2017_07
27
(Thu)21:26

番外編Ⅱ 第3話

オリジナル小説 『カタクリズム』
番外編Ⅱ 第3話 【栄光なき偉人】

今回でシウさんの話は終わりになります。
番外編は終わる予定ですが、もしかすると何か書くかも?
誰かのサブストーリーとか、需要があれば書きたいですね。

では、続きを読むからどうぞー。






【栄光なき偉人】






2・4・6・8・10・・・22か

シウは向かってくる敵の数を確認してから矢を放つ
無駄な魔力と体力を消費したくない彼女は
必要最低限の動きと攻撃で的確に敵を減らしていっていた

22本の光の矢は、向かって来る22の悪魔の頭を吹き飛ばし
その死体を乗り越えて次の悪魔の群れが向かってくる
既にシウの周りには悪魔の死体が山を築いていた

全方位気にしながらの戦いは想像以上に辛く
予想以上に体力と精神力を奪ってゆく

でもここで引く訳にはいかない、わたしにはやるべき事があるんだ

その時、突然強烈な風が吹き、死体の山が崩れ始める
悪魔ですら踏ん張っていないと立っている事も困難なほどの暴風で
小柄なシウなど吹き飛んでしまうほどだ

だが、彼女は何事も無いように吹き飛んでくる悪魔を狙撃している
まるで風を味方にしてるかのようなその動きに悪魔達は恐れおののく

シウは神の使徒である
はたして彼女は何の神の使徒なのだろうか・・・?
もう答えは解るだろう、彼女は風の神の使徒なのだ
そんな彼女にこの程度の暴風など、そよ風にも等しいのである

この暴風により大勢の悪魔が吹き飛ばされ、シウの矢の餌食となった
その風を起こした悪魔は他の悪魔から批難されるが
批難した悪魔を拳で叩き潰し、悪魔同士の争いが始まる

この長期戦が始まってから何度目だろうか
ちょっとキッカケさえあれば簡単に争いが起こる
悪魔という生き物はどうやら仲間だろうと殺し合うのは普通らしい
同じ主に仕えているだけで仲は良くないのだろう

いや、もしかすると力だけの世界なのかもしれない
強者に従う、弱者は淘汰される
そういう世界の方が悪魔というイメージに合っている気がする

そんな事を考えていると、足元から僅かに振動を感じ取る
すかさず跳躍し、真下に向けて弓を構えると
大口を開けた悪魔がシウを丸呑みしようと地面から姿を現した

即座に矢を放ち、大口の悪魔はシウの代わりに矢を飲み込み
その身体は貫かれて絶命する

シウは15メートルほど跳躍している状態で辺りを見渡し
残りの悪魔がどの程度いるか確認する・・・が
まだ辺りは悪魔で埋め尽くされており
見当が付かない数という事は確認できた

空中で回転しながら全方位に向けて矢を放ち
近場に見える範囲の悪魔の頭を貫く
もはや把握出来ていないが、およそ今の一瞬で40は倒しただろうか

着地したシウは大きく深呼吸し、呼吸を整える
近場の悪魔は大体倒したのでほんの一瞬だが休息が取れたのだ

耳鳴りが煩くて、なにも聴こえない
左目は血が入って霞んでまともに見えやしない
腕は鉛でも巻いてるかのような重さだ
足はもう地面についてるかも判らないくらいになってる

疲れた・・・・お腹すいた

もう何匹倒しただろう・・・1400くらいまでは数えてたんだけどな
ま、数えても意味無いか、組合からお金が貰える訳でもないしね

じゃあ、わたしは何でこんなに頑張ってるんだろう・・・

目的は忘れてないよ、忘れてないけど、愚痴りたくもなるでしょ?
もう15時間は休憩なしでこの悪魔達を相手してるんだから
いい加減わたしだって疲れるし、お腹もすくし、嫌にもなるよ

神器のおかげでそこまで魔力には困らないけど、限度はあるのよ
魔力の前にわたしの体力が持たないかもしれない

「お前等は下がっていろ」

その一言で悪魔の大群が左右に割れ、その中央を歩く者がいた
奴はチリンチリンと鈴の音を響かせながらゆっくりと向かってくる
馬とも山羊とも言える生き物に跨っており
その手には先端に小さな鈴が3つぶら下がった杖を持っている
顔は美しい女性のそれだが、身体は屈強な男のもので
その声は野太く、妙に響く声質だった

