2017_07
01
(Sat)19:41

番外編Ⅱ 第1話

オリジナル小説 『カタクリズム』
番外編Ⅱ 第1話 【守護者】

今回から1等級冒険者シウさんの物語が始まります。
短編の予定ですが、良かったら読んでみてください。

では、続きを読むからどうぞー。








【守護者】






これから始まる物語は歴史には記されていない、誰も語り継いでいない物語
1000を超える敵に、たった1人で挑んだ女性の物語である
その勇姿を、その勇気を、知る者はいない

・・・・・

・・・



炎天下の陽射しをダイレクトに浴びながら
1等級冒険者シウは一人で砂漠を歩いていた

シウ5

ハーフキャットである彼女は暑さに弱い、非常に弱い
煮込みすぎたジャガイモの強度くらい弱いのだ
では、そんな彼女が何故砂漠を歩いているかというと
彼女には使命があるからだ、神から言われたのであれば仕方あるまい

金にならない事は本当ならしたくないのだが
ハーフキャットである自分が神の使いとなって活躍すれば
同族である彼女達の立場が更に良いものになるに違いない
そう思って彼女は神託に従う事を決めたのだ

シウはハーフキャット達を助けられなかった事に負い目を感じていた
彼女達が酷い目にあっているのを知りながら
恐怖に勝てず、見て見ぬ振りをしてきてしまったためだ

結果的にはハーフブリードが彼女達を救ったが
何も出来なかったシウは罪悪感に苛まれていた
そのため、彼女はハーフキャット達に自分がしてあげられる事を探していたのである

そんな矢先に神の声が届く
これだ!と思った彼女はすぐに仲間を集め
ネネモリの大森林の奥にある"ヴェント"という遺跡を訪れた

道中の魔物の大群で仲間の半分は死んだが
何とか辿り着き、遺跡に設置されていたゴーレムと戦った
雇ったばかりの仲間は使い物にならず、呆気なく死んでいった

風の名を冠する文字が額に刻まれたゴーレムは
60センチほどと小柄だが、厄介な事に宙に浮いていて素早い
更に魔法も使ってくるため、2等級程度の冒険者では相手にならなかった

「囮くらいにはなってほしかったのになぁ」

そんな愚痴をこぼし彼女は弓を構える
敵から目を離さぬまま精神を集中し、彼女は口ずさむ

「疾走する風よ」

これは初級の風の魔法である、ほんの僅かに足が早くなる魔法だ
信仰をやめ、魔法使いでなくなった彼女は今も初級程度なら使う事ができる
ある意味ではあるが、今の彼女にはこの方が便利なのだ
初級であればどの属性も扱う事が出来るのだから・・・

一般人が努力しても全ての属性を使う事はほとんど出来ないと言っていい
そもそも魔法の才を持つ者が100人に1~2人いればいい方なのだ
中でも秀でた魔法の才を持つ者でなければ複数の属性を使いこなす事は無理だろう
そして、それだけの才ある魔法使いは1つの属性に絞り、道を極めるのが一般的である
どの神も信仰せず、複数の初級魔法を使う者など普通はいないのだ

だが、シウはそれを選んだ
一番大きな理由はこの弓を手に入れた事だろう
金色の骨組みで出来た夜の闇の蝙蝠ような翼を象ったような弓
アーティファクトであるそれは絶対的な力を持っていた

少量の魔力で矢を生成し、放つことが出来る
更には込める魔力に応じて威力も上がるという優れものだ
ハーフキャットである彼女は動体視力や聴力や空間認識能力に優れている
そんな彼女にこの弓はピッタリと合ったのだ

元々シウという人物は多才な娘だった
魔術、格闘術、剣術、槍術、それら全て人並み以上の腕がある

そして、彼女は知ったのだ

自分が一番得意なものを・・・・それが弓術である事を
初めてアーティファクトを手に入れ、試しに使ってみたら
それはまるで自身の手足のように使う事が出来たのだ

何年もかけて学んだ魔法をためらいもなく捨て
彼女は弓使いとなり、その才能を遺憾なく発揮した
あれよあれよいう間に1等級まで登り詰め、その地位を確立した

だが、彼女は魔法を完全に捨てたわけではなかった
初級しか使えないが、一人の時はそれ等を使い戦ってきたのだ

「時の劣化よ」

風の魔法に続き、初級の死の魔法を発動してシウは大地を駆ける
この死の魔法はほとんど効果など無いのだが
魔法の効果を光の矢先に集中し、触れる対象の強度をほんの僅かでも劣化させるのだ
その僅かな差が勝敗を左右する場合もある、そのため彼女は魔法を発動していた

