2017_01
28
(Sat)18:03

4章 第7話

オリジナル小説 『カタクリズム』
4章 第7話 【警鐘】

予定より長くなってしまってあまり進まなかった…。
ゆっくり展開ですが良かったら読んでくださいまし。

では、続きを読むからどうぞー。








【警鐘】






水の巫女マナ・マクリールが旅立つのを見送り
エイン達一行は神殿の更に奥、元老院のいる本会議場へと向かう
案内された場所は重そうな扉があり、衛兵がゆっくりと左右に開く
薄暗い部屋の中、円形の大きなテーブルを囲むように座る老人達がいた

「失礼します!神の巫女様御一行を御連れしました!」

滑舌の良い衛兵の声が響き、室内は一気にざわつく
部屋からは独特な臭いが漂い、それが何であるのかすぐに気がつく
老人達は大小様々な水煙草と呼ばれるものを吸っていた

水煙草とは専用の香り付けがされたタバコの葉に炭を載せて熱し
出た煙をガラス瓶の中の水を通し吸う物である
その形は大小様々であり、30センチほどの物から1メートルを超える物まである
煌びやかな装飾のされたガラス瓶はそれ単体でも高級品なのが伺える

「水の巫女様ではないのか・・・?」

老人の1人がマナの姿が見当たらない事に気づく

「はっ!水の巫女様は先ほど出て行かれました」

衛兵がそう言うと数名の老人がガタッと立ち上がる

「ど、どこへ行ったのじゃ!」

慌てる老人達の様子は只事ではない

「申し訳ありません、私には解りかねます」

ダンッ!とテーブルを叩く音が響き、老人の1人が怒鳴る

「今すぐ追え!何としても見つけ出せ!!」

衛兵が大急ぎで走り去ると室内には静寂が訪れた
不穏な空気に様子を伺っていたエイン達はまだ部屋にすら入っていない
老人の1人がそれに気づき、"神の巫女"として連れて来られた客人を招き入れた

「これはこれは、ようこそヒッタイトへ」

「見苦しいところを見せて申し訳ない」と付け足しているが
老人達の目は疑心に満ちていた
こんな都合よく巫女が次から次へと現れるものか、と
どうせ水の巫女の噂を聞いて便乗した偽者に決まっている、と
だが、万が一という事がある
そのため失礼の無いよう無難な対応を取っているのだ

「巫女様一行で・・・よろしいのですかな?」

痩せこけた老人が当たり障りの無い質問をし真偽を確かめる

「わたくしはドラスリア王国ラシュフォード家が三女
 ミラ・ウル・ラシュフォードと申します、以後お見知りおきを」

ミラの丁寧な口調や仕草に気品を感じ、老人達の目の色が一気に変わる
その変化は2パターンあった
1つは巫女だという彼等の信憑性が上がったことである
もう1つはミラという若く美しい女性を前にし下心を向けたものだった
この老人達は若く美しい女を"そういう目"で見るのだ

"そういう目"を向けられる事に慣れているミラはそれを一瞬で感じ取る
低俗な老害、それがミラの老人達への第一印象だ
しかし、そんな考えは一切表情に出さずミラは優雅に続ける

「こちらから、死の巫女リリム・ケルト
 その隣が地の巫女マルロ・ノル・ドルラード
 火の巫女イエル・エフ・リート
 そして、神の勇者エイン・トール・ヴァンレンですわ」

バテン達が紹介されない事に不満そうな顔をしていたが
そんなものはスルーをしてミラは続ける

「わたくし達は神託を受け、この地に参りました」

ミラの言葉の中には老人達を驚かせるものが幾つもあった
巫女が3人だと?勇者だと?何を言っているんだこの小娘は
そう思いたいが、彼女の凛とした雰囲気や自信溢れる表情から
嘘を言っているようにはどうしても考えられなかった

そして、紹介された巫女達を見て、独特な雰囲気を感じ取り
それが真実であると確信めいたものが彼等の中に芽生える
だが、まだ信用するわけにはいかない
巫女という存在は最近まで"伝説や伝承の存在"だったのだ

