2017_03
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(Tue)17:45

4章 第13話

オリジナル小説 『カタクリズム』
4章 第13話 【光翼】

いよいよナビィさん始動です、お楽しみにー。


では、続きを読むからどうぞー。


【光翼】






夕闇が空を支配しようとしている頃
空に渦巻く分厚い雲から一筋の光が差し込む
それはただ一人の女性を照らし
彼女の全身に浮かぶ黄金の紋様と同じ色の光だった
光を浴びた彼女は立ち上がり、空を見上げ言う

「・・・・・来る」

彼女の褐色の肌が光に晒され、その強烈な光に目を細める

「我が醜き身体を御身の元に・・・」

ナビィは失った右腕が痛み、左手で押さえた
光を浴びている彼女の肌はペリペリとめくれ上がる
全身から痛みが走るが腕から来る痛みほどではない
そう思うと何だかおかしくなり、鼻で笑う

そして、彼女はうずくまり、左手で右肩を抱く

「そのための翼を・・・」

ナビィの肩甲骨辺りがボコっと膨らみ、炸裂する
不思議と血は出ず、代わりに光り輝く黄金の翼が生えた

「御身の元に・・・・」

ナビィが目を瞑り、天を仰ぐと
彼女の身体はゆっくりと浮き上がり
空へ、空へと浮かんでゆく・・・・

ナビィ半神4

・・・・・

・・・



タイセイの一方的な攻撃をなんとか凌いでいる状態のシルトは
自身の右手の握力がほとんど無い事に気づいている
だが、彼は右腕を全て使って常闇の盾を操っていた

何度か反射を試みたが、変則的な攻撃にタイミングを合わせる事は出来ず
次第に奪われてゆく体力と、蓄積してゆく右腕のダメージと
いつ襲ってくるか分からない腹痛と嘔吐感に彼は焦っていた

そして、その時は来る
異物が食道を逆流し、喉にチクチクとした痛みを与え
口の中には酸っぱい味が広がる

「おぇっ」

思わず吐き出したシルトは迂闊だったと後悔するが
タイセイの攻撃はピタリと止んでいた

「・・・なんだ、待ってくれんのか」

口元を拭いながら言うとタイセイは大きなため息を洩らす

「はぁ・・・シルト、お主は万全ではないのか」

「色々あってね」

タイセイは頭をポリポリと掻き、「うーむ」と考え込む
一見隙だらけだが、折角の休めるのチャンスだ
わざわざ攻撃しに行く必要もないだろう
今は右手の握力を戻す方が大事である
そのため、シルトは話す事で時間を稼ぐことにした

「なぁ、アンタは強い奴と戦いたいんだろ?」

「いかにも」

「なら、うちに僕より強いのがいるんだが、興味無いか?」

「ほぅ・・・それは真か?」

髭を触りながらタイセイはニヤける
思惑通り話に乗って来た事にシルトもニヤけそうになるが
今は我慢し、奴が興味を惹かれるように話を続ける

「マジだよ、先日負けたばかりだ」

「ほほぅ」

「僕が手も足も出なかったと言ってもいい
 どうだ?興味無いか?・・・何なら紹介するけど」

シルトの言っている人物はもちろんジーンの事である
本当は紹介するつもりなど無いが、タイセイが話に乗ればそれでいい
上手くいけばジーンさんと協力して倒せるかもしれない
そんな考えもあってシルトは提案していた