風のゴーレムから魔法が放たれる
風は見えないが、舞う葉は見る事が出来る
シウは風を肌で目で感じ取り、それを避けながら一気に駆け寄り

「イの矢っ!」

50本の光の矢は1本に合わさり槍のようになり放たれる
矢は素早いゴーレムの額をかすめるだけだったがそれで充分だった
光の矢はゴーレムの額にある風の表す文字を削り、その機能を停止させる

「ふぅ・・・」

大きく息を吐き出してから辺りを見渡す
もう敵はいなそうなので弓をしまい、遺跡の中へと向かった

「ったく、結局一人で倒したようなものじゃん」

愚痴を吐きながら歩を進め
その後、遺跡の奥でシウは祈りを捧げ、ヴェント遺跡が動き出す
動くと言っても何か変わるわけではないのだが
最奥にある宝玉は強く輝いていた

・・・・・

・・・



そして彼女はアムリタを訪れる

到着するなり巫女の究極魔法が連発されるわ
大量の死人と戦ってる人達がいるわ
とんでもない魔力が溢れ出すわ、バカでっかい化け物も出てくるわ、と
何が何やら分からず、距離を取って傍観していたんだ

何やら影のような奴が現れたと思ったら
大量の門が出現し、そこから出るわ出るわ、化け物のお祭りか何かですか
ソイツ等が影みたいのを食べて、あっという間に消えてった
本当に何が何やらだよ

よくよく見たらあの化け物呼んだのあのメガネ(名前は忘れた)じゃん!
それにシャルルもサラも倒れてるし、どうなってるのよ!
なーんて思ってたらまだ死人が生きてた
生きてたって言うのもおかしいのかな?ま、いっか

とりあえず死人を倒して、彼女達を救った感じで登場してみたら
予想よりすっごい喜ばれてちょっと困った

それから彼女達の治療を手伝って
彼女達を見送ってから自分の旅支度をしたんだ
わたしはやらなきゃいけない事が別にあるからね
彼女達と行きたかったけどダメなんだ

で、今は砂漠を歩いてるってわけ・・・

「あ・・・っつ・・・・」

汗で髪が貼り付いて気持ち悪い
尻尾の付け根が蒸れる、耳の中も気持ち悪い

「これホントに死んじゃうんじゃないの・・・?」

最近独り言が増えてきた気がする
一人旅するとこういうものなのかな?
そんな事を考えて暑い事を忘れようとしていた・・・が
全く効果はなく、暑いものは暑かった

水をぐびぐびと飲み、ぶはぁっと大きく息を吐き出す
水の残量も心許ない、そろそろ街に着いてくれないとマズい事になる
ふらつく足を無理矢理前へ前へと進ませていると
地平線の先にぼんやりと浮かぶ水のようなものが見えた

『ニャニャッ!あれは!・・・・水だーっ!!』

耳はピクピクと元気よく動き、尻尾はフリフリとご機嫌に揺れる
先程までは鉛でも巻かれているかのような重さだった足が軽くなり
一気に目的地へ向けて走った・・・・1時間ほど

「お、思った・・・ぜぇぜぇ・・・より・・・ぜぇぜぇ・・・距離ある・・・ぜぇぜぇ・・・」

だが、気がつけば暑さがそれほどでもなくなっていた
陽が落ち始めているのだ
砂漠は陽が落ちると急速に気温が下がっていく
これは乾燥しているため保温が効かないのである

太陽光で暖められた空気は、太陽光が無くなる事により急速に熱が逃げてゆき
気温が急速に下がってゆく、放射冷却というやつである

この辺りの地域の今の季節は日中40近くまで上がり
夜には10度近くまで落ちるため、気温差が激しい地域である

シウは荷物から厚手のローブを取り出し
汗を拭いてから着替え、夜の寒さ対策を済まし
そのまま休むことなく直進し続けた
疲れている、だが水が残り少ない現状で休んでいる時間はないのだ

冷静になって考えてみれば
先程見えた浮かんだ水みたいのはおそらく蜃気楼というやつだろう
アムリタを出立する前にそれについては調べてある
蜃気楼は20~40キロ程度先にある景色が光が湾曲し見えているらしい
このペースで行けば水は何とか間に合う
だが、休んでいたら本当にギリギリになってしまうのだ
最悪の場合を想定し、シウは休む事を諦めた

しばらく走り続け、何とか陽が上る前には湖に到着する事が出来た
やはり昨日見た蜃気楼は水だった

というか、何だこの大量の水・水・水!