「失礼ながら申し上げる、証拠・・・はあるのだろうか?」

ふくよかと言うには無理があるほどぶくぶくに太った老人が口を開く

「巫女とは伝説の存在、簡単には信用できませぬよ」

彼の一言で老人達の揺れていた心が落ち着きを取り戻す
そうだ、巫女なんてそう簡単にいるわけが無いのだ
危うく信用するところだった、と

「信じる信じないは貴方達の自由ですけど
 マナさんの事はどうして信用できたのかしら?」

「水の巫女様は"奇跡"を示してくださった
 その奇跡で我らヒッタイトを助けてくれたのですよ」

「なるほど・・・どうします?」

ミラが巫女達に視線を向けて問うと、イエルがニヤっとそれに応えた

「あたしの出番さね」

懐から溶焔の宝玉を取り出しそれを掲げる
すると、宝玉は赤く輝き始めた・・・が、すぐにその光は消えてゆく

「む?どうしたのだ」

注目していた老人達は何が始まるのかと目を凝らしていたが
何も起きず光が消え拍子抜けになる
やはり偽者か、そんな考えが頭をよぎろうとしている頃

「ここで使うと大変なことになるけどいいのかい?」

そう、この部屋は薄暗いのだ・・・もちろん窓など無い
ここで溶岩魔法を発動すれば、例え小規模でも一瞬でサウナの完成だろう

「なら、私が・・・」

控え目な声が室内に響く、声を発したのはマルロだった
こんな少女に何が出来るというのだ、老人達の目はもはや期待すらしていなかった

「魔法人形は御存知ですか?」

突然少女はそんな問いを投げかけてくる

「魔法人形・・・?ゴーレムの事かね?
 知ってはいるが、遥か遠い昔に失われた魔法兵器だぞい
 現存しているゴーレムは数体、どれも人の手が及ぶものではないのだぞい」

眼鏡の老人が自分の知識をひけらかし、幼い少女に勝ち誇る
だが、その答えを聞いたマルロは「良かった」と小さな声で呟いた

「土の化身よ、我が呼びかけに応え、姿を現せ」

マルロの黒曜石の杖が黄色く輝き
土壁の一部がゴゴゴゴと音を立てて動き始める

「まさか・・・ありえん・・・」

壁は徐々に人の形となり、まるで意思があるかのように動き始める
これはソイルゴーレム、砂と土で出来た魔法人形だ
身長は2メートル近くあり、腕の太さはマルロの胴より太いほどだ

この魔法は地の巫女だけが使える魔法の1つである
彼女はこの程度のゴーレムならば最大で4体まで作り出せる
しかし、操るには尋常ならざる集中力を使うため無防備となる
そのため、多用できるような魔法ではないのだ

「室内なのでこのくらいにしました・・・足りないですか?」

マルロが心配そうに眼鏡の老人の様子を伺う
口が開いたままの老人がずり落ちそうな眼鏡を慌てて直して言う

「あ・・・いえ、充分です、有難う御座います」

眼鏡の老人は途端に敬語になり、ペコペコとしていた
どうやら納得してもらえたようだ
安堵したマルロは胸を撫で下ろし、ゴーレムに戻っていいよと声をかける
ゴーレムはのっそのっそと壁へと向かい、そのまま壁へと溶けていった


やっと本題に入る事が出来、元老院から現状を詳しく聞く事とした
ヒッタイト国は現在深刻な水不足に悩まされているらしい
始まりは大地が裂けた事からだそうだ
あっという間に首都に隣接するオアシスは枯れ
少し離れた位置にあるオアシスもまた枯れていた

水の巫女マナの登場により少量の水は確保する事が出来たが
街全体をカバーするには全く足りない量である
しかし、水の巫女がいる限り安泰だ、そう思っていた
だが、その思惑は先ほど崩れ去った・・・マナが旅立ってしまったためだ