「そやつは何の武器を使う」

「ん?・・素手かな」

「ほぅ、素手か!なかなかに面白い
 素手でお前を倒したというのか、そうかそうか」

タイセイが随分ご満悦な様子なので思わず口にしてしまう

「あ、いや、魔法も使えるけどね」

「む・・・魔法で手も足も出なかったという事か?」

「ん~・・・そうなるのかな」

「それではつまらん、わしは拳と拳のぶつかり合いがしたいのだ」

タイセイは大地に刺していた金の棒を手に取る

「待てって、マジで強いからその人
 魔法って言っても普通の魔法じゃないぞ」

「ほぅ」

よし、乗ってきた
まだ右手は完全じゃない、もう少しだけでも話を延ばさなくては・・・

「見えない壁を操るって言えばわかり易いかな」

「・・・障壁の事か?」

「お?知ってるんだ、それそれ」

「ほぅ、そやつは何枚操る」

「ん~、確か12って言ってたよ」

『12だと!?』

突如タイセイの大声が響き、シルトの身体はビクッと跳ねる
あのじいさんがこれほど狼狽えるって事は12ってのは相当らしいな

「・・・・シルト、お前嘘をついているな」

「なんでよ、嘘じゃないんだけど?」

「12枚の障壁などあり得ぬ、わしの知る限り3枚が限界だ」

「それは人間の話だろ?」

「む?そやつは人ではないと言うのか」

「彼女は悪魔だよ」

シルトがそう言った途端タイセイの表情が曇る
何かマズったか?そう思ったシルトは信憑性を上げるため続けた

「開戦の時の隕石跳ね返したのが彼女だよ
 な、すげぇだろ?僕なんかより遥かに強いぞ」

「・・・・・もうよい、剣を持て」

タイセイは黙って構えた

「な、なんでだよ、待てって」

シルトが慌てて止めるが彼は構えを解く気配はなかった

「理由を言えって、なんで興味なくなったんだよ」

握力はだいぶ戻って来てるがまだ完全じゃない
もう少し、もう少しだけ・・・

「そやつが女だからだ、わしは女とは殺り合わん」

「は?」

そんな理由かよ!強い奴と戦いたいんじゃないのかよ!
と心の中でツッコミを入れ、シルトはゆっくりと構える

「お主が万全じゃないのは残念じゃが、これも運命だと諦めよ」

「チッ・・・」

「ゆくぞっ!!」

再び1撃1撃が強烈なタイセイの連打が始まる
ある程度握力も戻り、何とか凌ぐことは出来るが時間の問題だろう
このふざけた威力の攻撃を反射さえ出来れば・・・

そう思った瞬間だった

タイセイの動きがピタリと止まる
それに合わせ、シルトの動きも止まり
二人は同じ方向へと顔を向けた

二人の視線の先には金髪の男が走ってくるのが見える
銀の腕に長剣を握り、胸部のへこんだプレートメイルを着ている
エイン・トール・ヴァンレンである

「まだ息があったか」

タイセイが構え鋭い突きを放つ
金の棒は伸びてゆき、エインに迫っていた
だが、その突きをエインはギリギリでかわし、逆に鋭い突きを放つ
タイセイがエインに向いている隙にシルトも突きを放っており
二人の突きがタイセイに迫っていた

シルトの突きは棒の後ろ部分で弾かれる
そこでタイセイは金の棒を縮め、エインの突きに対処しようとする
が、それでは疾雷の突きには間に合うはずもなく
エインの鋭い突きはタイセイの右肩に深く突き刺さる

「ぐっ!・・・・くっく・・・はーーーっはっはっは!」

肩に刺さる剣を素手で掴み、タイセイは大声で笑った

『見事見事見事ッ!!』

歓喜に満ちた表情を浮かべ、剣を引き抜く

『まさか同時に二人も出逢えるとはなっ!』

エインは止まらず突きの連打を放つ
だが、それは全てかわされ、タイセイは大きく飛び退き、距離を取る

「いいぞいいぞ、お主!名を何と言ったか!」

「エイン・トール・ヴァンレン」

「エイン、エインか!覚えたぞ!」

かっかっか、と大層嬉しそうにタイセイは笑う
対するエインは鋭い眼差しを向けており、怒っているように見えた

「何故裏切ったのですか」

「何を言っておる、わしに仲間など鼻から居ないわい」

「そうですか・・・ならば、斬る」

エインは低く構え、疾雷の突きの体勢に入る
左腕からは大量の血が流れ、使い物にならない様子だった
その横でシルトが言う

「ここは共闘と行っときますか」

タイセイから目を離さぬままエインは答える

「構いませんよ、その後で貴方は俺が倒します」

「ほいほい、じゃあそれまではよろしくな」

シルトも構え、3人の戦いが始まろうとした時
雲が出てきて薄暗くなっていた空から一筋の眩い光が差し込む
その幻想的な光景に誰もが手を止め、目を奪われた

「なんだありゃ・・・」

差し込む光の柱を登るように浮き上がってゆく人影が見える
その人影はまるでおとぎ話に出てくる天使のような翼が生えていた
翼は輝いており、黄金の光はチリチリと熱く、軽く痛いほどの輝きだった