巨大な湖から大河が幾つも枝分かれしてゆき
無尽蔵とも思える水の恵みがそこにはあった
この乾ききった大地には不自然と思えるそれは
シウの目にも摩訶不思議に映った

「ま、いっか・・・とにかく水を確保して寝よ・・・」

浴びるように水を飲み、水筒を満タンにしてから寝床を作り始める
アムリタを出る時に重量の関係で簡易テントを売り払ったので
服やマントなどを結び、天幕のようにする
それを弓に結び、弓を砂へと突き刺す
僅かにながら日陰が完成し、その隙間へと身を滑り込ませた

「砂・・・あっつ・・・」

地面の砂が熱く、まともに寝られない
睡魔により重くなった身体を起こし、日陰の砂を掘る
ある程度掘ると砂は熱くなくなり、そこに身を滑り込ませて目を瞑った
驚くほどあっという間に夢の世界へと旅立ち
起きた頃には陽が沈んでいた

「さむっ・・・めんどくさい地方だニャ~・・・」

こんな場所に好き好んで暮らしている人達の神経を疑いながら
シウは星を見ながら方角を確かめ、再び歩き出した

・・・・・

・・・



彼女がメンフィスを訪れた頃、ハーフブリードはリスティに向かっていた
彼等と会う事は叶わなかったが、食料や消耗品を買い込み
早足で目的地へと旅立ってゆく

メンフィスの者からは奇異の目を向けられたが
これまでの半亜人(ハーフキャット)に向けられるものではなく
そこはかとなく好意の眼差しに思えた
悪い気がしなかったシウは、それが彼女達の働きによるものなのだと確信している

「わたしも負けてらんないよね」

サボテンの酢漬け(ピクルス)と、ミンチにして焼いたトカゲ肉に
香辛料とトマトソースをたっぷりかけた物を挟んだパンを頬張りながら
彼女は東へ東へと歩を進めていた

水で満たされた大地の裂け目を泳いで渡る
この暑さだ、服など濡れてもすぐに乾いてしまう
空気が乾燥しているせいもあるだろうか

「こういう点は悪くないね」

基本的に濡れる事が苦手なシウにとっては有り難い事だった
だが、この暑さはその利点では補えないほど彼女にとって苦痛である

「前言撤回・・・やっぱ砂漠嫌い」

うだるような陽射しを浴びながら、フードを深めに被り
よたつく足取りで砂漠を超えて行く
2日ほどで辺りの景色は一変し、目の前に広がるのは密林だった

「うわ~・・・深そうな森だニャァ~」

それから彼女は森の中をひたすら進む
道中で鹿のような魔物が出たり、巨大な昆虫の魔物も出たが
何事も無かったかのように瞬殺している

木に実っていた美味しそうな赤い果物を手に取り
ナイフで小さく切れ目を入れて軽く舐める

「うーん・・・大丈夫そうかな?」

ハーフキャットの味覚は人間より劣るが
刺激物や毒物を判別するのは人間より優れているのである
彼女は果物を一口かじると口には一瞬苦味が広がるが
後からくる甘みが絶品で、思わず唸るほどだった

食料の現地調達は大事である
一人旅なのもあり、大量の食料を持ち歩く事が出来ないため
多少のリスクを背負ってでも現地調達は必須なのだ

森の中に入ってから数日が経つ
行けども行けども森は続き、自分がどこを歩いているのかも分からなくなる
その度に彼女は辺りで一番高い木に登り、空を見ていた

「あの星があっちだから・・・よし」

日中は木々に遮られ陽も届かない
そのため日時計による方位の確認は難しく
夜に星の位置で現在位置と進行方向を確認していた

そんな夜が幾度か過ぎたある日
やっと目的の"それ"を発見する

「んっと・・・テェロ・・・よし、合ってる」

テェロ、地を意味するその名が彫られた遺跡に到達する
彼女の第二の目的地"地の神殿"だ

遥か昔、世界には神話戦争後に4つの神殿が作られた
その神殿は四神を祀るものであり、同時に四神の加護を受けている神殿でもある
神殿には対応する属性のゴーレムが設置され、神殿を守護している