エイン達と話している間にも室内には兵が行き来しており、慌しい雰囲気が漂っている
どうやらマナは神殿を出てすぐに水の上を翔るように消えたそうだ
そのため、元老院達は即座にマナを追う部隊を編成し、部隊は既に出立したようである
迅速な判断と行動力にミラは関心する
この老人達の評価を修正する必要がありそうですわね、と


しばらくすると慌しさが収まり、やっと落ち着いて会話ができる
神託の話や死の概念を取り戻した話などを伝えると
彼等は流石に信じられないといった顔だったが、先ほど見た"奇跡"がそれを許さない
信じたくはないが信じざるを得ない、そんな心境である
だが、それと同時に元老院達には1つの考えが浮かんだ

「巫女様、1つお願いがあるのですが」

この中で1番小さいマルロに狙いを定め、老人の1人が口を開く

「はい、なんですか?」

純粋な彼女に老人達の思惑など気づける訳もなく、曇りの無い眼を向ける

「実は先日の大災害以降、隣国のメンフィスが我が国のオアシスを占拠したのです」

大災害とは大地が裂けたことだ

「占拠ですか」

「はい、奴らはヒッポグリフなる魔獣を操り
 空から我が国を攻撃し、犠牲者が後を絶たないのです
 奴らは魔獣を振りかざし、我が物顔であの地を不当に占拠しているのですよ」

老人はすらすらと言葉を紡ぎ、マルロは少し圧倒される
そんな少女の困り顔を見逃していなかったのが隣に座るイエルだ

「で、アンタらはあたし達に助けてくれと言いたいんだね?」

「は、はい、恥ずかしながらそうです・・・」

老人はイエルの迫力に圧され、額の汗をハンカチで拭きながら続けた

「現状の我が国には魔獣に対抗する手段が御座いません
 そのため、毎回一方的な虐殺になるのですよ
 しかし、我等もあのオアシスを失っては全滅は必至、諦める訳には・・・」

ふん、と鼻から息を吐き出してイエルは腕を組む
どうもこの老人達が信用できないのだ
どこか胡散臭い、何となくだがそんな気がするのだ
節々に過激な言葉を織り交ぜ、まるで煽っているような、そんな気がしてしまう

「その話に嘘偽りはありませんか?」

丁度言おうか悩んでいた事を代わりに発言したのはリリムだった

「もちろんですとも!
 民は乾いております、もはやこれは生死の問題なのです!」

別の老人が机を叩き、大声を上げる
その音にビクッとしたリリムは気圧され引っ込んでしまう

「これは失礼、感情的になりました
 それほど我等にとって重要な問題なのです、判っていただきたい」

「いえ、こちらこそ失礼しました」

リリムが頭を下げると老人達が慌ててそれを止める

「どうですか、お助けいただけませんか?」

老人達の切な願いが室内に響くと、一瞬だが静寂が訪れ
それを破ったのはエインだった

「はい、これも神の導き、自分達に出来る事でしたら」

エインの発言で一瞬イエルがピクッと動くが何も言わなかった


それからはあれよあれよという間に出陣となる
彼等には時間が無いのだ
急がねばメンフィスとの戦争よりも早く、民は渇きにより自ずと全滅する事となる

元老院はエイン達に惜しみない支援をする
水や食料、その他消耗品を無償で提供し
更にエインの折れてしまった剣の代わりまでもくれた
その剣はアーティファクト装備"風斬りの長剣"と呼ばれるモノだった
風の魔法により切れ味が増し、重さというものが存在しない剣である
ヒッタイトの国宝であるその剣を無償でくれてやるなど大盤振る舞い過ぎるが
元老院達にとって彼等の戦力というのはそれ以上の価値があるものだった

今回の戦争には傭兵達が参戦している
元々ヒッタイトには軍隊と呼べるものはほとんど居らず
その大半を雇った傭兵達で補っている特殊な国家だ
そのため、ヒッタイトでは傭兵という職を与え、彼等に仕事を斡旋しているのである