『待たれよっ!!』

耳鳴りでほとんど聴こえなかったシウの耳に
あり得ないほどの大声が飛び込んでくる
思わず耳を塞ぎたくなるほどの大声で、空気がビリビリと震えるほどだった

『おヌシ、名を何と言う』

馬上からシウを見下ろしながらその悪魔は問う
その問いに答えてやる義理は無いが
今は付き合ってもいいか、そう思えた

「シウだよ」

『シウ・・・その名、しかと覚えた
 我は王シャイターンが配下、パイモンと申す
 これまでの貴殿の戦いぶり、敵ながら尊敬の念を抱くほど』

パイモンはその美しい女の顔で笑顔を見せるが
身体はガチムチマッチョの化け物なので気持ち悪さしかない

「で、何を話に来たの?」

シウは会話をしながら辺りを警戒しており
隠す事なく弓を構えたまま会話を続ける
この僅かな時間でも休憩が出来るのは有難かったのだ

『うむ、単刀直入に言おう、一騎討ちを所望する!』

悪魔にもこんなのがいるんだ
シウは少しばかり驚いたが、まだ罠の可能性も捨てきれない
警戒は怠らず、パイモンの提案に乗る事にした

「いいよ、でもそれってわたしにメリットあるの?」

パイモンは目を丸くし、一瞬固まるが、大きな口を開け笑い出す

『ハッハッハッハ!サシで戦える事がメリットではないと申すかっ!』

「その必要ある?わたしはこの数を一人で相手出来るんだよ?」

『まっことそうであったな!これは失敬失敬!ハッハッハ!』

パイモンは大笑いした後に真剣な表情に戻り
辺りの悪魔達に睨みを効かせながら再び大声を出す

『我は第3位階パイモン!この場に我より上はいるかっ!!』

しばらく待つが反応は無く、パイモンは一度頷き宣言した

『この戦、我と人間のシウとの一騎討ちにて決着とする!
 我が敗れた場合、この者への一切の手出しは禁止とする!!』

それを聞いたシウは「聞いてないんだけど?」という顔をしていたが
そんな彼女を見てパイモンは笑顔で言う

『これで"メリット"になったか?』

「えぇ・・・まぁ」

この悪魔は悪い奴じゃなさそう、シウはそんな事を思っていた
だが、シウは疑り深い性格である
これは彼女がずっと独りで生きてきた結果だ

「わたしの安全ってどうやって保証するの?」

『ハッハッハ!勝つ前提で申すか
 では、これでどうだろうか・・・・・おいっ!』

パイモンが一際大きな声で叫ぶ
思わず耳を塞ぎ、空気の振動を肌で感じていると
突如背後から気配を感じ、シウは飛び退いた

「ケケケ・・・」

即座に弓を構え、臨戦態勢に移行するが
パイモンがその前へと立ち塞がり、それを制した

『待たれよ、此奴は貴殿の保証だ』

何を言ってるんだろ?シウはよく判らず弓を下ろす事は無かった
パイモンの背に隠れるようにいるその悪魔は
腰に剣を差している鳥のツグミが真っ黒に染まったような姿をしている