・・・・・

・・・



ミラの治療を続けるシャルルとプララーの元にも光は届いていた
何とか一命は取りとめ、ミラの容体は安定に向かっている
そんな彼女達も強烈な光に目を奪われていた

「なにあれ・・・すごく綺麗」

シャルルが治療を続けながら呟く

「綺麗ねぇ・・・でも、嫌な感じがするわね」

プララーも治療を続けながら光を見ていた
その横でアシュが口を開けたまま光を眺めており
その間抜け面に気づいたプララーが吹き出す

バテンは傷口を押さえながら空を見上げ、不思議な暖かさに酔いしれている
どこか心地よいような、少しチクチクと痛むような
不思議な光だな、と彼は考えていた

ずっと泣いていたサラも光に目を奪われる
だが、今は何も感じる事は出来ず、ただ眺めていた

そんな彼女達から少し離れた位置で二人の女性が戦っていた

ジーンは12枚の障壁を操作し、破壊の珠を全て防ぎ切っている
リリムの作り出した珠は6個まで増えており
それは形状を変え、棒状の物、球状の物、棘のような形まである
それらを断続的に仕向け、ジーンに攻撃の隙を与えていなかった

彼女達の元にも光は届く
二人もまた光に目を奪われ、攻防は止まる

「え・・・何あれ・・・」

ジーンが思わず口ずさみ、心の中にいる存在に声をかける

・・アスタロト

・・あぁ、分かっている

・・いや、私は分からないから、何なのアレ

・・お前達の言う、神に近いモノだな

・・アスタロトみたいなもの?

・・我をあのようなカスと同じにするな

アスタロトが怒り、色々言っているがスルーしておく

そんな事よりアレが大丈夫なのかが気になる
あの膨大な魔力・・・アスタロトほどじゃないにしても
巫女なんて比較にならないほど強く、濃密な魔力
もしアレの攻撃がこちらに向けられた場合、防ぎきれるだろうか

「あの」

考え事をしていたところでリリムに声をかけられ我に返る
今は戦闘中だった、迂闊だった

「休戦しませんか?嫌な予感がするのです」

リリムにはあの光がとても嫌なモノに感じられた
確かにパッと見は綺麗なのだが、心が綺麗だと認めたくないのだ
まるで巫女の力があの光を嫌がっているかのような、そんな感覚がある

「いいけど、後ろからとか止めてよね」

私には効かないけど、と付け加えてジーンは言う

「そんな事しませんっ!」

ぷんぷんと怒るリリムにクスッと笑みがこぼれ
ジーンはサラとシャルルの元へと歩き始める
その横に並ぶようにリリムも歩み始め、二人は光を眺めていた

・・・・・

・・・



ナビィの身体が浮いてゆき、上空50メートル近くまで昇る
彼女を照らす光はどんどん強さを増し、次第に直視できないほどになる
そして、ゾクッとする悪寒が両軍に広がった

《アアアアアアアアアアアアアアアアアアアァーーーーッ!》

突如脳内に絶叫が響き、耳を塞ぐ者が続出する
だがこれは脳内に直接届いている声のため、耳を塞いでも意味は無い

「な、なんだ」

ヒッタイト軍は状況が分からず狼狽えるばかりだった
一方メンフィス軍は自軍が何か始めた事だけは理解しており
この絶望的状況を打破する事を祈っていた

「ふむ・・・・興が冷めたな」

タイセイは構えを解き、舌打ちをして金の棒を縮める

「エインとシルト、また会おうぞ」

それだけ言うと初老とは思えない肉体の男はとてつもない跳躍をしてゆく
一蹴りごとに20メートルは飛んでいるだろうか
なんてデタラメな脚力だ、シルトはそう思いながら安堵する