首都にいた傭兵達は普段金を貰わねば参戦などしないが
今回ばかりは自身の生死に関わる問題なためか、自ら志願する者が多かった

こうして集まった傭兵団、総勢約5万

総長に傭兵の中で1番強いとされているタイセイが着く
彼の命令ならば誰も逆らわないという簡単な理由だ

エイン達はヒッポグリフ隊を相手にする手筈となっていた
これには3人の巫女がいれば問題無いだろうと踏んでいる
しかし、相手の戦力が分からないため、兜の緒を締める思いで進んでいた
そんなエイン達の心配は的中する事となる


「なっ・・・・彼等は・・・」


ヒッタイト軍とメンフィス軍が向かい合い、睨み合いが続いている時
エインの視界にある一団が入ってくる

全身黒いフルプレートの黒い大盾を持った剣士
淡いピンクの長い髪の猫人(ウェアキャット)と人間のハーフである少女
同じく淡い青い髪のハーフキャットである長い杖を持った少女
前髪の一部が白く変色した茶髪、紅い瞳が眼鏡の奥で輝く女性
頭に不思議な生き物を乗せた、白髪と長い耳が特徴的な戦場という場に不釣合いな幼女

見間違えるはずがない、彼等は"ハーフブリード"だ
一等級冒険者である彼等が何故こんな場所にいるのかは分からない
だが、メンフィス側にいるという事は"敵"という事になる

「ありゃぁハーフブリードかい」

イエルが手で陽射しを遮りながら眼を細めて言う
ドワーフは日の光りが強い場所では視力があまり良くないのだ
逆に暗い場所では人間の数倍は目が効くのである

「そのようですわね・・・」

ミラは彼等の実力を思い出し、一瞬身震いする

「だ、大丈夫でしょうか?」

リリムが怯えるような仕草をしているが
彼女より強い者などそうは居ないのにな、とエインは苦笑する

「あの・・・話し合いはできないのでしょうか?」

マルロがエインに提案すると、彼は頷く

「もちろんそのつもりです、マルロ様」

彼は笑顔でそう言った

「そうですか、良かった」

マルロが僅かに笑顔になり、ホッと胸を撫で下ろす
その様子にイエルも頬が緩むが、状況がどう動くか分からないため顔を引き締めた

「少し話してきます」

エインは彼を追おうとしたリリムを手で制し、笑顔だけ向けて歩き出す
そんな彼の背中を愛おしそうに見つめる彼女の脇腹に突如刺激が襲ってくる

「ひゃっ!」

慌てて何かが当たった方へと目を向けるとそこにはプララーがいた

「かっわいいんだからぁ~、もぉ~♪」

「な、何がですかー!」

慌てるリリムの顔は真っ赤で、誰が見ても分かるほどだった

「早くモノにしないと、あの子アタシが貰っちゃうわよん☆」

ウインクをしてプララーが去ってゆく

モノにしろと言われても難しいのだ
どうしても彼を前にすると、あの目で見られると恥ずかしくて素直になれないのだ
しかも、エインは超がつく鈍感と来ている
おそらく今想いを伝えても彼は振り向いてくれないだろう
どれだけ想っていても相手の心は別なのだから・・・
自分の想いを伝えるよりも、もっと自分を磨いて彼に好かれるようにならないと
それが今のリリムの目標だった


エインが総長であるタイセイに声をかけ
メンフィスの代表と話をさせて欲しいと進言する
するとタイセイという老人は老いを感じさせない眼光を向け

「好きにしろ」

とだけ言うと興味無さそうに赤い酒を煽る
戦争前に酒を飲んでいる総大将というのも如何なものかと思うが
彼の実力は間違いない、手合わせをせずとも判るほどだ
そんなタイセイを横目にエインは兵の1人から白旗を受け取る
白旗を高く掲げ、大声を上げながら進んでゆく

『話し合いがしたいっ!』

その声はメンフィスに届き、女王らしき女性と側近が何やら話している
そこに黒い鎧の男シルトが混ざり、話し合いの末、彼が白旗を受け取った

エインは両軍の中央で停止し、白旗を地面の砂に突き立てる
白旗を受け取ったシルトは気だるそうにゆっくりと向かって来ていた
しばらくし、彼がエインの元まで来ると同じように白旗を地面に突き刺し口を開く