「貴様、やはり一騎討ちにしましたか」

鳥の悪魔はパイモンの背を軽く小突きながら言う

『うむ、この者と戦いたい、そこでおヌシに頼みがある』

「我輩にこの小娘の命の保証をしろ、と」

『話が早くて助かる、そういう訳だ』

「いいでしょう・・・貴様の頼みとあらば聞かぬ訳にもいきますまい」

そう言い、鳥の悪魔はぴょんぴょんと跳ねるように歩き
辺りの悪魔達に向け宣言した

『我輩は第3位階カイム
 パイモンの取り決めを破りし者は我輩自ら引導を渡しましょう・・ケケケ』

まるで演劇のように大げさな身振り手振りを加え
カイムは辺り一帯にいる悪魔達に睨みを利かせる
蛇に睨まれた蛙のように悪魔達は動かなくなり黙り込んだ

「鳥くんが保証してくれるのは嬉しいんだけどさ
 君自身がわたしを襲わない保証はないよね
 わたし的には残りと殺り合うより鳥くんとやりたくないんだけど」

目の前にいるこの2体の悪魔は他とは別格の魔力を放っている
これから1000の悪魔を相手するより
眼前のどちらかとやる方が生きた心地がしないくらいだ

「そうですねぇ・・・では、これでいかがでしょう・・・ケケケ」

カイムは腰の剣を抜き、それを両翼でシウへと差し出した

「貴女ならば解るでしょう?この魔器の素晴らしさが、その価値が」

確かにカイムの言う通り、この剣から放たれる魔力は尋常ではない
細部まで拘って作られたであろうそれは、1つの芸術品と言ってもいいほどだ

「これを貴女に預けましょう
 万が一、貴女が勝つような事があれば
 帰りの際に返して頂けると有り難い・・・ケケケ」

「・・・・」

シウは黙って剣を見ていた
何かの罠かもしれない、まだそう疑っているのだ
だが、ここでこの剣を奪えるのは悪くないと思えた
最悪のパターンである、眼前の2体同時相手の可能性はほぼ無くなるからだ

「わかった、剣はそこに置いといて」

シウは剣に触れる事は無かった、もし罠だった場合を想定したからだ
カイムは剣を置き、大袈裟なお辞儀をしてから
ぴょんぴょんと跳ねながら下がってゆく

『ではではでは!始めようではないかっ!』

パイモンの掛け声で1人と1体の戦いは始まる

先制を仕掛けたのはシウだ

彼女は両手を広げて開始の合図をしたパイモンに向け
5本の矢を同時に放つ、其々の矢は頭、胸、手、馬を狙っており
光の筋となった光速の矢はパイモンとその下にいる馬に直撃する

パイモンの美しい顔の三分の一ほどは吹き飛び
胸には大穴が開き、馬の頭部、前足は切断される
そのまま馬と共に前のめりに倒れ、ピクピクと痙攣をしていた

まさに瞬殺である

シウは大きく深呼吸をしてから辺りを警戒する
辺りの悪魔達はざわつき、カイムはぴょんぴょんとパイモンに近寄り
その生死を確認し、首だけをシウへと向ける

「お見事、これは我輩でも瞬殺されてしまいますね・・・ケケケ」

カイムは知っている、パイモンは再生能力などがある悪魔ではない、と
そして、その力は自分と同等か、僅かに上である、と

彼の魔法障壁は頑丈で、自分の物よりも遥かに堅い
そして、あの騎乗する魔物は実はパイモンの本体なのだ
その移動速度たるや、瞬きする間に山を越えるほどである

パイモンの得意とする攻撃は"魔法"である
見た目こそ筋骨隆々とした身体を持っているが
その戦い方は繊細で、緻密な計算で魔法を使用してくる厄介な相手だ

だが、そのパイモンは何もする暇すらなく殺された
彼は殺された事すら気づいていないかもしれない
それほどの速さだったのだ

「1つ聞いてもよろしいですか?」

「なに?」

突如質問を投げかけられたシウは戸惑いながらも警戒は忘れず
弓を構えたままの状態を維持している

「今の攻撃、貴女の全力でしょうか」

「まさか、そんな訳ないでしょ」

ほむほむ、とその翼でクチバシの下側を撫でながらカイムは唸る

「パイモンの障壁をどう破ったのでしょうか、我輩はそれが知りたい」

「障壁?・・あぁ、あの見えない壁ね、簡単だよ」

「簡単・・・・ですと?」

シウは1本の矢を遥か遠くにいる悪魔の頭部目掛けて放つ
矢は光の筋となり、悪魔の頭部は吹き飛んだ

「これが普通の攻撃、何にも手を加えてないやつね」

「ほむほむ」

「で、これが・・・」

シウは矢を放つ、見た目は全く同じだが
光の筋が出来る時に妙な音がした気がした
そして、遥か遠くにいる悪魔の頭はねじ切れるように炸裂し、消し飛んだ

「これを5発撃っただけだよ」

「ケケケ・・・なるほど・・"回転"ですか」

「うん」

そう、シウは光の矢を超高速で回転させ
その貫通力、威力を大幅に上げていた
これは風の魔法によるものだ、それも神器による最高位レベルの物である

これは神器アプラマスの力の1つだ
彼女はパイモンが現れた時からずっと神器解放状態で構えていたのである
魔力の消費が激しいため、あまりやりたくない方法だったが・・・