「行ってくれたか・・・助かった・・・」

シルトは既に限界に近かった
右腕の痺れは取れず、体力も底をつきそうだった

「まだ俺がいますよ」

そう言いながらもエインは構えてすらいない、彼も満身創痍なのだ
左腕からの出血により意識は朦朧としており、視界は霞む
更に胸部から激痛が広がっているところを見ると骨が折れているのかもしれない
呼吸は出来るが、少し息苦しさもある

両者とも、これ以上の戦闘継続は難しい状態だった
二人は空を見上げ、その場に座り込む

「あれは何なのですか?」

メンフィス本陣辺りが光っているのでエインがシルトに聞いてみるが
シルトが知るわけもなく、無言で首を横に振る
喋る体力すら惜しい状態なのだ
エインは自身の服を破き、止血を始めながら様子を見ていた

・・・・・

・・・



絶叫が響いてから数分した頃、光は少し弱まり
直視しても平気なくらいに落ち着く
そして、上空には球状の光が浮いており、ナビィの姿は見当たらなかった

光の珠はゆっくりと降下を始め
メンフィス軍は珠の落下地点から離れるように移動してゆく
近寄りたくない、そんな衝動が彼等を動かしていた

地上から10メートルほどの地点で突如光の珠は弾け、辺りに強烈な閃光が襲う
そして、珠から現れた"ソレ"は、彼等の知るナビィでは無かった

土煙を上げ着地した"ソレ"は全身を黄金の鎧を身に纏い
光を放ち、その背には更に輝く巨大な光の翼が生えている
右肩、目から血が流れ、漆黒の目に光が宿る

《・・・・・この戦争を・・終わらせよう》

ナビィの声にしてはやけに低い、重く聞き取りにくい声が響く
黄金の両足が逆関節になり、グシャっと嫌な音を奏でる

スパルナ

鎧の隙間からは血が流れるが、ナビィは痛みなど感じないように立ち上がり
光の翼を大きく広げ、大きく羽ばたく
突風が辺りに広がり、まるで砂嵐のような砂埃が襲った

高く、高く上昇してゆくナビィは一瞬で500メートルほど上り
くるりと回転して翼を大きく広げた
眼下に広がる両軍を見つめ、"敵"を見定める

両軍は光り輝く存在が空に上った事に目を奪われ
ただただ見ている事しかしていなかった

だが、この状況で焦っている者がいた・・・ジーンだ

『シャルル!サラ!急いで逃げて!』

リリムと共に歩いていたジーンは急に走り出し
ハーフキャットの二人を見つけるなり叫んでいた

『ラピはどこ!?』

鬼気迫る表情のジーンに只ならぬ気配を感じ、シャルルが本陣を指を差す

「あっちなら平気かな・・・シルさんは?」

サラが指差すとジーンは障壁を使い、一瞬でシルトの元へと飛んで行く
ミラの治療を終えたシャルルとサラもシルトの元へと走り出した
ハーフブリードの行動が気になり、エイン達も集まっていた

「何事かしらん」

プララーが頬に指を立てながら考え込む仕草をする

「元素の慌てぶりが尋常ではなかったな」

「えぇ、彼女には何か"見えている"のでしょうね」

「ひとまず、俺達も下がりましょう、ミラ様をそのままにはしておけない」

エインが意識の無いミラを抱き上げ歩き出すと
その横には頬を軽く膨らませたリリムが続く
プララーはアシュに肩を貸し、最後尾をバテンがついて行く

シルトの元に飛んで来たジーンが彼に簡単に状況を説明して
上空を確認したジーンは大急ぎでラピの元へと飛んでゆく

ジーンがシルトに言った内容はこうだ

「巫女の究極魔法なんて比較にならない魔力が集まってる
 あの飛んでるアレ、何か使う気だからヒッタイト軍から離れて
 最悪、シルさんの盾で反射して、それだけは耐えられると思う」

