かみさまどこかな?」

ラピが辺りを見渡しながら言う

「いないね、出かけてるのかな?」

シャルルが答える
そんな呑気な会話をしていると、どこからともなく声が響く


《・・人よ・・・何しに来た・・・》


脳内に直接響く声がした
シャルルとサラの尻尾はブワッと膨らみ、耳はピクピクと動いている
シルト、ジーン、ラピ、ロイも辺りをキョロキョロ見渡し、臨戦態勢に入る
そこで目に飛び込んできたのは・・・


赤く小さなひらひらとした小さな魚だった


地上から4メートル辺りをふわふわと泳ぐように飛ぶ3センチほどの赤い魚
空中を泳いでいる事以外は、大きさも何もかも金魚のそれだった
全員がポカーンとする
シャルルの肩が僅かに震えだす


『あはは!ホントにお魚さんいたー!』


彼女は指を差し大爆笑である
それに続き、ラピとサラもあははと爆笑する
ジーンも我慢できないようでお腹を抱え肩を震わせている
シルトも笑い、目には涙すら浮かべていた
一人、ロイだけはお前ら・・・という表情でハーフブリードを見ていた

《・・・何しに来た・・・》

水の神は再び問う、それに慌てたロイが答える

「神よ!申し訳ない!我等は世界から死が消えた原因を調べに来たのです!」

しばしの沈黙・・・ロイは唾をごくりと飲み込み、額からは汗が流れる

《・・・そうか・・・知って何とする・・・》

「それを解決したいと考えております!」

ロイは必死に答える
ハーフブリードの面々は笑いを堪えており、時折ぷぷっと声が洩れる
しばらく返事はなかった、1分くらいだろうか、そして再び神の言葉が届く

《・・・・仲間が・・・風神へ向かっておるのだな・・・》

全員が驚き、目を見開く、なぜ知ってる・・・そういった表情だ

《・・・よかろう・・・・これを持っていけ・・・》

そして辺りは光に包まれる
目をあけている事が困難になり、手で隠すように光を遮る
少しして光はおさまり、水の神の前に深い青色の玉が浮いているのが見える
それはゆっくりとシャルルの手の平へと吸い込まれるように降りてきた

《・・それを使い・・・死の神を助けよ・・・》

シャルルはその玉を強く握りしめ、1度大きく頷く

「わかった!」

太陽のような笑顔でそれに答えた
水の神はふわりと中空を舞い、ジーンの頭の上へと来る

《・・・お主・・・・精霊と繋がっているな・・・》

ジーンが驚き、目を見開く

「は、はい」

《・・・・その力・・・ゆめゆめ気を付けよ・・・》

彼女は分かったような分からないような顔をし

「はい、わかりました」

とだけ答えた
しばらく静寂が支配し、ふわっと水の神が浮き上がる

《・・・・人よ・・・去るがいい・・・・》

そう言い放った直後、水の神より大量の水が溢れ出る
その激流に全員が押し流される、そして洞窟の壁付近で止まった
直後にドーム状の水が形成され、再び中は見えなくなった



「もー、びしょ濡れだよー」

サラが嘆いている、それにシャルルもひどいよね!と同意している

「一旦服を乾かさないとダメだな、戻るか」

シルトがそう言い、全員が頷いた
洞窟を早足で抜け、入口の消し炭になったケートゥスの一部をバキッと砕き持って行く
まだ僅かに火がくすぶっているそれを使い、火を起こす
徐々にパキパキと焚き火の弾ける音が聞こえ、火の暖かさが全員を包む

「で、二人はいつまでそこにいるの?」

サラがジト目でシルトとロイを睨む

「ん?」

ロイが不思議そうな顔をする

「服を脱いで乾かしたいんですけど」

あぁ、とロイは納得し、シルトと二人で岩陰へと移動する
まだ全然乾いてなくて寒い、そこで彼はシルトに言う

「・・・・君も大変だな」

「・・・・分かってくれますか」

男二人で、ははっと笑い合い、くしゅんっとくしゃみをする

その日はそこで野営となり、次の日にはナーテアへ帰還するため移動を開始した









数日後、ドラスリア、カナラン、ネネモリの一団はナーテアへと到着していた
アーガ邸にて待機しており、半日遅れでラーズの一団が到着する
ひさしぶりーなどゆるい挨拶をしているハーフブリードの面々
その片隅でロイとガゼムが二人で話している、情報交換をしているようだ

そしてその日はアーガ家のふるまいで宴が開かれた

肉や魚やスープなど豪華な料理が並び、ワインやエールなど高い酒が並ぶ
色々な新鮮な果物が山のように積まれ、色鮮やかな色彩を放っている

「これおいしい!!」

「うんうん、こっちの果物も美味しいよ」

「この肉すげー、やわらかっ!」

「アイスないのかな」

「お酒どこー」

「ラピ、一応見た目は子供なんだから・・・」

ハーフブリードは相変わらずの自由さで騒いでいる
そんな光景を見て、リリムは笑っていた
彼女は懐のポケットに入れてある玉を取り出す
その緑色の宝玉を恋人へ向けるような眼差しで眺め、優しく撫でている
それに気づいたシャルルが歩み寄ってくる