「御見逸れしました」

カイムは丁寧なお辞儀をし、両翼を大きく広げる

「で、君たちは帰ってくれるの?」

「はい、もちろんで御座います」

「ありがと、でも変な動きしたら即撃つから」

「ケケケ」

変な笑い声を残し、カイムは背を向ける
そして、カイムの魔力が爆発的に跳ね上がった
シウは即座に弓を構え、風の魔法を発動するが・・・

《全軍、撤退せよ・・・第3位階カイムの命である》

頭の中に声が響き、瞬時にカイムの魔力は小さくなっていった

「では、我輩はこれにて・・・」

「剣はこのままここに置いておくから後で取りに来て」

「えぇ、そう致します・・ケケケ」

こうして悪魔達はシウから離れて行き
紫の大地の奥、魔界側へと戻って行った
残されたシウは日時計を取り出し、残り時間を確認する

「まだ半刻くらいあるかニャ?」

シウはゆっくりと歩き出し
大地の色が茶色へと変わる頃に立ち止まり、ドカッと腰を下ろす

「そろそろかなぁ・・・」

あちこちから痛みがくる身体で空を見上げると
そこには青い空と灰色の分厚い雲の2つの空が見え、改めて魔界側を見る

「・・・ここ大丈夫かな」

もう少し離れようと思い、立ち上がって歩き出すと同時に
背後から物凄い衝撃が伝わってくる

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

何かが爆発したかのように煙が立ち込め
それはこの魔界を囲むように直径120キロメートルの円状に立ち込めていた

「わっ・・・びっくりした~」

振動でシウの身体は数センチ浮き上がるほどで
その爆音は遥か彼方まで響き渡った

振り向いたシウの視界は煙で何も見えなかったが
次第に煙は晴れ、光が目に飛び込んでくる

「うわ、まぶし~っ」

ずっと魔界にいたせいか、妙に光が眩しく見え
彼女は目を細めて"それ"を見上げた

眼前にあるのは光の壁、それは魔界を包むように展開されており
半円のドーム状で、向こう側が透けて見えるが
光の壁の分厚さは3メートル近くあり、簡単に破れそうに無かった

「ひゃー・・・でっかいニャー・・・」

不思議な事に煙は壁をすり抜けており
空の雲もまたすり抜けているようだった
だが、物凄い爆音を聞きつけて走ってきた悪魔は壁に弾かれ転んでいる

壁を壊そうと必死に魔法やら武器やらで攻撃しているが全く意味はなく
膨大な数の悪魔が群がるが、壁は一切揺らがず、壊れる気配もない

「とりあえず成功・・・かニャ?」

そう、彼女の目的とはこの光の壁だったのである
これは彼女が4つの神殿を訪れ、そこに貯蔵されていた魔力を解放し
魔界と現世を隔てる壁を作る、それが神託により授かった彼女の使命だった

これは6000年前にマグ・メルという水の巫女が発案した結界術式だ
四大元素である火・水・風・土の属性を融合させ
純粋な魔力の塊へと変換し、それでドームを形成するという術式である
名は無いが、強いて言うならば"四神結界"であろうか

4つの神殿にはそれぞれの神と巫女の魔力が封印されていた
その貯蔵量は膨大で、この結界は長期に渡って消える事はない
マグ・メルは再び災厄が復活した時を想定し
この4つの神殿、術式を完成させたのだ

『終わったぁ~、疲れた~、ねむーい!』

シウは大声で愚痴をこぼしながら木陰へと移動し寝転がる
一瞬で夢の世界へと旅立ち、彼女は騒々しさで目が覚めた

「なに・・・うっさいなー・・・」

眠い目を擦りながら目を開くと
光の壁を物珍しそうに見物する人々が溢れていた

あぁ・・・ホント馬鹿だな、この人達

シウは呆れてため息を洩らし、人集りを背に荷物をまとめて歩き出す
彼女は振り向く事無く真っ直ぐある場所を目指していた

・・・・・

・・・



約1週間かけて辿り着いた彼女は木の上を見上げる
久しぶりに訪れた我が家がそこにあり、少し尖った犬歯を見せ笑った
軽い足取りで木をぐるりと回るようにある階段を上り
玄関の鍵を開けると同時に荷物を放り投げ
片付けなど明日に回し、残った食料を使って少しだけ豪華な食事をとる

彼女の家は1等級という下手な貴族よりも稼ぎが良い職種の割に
かなり貧相なもので、木の上に作られたワンルームの家である
家具という家具も無く、ハンモックと浴槽と箪笥と台所くらいしかない
ちなみにお手洗いは外に小屋がある