サラとシャルルと合流したシルトは二人を連れて迂回して本陣を目指す
ヒッタイトとの直線上は避けたのだ
ラピを拾ったジーンは彼女を腋に抱えたまま障壁で飛んでゆく

「あばばばば・・・っ!」

移動の衝撃にラピが泡を吹き
高速で空を飛ぶ感覚にウェールズははしゃぐ
ぐったりとしたラピを抱えたままジーンは急いだ

チラリと上空に目をやる
先程よりも遥かに強大な魔力が集まっている
間違いなく何かを放つつもりだ
障壁を上空の"ソレ"に向けたまま彼女は急いだ

・・・・・

・・・



オアシス上空

両軍が狼狽え、騒がしくなっている
眼下に広がる光景を楽しむような感情は今のナビィには無かった
今の彼女に渦巻くは破壊衝動、ただそれだけである

壊せ、滅ぼせ、潰せ、殺せ、喰らえ

そんな言葉が頭の中に響いてくる
油断すると意識が持って行かれそうになるが
メンフィスのため、何とか自我を保っていた

失ったはずの右腕が黄金の鎧の腕としてそこにある
この不思議な感覚は何と言えばいいのだろうか
腕は無い、それは確かだ・・・だが、あるのだ、そこに
空っぽの腕が確かにそこにあるのだ

彼女は両手に力を込め、内にある魂を感じ取る

・・・スパルナよ・・・愚かな私に力を・・・

その想いに応えるかのように内から魔力が溢れてくる
普段の彼女なら制御などできようもはずもない量の魔力だ
だが、今はこの黄金の肉体がある
この鎧のおかげか、この膨大な魔力を簡単に操る事が出来た