「で、なんでそっちいんの」

「それはこちらの台詞です」

「やんごとなき事情により参戦してる、そっちは」

シルトは不機嫌なようだ、先程からイライラしているように見える

「自分も同じです・・・・水、ですか?」

「だね」

やはりメンフィスも水不足で困っているのか
ではこの戦争、どちらについても犠牲者は出てしまう・・・

「そうですか・・・ですが、非はそちらにあると思うのですが」

「知らんよ、僕は必要だから戦う、それだけ」

「そんないい加減な」

「そうだよ?自分らの利のために動いて何が悪いの?」

まるで悪びれる様子なくシルトは言う
その態度にイラつくが、今は感情的になってる状況ではない

「戦うしかないのですか?」

「みたいよ、ここのオアシスのキャパは4万人分くらいなんだとさ」

「なるほど・・・しかし、分け合えば」

「キャパがそれだからって雨がいつ降るか分からんのよ?
 それにそっち何万いんの?こっちと合わせたら7万は余裕で超えるでしょ」

彼の言葉は正論だ
戦争に出られない者達も含めたら10万を大幅に超えてしまうだろう
4万人しか助からないのならば奪い合うしかないのだ

「ハッキリ言うけど、僕は戦いたくなんかないよ
 でもやるしかないんよ、そうなっちゃったわけ
 でも、出来れば君ら・・ってか巫女達と殺り合いたくないんだわ」

「それはこちらもです
 俺の知る限り貴方達は一番敵にしたくない相手だ」

「そりゃどーも、そこで提案なんだけどさ
 君らだけでも引いてくれない?巫女が参戦したら悲惨な事になるぞ」

そう言う彼の声色には余裕が無いようにも感じられた

「それはジーン殿も同じではありませんか」

「まぁそうなんだけど、そんな両者がぶつかってみなよ
 被害は凄まじいことになるよ?いいの?」

「先程の貴方の言葉を借りますが、"やんごとなき事情"です
 こちらも引く訳にはいかないんですよ」

はぁ、と大きなため息をもらしシルトは天を仰いだ
どっと疲れたように下を向き、もう1度大きなため息をもらす
そして、顔をあげた彼の顔からは緩さというものは消えていた

「やるからには殺す気で行くぞ」

「判ってます」

「ったく、気分悪いな、知り合いは斬りたくないんだけどな」

「それは俺もですよ」

シルトは背中を向け、白旗を引き抜いた
それに続き、エインもまた白旗を引き抜く

「うちの子達の害になる奴等は全員殺す」

そう言い残して彼はメンフィス側へと戻って行った
彼の背中をしばし眺め、これからこの男と殺し合うのか、と考えていた
以前に稽古として剣を交えた事がある、あの時は手も足も出なかった
そしてアムリタで見たオエングスとの激戦
あの尋常じゃない剣技を相手にするのかと思うと震えてくる
この震えが恐怖なのか武者震いなのかは今の彼には解らなかった

・・・・・

・・・



「・・・・てな訳で戦うことになりましたよ」

シルトがバステト達に話した内容を簡単に伝えると
シャルルが「シルさん何でそんな喧嘩腰なの!」とシルトに怒っていた

「しゃーないじゃん、彼らも引けないって言うんだしさ」

「それよりも巫女が厄介ね」

ジーンが淡々とした口調で言うと、バステトとナビィが目を丸くする

「巫女?巫女とは"あの神の巫女"なのですか?」

ナビィは思わず口を挟んでしまう

「そうだよ、あっちに3人いる」

「3人!?」

バステトが不安そうに胸の前で手を組んで祈るような仕草をしてから聞く

「貴方達なら何とかなりますか?」

「やるしかないでしょ・・・あ、待って」

ジーンの魔力を見る瞳がヒッタイト陣営の方を睨む
彼女の目には2つの強大な魔力が集まっていくのがハッキリと見えていた

「あ~、開幕究極魔法撃つみたい、しかも2人の巫女が同時に」

「ちょ、まずいじゃん、何冷静に言ってんの!」

シルトが焦るが、ジーンは「大丈夫よ」と言いながら歩いて行く

「約束したでしょ、皆を守るって」

振り向いて片目を瞑ってウインクするジーンは自信たっぷりだ
その様子から彼女を信じ、シルトは「頼む」と一言言うだけだった


歩きながらジーンは内にいる存在に声をかける

・・アスタロト、起きてる?