「ふー、食べた食べた」

お腹をさすり、乱暴に服を脱ぎ捨て、浴槽に向かった
そこで両手を差し出し、彼女は唱える

「生きるための水よ」

水の魔法を発動し、大した水量ではないため
時間をかけて浴槽を一杯にする

「雪を溶かす炎よ、夜の闇を照らす炎よ」

彼女の両手に炎が宿る・・・さり気なくシウは2つの魔法を同時に発動している
以前シャルルが使った同じ魔法を違う呪文で発動する、二重詠唱というやつだ

炎の宿った両手を浴槽へと突っ込むと火は消えそうになるが、
ギリギリのところでメラメラと揺らめいており
次第に水はお湯へと変わってゆく

「こんなもんかニャ?」

ふんふふーん♪と鼻歌交じりに下着を脱ぎ捨て
ちょうど良い温度になった湯船へとゆっくり入ってゆく

「ぷぁ~・・・」

幸せそうに頬を緩ませる
疲労などにより凝り固まった身体はほぐれ、身体は芯から温まっていく

しばらく温まってから湯船で身体を洗い始め
久しぶりの入浴によりそのお湯は一瞬で黒く染まる
湯船の栓を抜くとすぐにお湯は木に流れてゆき
再び水の魔法と火の魔法を使い、お湯を張る

「さすがに1回じゃ落ちないニャ~」

この後、3回ほどお湯を入れ替えながら身体や頭を洗い
さっぱりとしたシウは全裸のまま風呂上がりの果実のジュースを飲んでいた

「ふー」

髪や耳や尻尾を綺麗なタオルで丁寧に拭き
それを先程投げ捨てた衣類の方へと投げ捨て
箪笥の中から下着を取り出し、それだけを身に着けて椅子に座る

シウさーびす

「よく生きて帰って来れたなぁ・・・」

この旅を思い返し、シウはクスッと笑う
色々な事があった、雇った仲間が死んだり
ハーフブリードを助けたり、砂漠で死にかけたり
ゴーレムを倒したり、悪魔の大群相手したり・・・・

「わたし頑張ったよね」

これで同族(ハーフキャット)の地位がよくなると良いな

「後はあの子達に任せよ」

ニヤニヤしている自分に気づき、両頬をぺしぺしと叩いていると
神の声が頭の中に響いてくる

《・・・感謝・・・後は・・・》

「言われなくても判ってるよ」

届いているか分からないが
神への返事をすると、それ以降の言葉は無かった

シウは下着のまま室内で何かを組み立て始める、それは"罠"である
弓を使ったもので、扉を開くと自動で発射される簡単なものだ
更に見えないほど細い線を床に張り
それを切ると矢が放たれる罠を設置する

念のため扉には厳重に鍵をかけ、窓も全て締め切り、板を打ち付ける
真っ暗になった室内で彼女の神器が僅かに光を放っていた
その明かりを頼りにハンモックまで行き
神器アプラマスを抱き抱えたまま横たわり、毛布に包まる

「いいよ、神さま」

目を瞑ったシウが何かを覚悟したようにそう言うと

《・・・よい・・・夢を・・・》

風の神の声が響き、シウの身体と神器アプラマスが輝き始める
光は家の隙間から漏れ出し、次第に弱まってゆく・・・

その日からしばらくの間、彼女は歴史から姿を消す事となる

1等級冒険者、月華のシウと呼ばれた彼女は
たった1人で悪魔の大群を相手し、たった1人で世界を救った
誰も知らない彼女の功績は神だけが知っている

そして、彼女は今"四神結界"を長持ちさせるため、眠りについた

4つの神殿とリンクした彼女は、言わば結界の核なのだ
その身に何かあれば結界が揺らいでしまう事となる
そのため、彼女は長い眠りにつく事にしたのだ


来たるべき、その時まで・・・・


・・・・・

・・・



世界は混沌に落ちるかと思われていた
悪魔の大群が姿を現し、世界は蹂躙されんとしていた
だが、突如現れたドーム状の結界により、人と悪魔の世界は隔たれる
近隣の国は歓喜するが、その安寧は長く続くものではない

結界が張られた時に外にいた悪魔達は今だ存在している
そう、脅威は去ってなどいないのだ

結界の外にいる悪魔、その数おおよそ700
その中には第2位階悪魔も存在していた
しかし、人類はまだその事実を知らない



混沌はゆっくりと息を潜めて忍び寄っている事を・・・


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C.O.M.M.E.N.T

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