これ等は神託により作られた神殿である
世界を守るため、人類を守るため、必要な神殿だった
だが、6000年という年月はその重要性を風化させるには充分だった

シウはこの4箇所の神殿を巡るよう神託を授かっている
来たる日のため備えよ、と

「これで2箇所目かー・・・先は長いニャ~」

はぁ、と大きなため息を洩らして彼女は無造作に荷物を落とす
そして、弓を構え、辺りを警戒した
彼女の大きな猫耳がピクピクと動き、僅かな物音も逃さないようにしている
しばらくして彼女に耳にある物音が飛び込んできた

「・・・・・・えー」

不満そうな声を上げる
それは音が地中から聴こえてきたからである

何となく予想はしていた
地のゴーレム、地中から来られたら厄介だろうなー、と
嫌な予感はよく当たるものである
諦めたシウはぴょんぴょんと軽い足取りで遺跡を上ってゆく

そして、"それ"は現れた

額に地(テェロ)と彫られた巨大な魔法人形(ゴーレム)
その大きさは3階建ての家並である

「ちょっと冗談でしょ~!流石にデカすぎでしょ!」

図体の割に頭は小さく、彫られた文字も小さいものだ
このサイズでは頭の文字を狙うのは難しかった
シウは遺跡の頂上にいるが、ゴーレムが遺跡に上がる事はなかった

「あれ?もしかして?」

ははーん、とニヤける
そう、このゴーレムは神殿の守護者(ガーディアン)なのだ
この図体で遺跡に登ればおそらく倒壊するだろう
そのため、ゴーレムは遺跡に入る事が出来ないのだ

「これは楽そうだニャ」

少しでも遺跡から降りようとするとゴーレムの手が動く
動かないギリギリのラインを見極め、彼女は辺りから岩を集め始めた
長い年月で風化し崩れた岩壁を集め、それを重ねてゆく

「こんなもんかな」

時間をかけて瓦礫で出来た階段状の物を作り
彼女は弓を構え、光の矢を収束させてゆく

今彼女は安全地帯にいると言っていい
そのため、この一撃に全てをかけてもいいのだ
失敗しても再びここに戻り、魔力が回復するのを待てばいいのだから

しばらくして200の光の矢が1本の矢となり
その輝きは直視出来ないほどだった

「初めてこれ実戦で使うかもニャァ」

どの程度の威力が出るのかワクワクしながら走り出す
軽やかな足取りで瓦礫の階段を駆け上がり、高く高くジャンプをする
そして、矢を放った

『いっけーーーーっ!』

白く輝く1本の矢は真っ直ぐゴーレムの頭に吸い込まれて行く
ゴーレムは動くことなく、矢はその額に命中し
頭を丸ごと吹き飛ばし、背後にある木々に大穴を開けてゆく

「おおー、すっごい威力」

頭を失ったゴーレムは、ずずずと音を立てながら大地に還り
魔力を使い切ったシウはそのまま遺跡の上で眠った

翌朝、遺跡を起動し、再び旅に出ようとするが
遺跡を出たところである事に気づく

「あれ・・・なんだろ?」

先日、ゴーレムが土へと還った辺りに光る物があった
それは先端だけが出ているようで、大半が地中に埋まっている

「お宝?お宝??」

シウは腰からナイフを取り出し、丁寧に掘っていった
徐々にその全容が解り、3割程度見えた頃には彼女は気づいていた

これが"弓"である、と

だが、その弓はどこか違和感があった
まず・・・弓弦を付ける場所すら無いのだ
それだけでも異常なのだが、異様に小さいのも気になった

子供用なのかな?そう思いながら掘り起こし
手に取ってみると、信じられないくらいしっくり来る
これはアーティファクトのこの弓を手に入れた時以上の衝撃だった

「何これ・・・手にくっつくみたいに馴染む」

こんな小さな弓が馴染むなんて思わなかった
不思議な感覚に包まれながら、アーティファクトの弓と束ねて持とうとした時
弓から激しい光が放たれ目を瞑る

「な、なにっ!?」

光は収まり、目を開くと先程の小さな弓は無くなっており
代わりにアーティファクトの弓に変化が起きる
形などは大差ないのだが、弦を付ける部位が無くなっていた

「・・・・・・・・・えええええええっ!?』

目を丸くし弓を調べるが、やはり弦は無い

『ど、ど、どうすんのこれーーー!』

何よりも頼ってきたアーティファクト武器を失い
シウは冷静さを失っていた

「困る困る困る、ホント困るって!!」

慌てる彼女が弓を手にすると、光の弦が現れる

「ニャ・・・?」

それを指で掴んでみると、普通に触る事が出来た

『ニャ、ニャんですとー!!』

そして、この手の一部になったかのようなしっくり感
先程の子供用と思った弓を掴んだ時に酷似している

「・・・・パワーアップしちゃった感じ?」

シウは半信半疑で弓を引き絞る
光の矢は以前と同じように現れ、試しに1本の矢を放ってみた

キュィィィィィィンッ!!