「んっ」

彼女が肉を頬張りながら差し出してきたのは深い青色の玉だった

「え?」

「ほうほっ」

リリムが、え?と再び聞くと、彼女は口に含んでいる肉を慌てて飲み込み

「どうぞっ」

笑顔で言う

「私が持ってるより、巫女さまが持ってる方がいいと思って!」

神様元気にしようねー♪と続け、手を振りながら仲間の元へと戻って行く
残されたリリムは二つの宝玉を持ち、唖然としていた
そこへエインが声をかける

「ハーフブリードの方々は器が大きいですね」

「そうですね・・・驚かされてばかりです」

リリムは深い青い玉を見つめる、後2つ・・・それで死の神は救える
彼女の中に熱くなるものが湧き上がる
そんな彼女を見てエインは笑顔になっていた



宴の会場の隅に一人の男がいた、クガネである
彼は誰とも話さず、黙々と酒を飲んでいた
高い酒が口に合わなく、チッと舌打ちをし椅子に座る
そこへマルロが小走りで駆け寄って来た

「あの・・・クガネさんっ、楽しんでますか?」

目だけを彼女へ向け、再びチッと舌打ちをする

「楽しいわけがないだろう、不味い酒だ」

不満そうに酒の入ったコップをゆらゆらと揺らしている

「他のお酒持ってきましょうか?」

「いらん」

即答だ、しかしマルロは諦めない

「あっちに美味しいケーキがありましたよっ」

指をさしながらクガネに言う、再びチッという舌打ちが響く

「ガ・・・・・お前は何故俺に絡む」

マルロがきょとんとした瞳でクガネを見て、うーんと悩み出す
しばらく悩み、静かに口を開く

「一人は寂しいじゃないですか」

クガネは何言ってんだコイツはと呆れる

「一人じゃ話せませんし、遊べません、やっぱり一人は寂しいですよ」

マルロはどことなく寂しそうに悲しそうに言う
そんな彼女の表情を見て、クガネの胸の奥がチクリと痛む

「だから私はクガネさんに皆と仲良くなってほしいんですっ」

真剣な表情でそんな事を言う
ハァ・・・とため息を洩らし、気だるそうにクガネは口を開いた

「お前に心配されるほど落ちぶれちゃいない、ほっとけ」

「いやです!」

即答だった、そんな彼女の態度に気圧される

「クガネさんは私をガキって呼んでましたよね
 それが今はお前になってます!仲良くなってきた証拠ですっ!」

空を見上げ、顔を片手で覆い、ダメだコイツは、とクガネは思った

「これだからガキは・・・」

そんな独り言はマルロには届かなかった
その後もマルロは他へ行かず、クガネにあれこれ語りかけていた



翌朝、全員が中庭に集められ、会議が行われた
そこでお互いの情報を事細かに交換したところである
ハーフブリードの活躍を語るロイは熱を帯びており、当人達は恥ずかしそうにしていた
本当にこんな奴らが?と疑惑の目を向けられるが、一向に気にしない面々だった
そしてマルロの巨石魔法、それを聞いたハーフブリードの女子達は盛り上がる
さすがマルロちゃん、まじ天使、まじ巫女?などなど騒いでいた

「生と死の聖域の話だが」

その騒ぎを止めるようにガゼムが切り出す

「神の言葉によると、生の泉、死の谷の先という事だ」

思い当たる人はいるか、と続ける
そこでジーンが手を上げた

「カナランとラーズの国境付近、高い山々があるところですけど
 そこの山奥に四季がごちゃまぜになった泉があると聞きます、それではないでしょうか」

「おぉ、それっぽいな」

ガゼムが唸る
一同に目をやり、ほとんどの者が頷いていた

「では、そこを生と死の聖域と仮定しよう、残るは火と地の聖域だが・・・」

ガゼム一同の顔を見てから続ける

「おさらいのようで悪いが、今一度言う
 火の聖域はラーズの北にあり、地の聖域はラーズの南にある
 先ほど話の出た生の泉らしき場所はこの地の聖域の西にあたる辺りだ」

そこでロイが手を上げる
それにガゼムは無言で頷き、一歩下がる
それに合わせロイが前に一歩出て口を開く

「火の聖域から行こう、それなら一旦ラーズで補給をしながら地の聖域へと向かえる
 更にその先にある生と死の聖域へも距離が近い、どうだろうか」

全員が頷いた
そしてロイが話を続ける

「リリム殿、よろしいか」

リリムが一歩前へと出る

「はい、では私から1つお話があります」

彼女はポケットから二つの宝玉を取り出す
それを皆に見えるように掲げながら、その美しい声で語りだす

「この二つの宝玉、これは死の神の命とも言えるものです
 これは何が何でも守らねばなりません・・・・」

一呼吸置き、リリムは続ける

「今の私には何の力もありません、ですが、私は死の巫女です
 これは死の巫女である私の役目に思います
 そして、命にかえても守りぬくと誓います・・・ですが、皆さんの力をお貸しください」

彼女は静かに長く深く頭を下げた
その綺麗な黒く長い髪がするりと流れ、大地につきそうになる

「その役目、自分に任せてはいただけないでしょうか」

エインが一歩前へと出る
一同が注目し、彼の眼に宿る熱意が伝わる

「僕はそれでいいと思いますよ、彼は見た感じ強そうだ」

シルトが言う、彼から褒められた事にエインは僅かに頬が緩みそうになる

「危なかったら僕らも加勢しますんで」

彼にここまで言われては反論できる者はいなかった
先ほどロイ少佐より聞いた彼等の話はおとぎ話のようで信じ難かったが
あのロイ少佐が嘘を言うとは到底思えない、それは事実なのだろう

「了解した・・・では、エイン・トール・ヴァンレン君、頼むぞ」

ガゼムが鋭い視線を向け、失敗は許されないプレッシャーを与える
それにエインは頷くだけで答え、元の位置へと下がった
そんな彼に笑みを送り続けるリリムだったが気づいてもらえなかった
エインは自身の右手を見て、力強く握り締め、決意を胸に刻んでいた




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