ふと眼下のメンフィス本陣に目が行く
この黄金の瞳を手に入れてから数百メートル先すらハッキリと見えていた
そのため、バステトを見つけるのは容易い事だった

「バステト様・・・頑張ってらっしゃるのですね」

バステトは混乱する兵をまとめ、指揮を取っている
そんな様子が微笑ましく、ナビィは僅かに笑みをこぼす
刹那、内から聞こえる声が強まった

壊せ、滅ぼせ、潰せ、殺せ、喰らえ

「くっ」

意識が乗っ取られそうになり、ナビィは集中する

「私も頑張らねばなりませんね」

ナビィは両手に集まる膨大な魔力を一点に集中してゆく
凝縮された魔力は肉眼でも確認出来るほど濃密になり
激しい光を放っていた

「我らに仇なす敵に裁きの鉄槌を!」

ナビィの両手から放たれた魔力の塊は光の筋となり、光速で射出される
それは太くなってゆき、幅30メートル近くまで広がった

空がカッと光る
眩しさから誰もが目を閉じる
その瞬間、ヒッタイト軍の約1万の人間が光の筋に飲まれ
蒸発するように消えていった

遅れて爆音と爆風が吹き荒れ、戦場は騒然とした

大地には底の見えない溝ができ
そのラインにいた人間は跡形もなく消えていた

「な・・・・じょ、冗談じゃねーぞ・・・」

アシュが後方の巨大な溝を見て震え出す
これには流石のプララーも怯えており、彼の身体も震えていた

「みんな大丈夫か!」

エインが皆に声をかけると、プララーが膝から崩れ落ちる

「あ・・・あぁ・・・・そんな・・・そんな・・・・」

彼の目からは涙がポロポロと零れ落ち跪く
そんな彼の目の前には丸太のように太い左腕と大剣だけが落ちていた

「おいおい・・・冗談だろ・・・なぁ、だんちょーーーーっ!!』

アシュが叫び、必死に団長であるバテンの姿を探す
しかし、彼の姿はどこにもなく、目の前に転がる腕と大剣だけだった

『ふっざけんなよっ!おい!だんちょー!隠れてんじゃねーよっ!!』

アシュは喉が枯れるほどの大声で叫ぶが応える者はいなかった

『ふっざけんなよっ!!』

アシュが唇を噛み締め、口端からは血が流れる
握られた拳からも血が流れ、その震える拳にそっと手が添えられる

「アシュちゃん・・・受け入れなさい」

『ざっけんな!だんちょーが死ぬわけ・・・うっ・・死ぬわけねーだろっ!!』

口に出した事により実感した
アシュの目にも涙が止めどなく溢れ、彼の視界は歪む
プララーは震える拳をギュッと握り、彼の身体を強く抱き締めた

『受け止めなさい!!』

『うう・・・嘘だ・・・嘘だっ!・・・あああああああああっ!』

静かに泣くプララーは泣きじゃくるアシュの身体を抱き締め
暴れる彼を押さえつけていた

二人にかける言葉が浮かばず、エイン達は黙ってその光景を見ていた

・・・・・

・・・



爆煙が上空高くまで上り、その高さは数キロに達しているだろうか
だいぶ離れた位置にいたハーフブリード達はその光景を黙って見ていた

爆音によりラピが目を覚まし、信じがたい光景に震え
大きな瞳は潤んでいった

「なに、なにあれ」

「ナビィさんがやったんだよ」

ジーンが淡々と説明をする

「彼女は何かの方法で巫女を超えた
 ううん、人間を超えたと言っていいかも
 今の彼女の魔力はサタナキアくらいはあるよ」

「サタナキア!?マジかよ」

シルトが驚き、思い出したくもないあの戦いを思い出す

「ナビィさんってこんな強かったんだ・・・」

「アレはそんな凄いものじゃないよ
 多分諸刃の剣、1度使えばおそらく・・・・」

「え・・・」

ジーンが俯き、言葉を濁す

「ナビィさんそれ知ってるのかな?」

サラは恐る恐る聞くが、流石のジーンもそこまでは知るはずもない

「とにかくこの戦争は終わるよ、メンフィスの勝利でね」

「そう・・・だね・・・」

サラが俯いたところでジーンは空を見上げる

「また撃つ気だ」

魔力が集まってゆくのを目にして言う
彼女の身体があの膨大な魔力に耐えられる理由が知りたいが
それを聞く事は出来ないだろう・・・だって彼女はもう・・・

「ここは平気なの?」

シャルルが言うとジーンは頷いた

「そっか・・・」

「勝てるなら・・これって喜んでいいんだよね・・・?」

ラピがそう言うと、それには誰も答える事は出来なかった
沈黙が続いた時、ジーンの探知範囲に猛スピードで入ってくる反応が現れる

「この魔力・・・水の巫女?」

その方角を見ると、上空を駆ける人影が目に入った

「ホントだ、マナ何してるんだろう?」

シャルルが不思議そうに彼女を見つめている
だが、ジーンには普段の彼女じゃない事がハッキリと分かった

「あの子、何者なの・・・」

「どういう意味?」

「水の巫女なのは知ってるけど、あの魔力量は本当に巫女なの?」

ジーンがそう言うと、ラピとシャルルは目を瞑り魔力感知に集中する
すると、荒々しく膨大な魔力を感知した

「すごい・・・ナビィさん以上かも?」

「うん、でも何か怖い・・・マナじゃないみたい」

・・・・・

・・・



リリムもマナの魔力を感じ取り、天を仰ぐ

「あれは・・・マナさん?・・・でも何か違うような・・・」

単純な魔力量は10倍以上に膨れ上がっている
それよりも気になるのはその性質だ
水の魔力なのは変わりないが、何というか・・・とても恐ろしい気がした

「水の巫女は今更何しに来たんだ」

エインが天を仰ぐと、マナは両軍の中央辺りの上空で停止する

『お前ら何やってんだーーーーーーーーーーっ!!!』

マナのバカデカい声が戦場に響き渡った
彼女は薄い水の上に立っており
両手を腰に当て仁王立ちのようなポーズで叫ぶ

『やっていい事と悪い事があるだろ!!頭悪いのかっ!!』

彼女に誰もが注目し、戦場は静まり返った

『さっきのはダメだろ!バカなの!?死ぬの!?』

そこでマナはスパルナと化したナビィを睨む

『お前ッ!何やってんだ!ぶっ殺すぞ!』

あれほどの力を見せられて
その相手にぶっ殺すなど言えるのか・・・と、両軍の者は思った
だが、マナはそんな目はお構いなしに続ける

『次アレ撃ってみろ!あたしが許さないからなっ!』

しかし、ナビィは魔力を集める事を止める気はなく
両手に濃密な魔力を凝縮していった
瞬間、彼女の身体は強烈な衝撃に襲われる

ゴッ!

ナビィの頭上数メートルの位置から突如水が出現し
岩をも砕ける勢いでナビィに直撃し、彼女を大地へと叩き落とした


「言ったよね?あたしは許さないって」


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