・・我は眠らんぞ

・・あれ、止められるかな?

・・愚問だ、あの程度今のお前でも余裕だろう

・・そっか、なら良かった

再びヒッタイト陣営を見つめる
大きな魔力の動きは2つ、色から地と火か
マルロちゃんとイエルさんが撃つみたいね

・・アスタロト

・・なんだ

・・この障壁ってどこまで離せるの?

・・お前等の基準で言う200メートルってところだろうな

・・そっか、ならいけるかな?離れた位置狙われると厄介だな

・・1つ教えておく、離せば離すほど弱くなるからな

・・そうなんだ、万能ではないのね

・・それはお前が"弱い"からだ、勘違いするな

・・ふーん、あ、待って、何かおかしい

ジーンの紅い眼が細くなり、魔力の動きに集中する
何か違和感がある、この2つの強大な魔力の大きさがほぼ同じなのだ
そして、その2つの魔力が少しずつだが合わさり始めていた

・・ちょっと、嘘でしょ、冗談じゃない

・・どうした、女

・・究極魔法の融合なんて出来るの?

ジーンは知らないのだ、彼女達がアムリタで発動したあの魔法を・・・
あんな膨大な量の魔力をコントロールできるの?そんな馬鹿みたいな芸当できるの?
よくよく見ると地の魔力が徐々に弱まり火の魔力と同等になってゆく
マルロちゃんがやってるんだ、あの子の魔力コントロール普通じゃないわね

・・魔力を融合?別の属性をか?

・・うん

・・ほう、それは面白いな

・・面白がってないで、あれ大丈夫なの?

・・なぁに、2つが1つになっただけではないか
 非力な人間らしい浅知恵というやつだろう

・・アナタ知らないかもだけど、属性融合は1+1=2じゃないからね?

・・む?我を無知と言うか

・・10倍近いものと思っていいわよ

・・ほほぅ、それは面白い、だが問題なかろう

・・そう?ならいいけど・・・・・

そこで会話を切り、ジーンは12枚の障壁を前面へと展開する
最前の2枚は薄く延ばし広範囲をカバーする
その次にある2枚は少しだけ広げ、残る8枚は分厚いままにした

「これくらいかな」

そんな独り言をもらした頃、ヒッタイト陣営で巨大な魔方陣が2つ出現する
直径は10メートルほどはある半円状の魔方陣がくるくると回りながら
形を変えて輝き始めた

「ジーンさん平気かな?」

「大丈夫っしょ、あんだけ自信満々だったし」

「うん、私もそう思う」

「でも究極魔法2つだよー?」

「うん・・・大丈夫かな・・・」

「念のため皆は僕の後ろに隠れてて、いざとなったら反射するから」

彼の背中に隠れるように3人が陣取ると
シルトは右手の常闇の盾を持つ手に力を込めた

・・・・・

・・・


「命を育む大地よ、その力を、その驚異を、ここに示せ!」
「生命の根源たる炎よ、その力を、その猛々しい熱を、ここに示せ!」

魔方陣が急速回転して行き、光りは増してゆく
二人は目を合わせ、無言で頷いた

『ツェーロ・ヴィーヴォ!』
『ケルーダ・フラーヴォ!』

砂の奥底、大地から岩が現れ、宙に浮いてゆく
上空に出現した巨大な火球がそれに纏わりつくように合わさり
彼等の頭上には30メートルを超える燃え盛る巨大な隕石のようなものが出現した


『『究極融合魔法!ファゴ・メティオール!!』』


二人の声が合わさり、隕石は真っ直ぐメンフィス陣営へと進み始めた・・・




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