矢は肉眼で見えない速度で発射され、その矢は遥か遠くの木を貫通してゆく
もはや見えない距離まで行ってしまった矢は
まだ木々を貫通して行っているようだ
鳥が飛び立ち、葉が揺れていくのが見えるから分かる

「すご・・・・」

弓に視線を戻し、予想を遥かに超えるその力に変な汗が流れた
しかも何やら内から妙に力が湧いてくる事に気づいた

「おお?なんだろこれ」

戸惑っているシウの元に突如声が届く

《・・・・使徒よ・・・よく目覚めました・・・》

「あ、神様?」

空を見上げるが神の姿はなく、頭の中に直接声だけが響いていた

《・・・その力を使い・・残る2つの神殿を・・・
 もはや時は残されていません・・急ぎなさい・・・》

「はいはい、わかりました」

彼女は軽く返し、話を切り上げる
今は神の言葉なんかより、この弓の実力を試したくて仕方ないのだ
シウは次の神殿に向かいながら試し撃ちを繰り返し
この弓・・・神器アプラマスを使いこなしていった

・・・・・

・・・



彼女が神器を手に入れてから3週間が経ち
第三の目的地である水(アクヴォ)の神殿のゴーレムを1撃で瞬殺し
最後の目的地である火(ファイラァジョ)の神殿がある北北西に向かっていた

旅をしてる最中、至る所で噂を聞いた
悪魔がこの世に現れた、と・・・

もう"来たる時"っていうのになっているらしい
急がないと、そう思った彼女は弓を構える
それを何もない空へと向け、光の矢を出現させず
光の弦を引き絞っては離すという行動を一定の間隔で繰り返した

準備を終えた彼女は弓を持ったままその場で垂直跳びをする
その脚力はもはや人間のそれではなく、何と12メートル近く飛んでいる

落下が始まったかどうかの時、彼女の軌道が大きく変わる
まるで空を飛ぶ矢のように、その身体は勢いよく飛んで行った
200メートルほど空を駆けた頃に徐々に勢いは弱まり
落下を始めるかと思ったが、再び勢いが戻り、また空を駆けて行った

これは神器アプラマスの能力の1つである

指定した空間を弾き、発射する事が出来るのである
それを一定間隔で繰り返し、時間差で発動するこの効果を利用し
シウは空を飛ぶ方法を編み出したのだ

『うぇーーーいっ!気持ちいいぃぃぃぃっ!』

まさか自分が空を飛べる日が来ようとは思ってもいなかった彼女は
この技が大変気に入っていた

翌日、火の神殿のゴーレムを1撃で消滅させ、全ての神殿は動き出した
だが、彼女の役目はまだ終わっていない
神殿巡りが遅れてしまったため
最後の仕上げをしなくてはならなくなってしまったのだ

「さて、と・・・」

4つの神殿が動き出してから3日が経っている
残り1日しかない、この1日で何とかしないと・・・

シウは今ある地方に来ている
その地方とは死の神により滅んだ国・・・ウェヌス
跡地にあった大穴は今では完全に塞がっており
代わりに現れた紫色の大地が広がっている

この辺りは日中でも薄暗く、分厚い雲が空を覆っている
空気は淀み、腐臭が漂い、雷が鳴る

そして、紫の大地から溢れ出る膨大な数の悪魔達・・・
その数は見えるだけでは1000は優に超えているだろうか

『おい!こっちだぞぉぉぉぉぉぉっ!』

シウ6

そんな大軍を前に彼女は笑顔すら見せている
まるで挑発でもするように手招きをし
現世の大地へ溢れ出ていた悪魔を紫の大地へと引き戻していた

「君たちに恨みはないけど、帰ってくれないかな」

手足を振り、首を回し、足首を回し、腰をひねり、大きく深呼吸をする
肺に入ってくる空気は悪く、軽くむせたが
準備運動を済ませた彼女は静かに神器アプラマスを構える
その表情や瞳からは先程までの適当さは感じられない
鋭い矢先のような眼を悪魔達に向けていた・・・・



「さ、始めようか」


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